フランスで「勤務時間外のメール」禁止 労働者の負担は本当に減るのか? 2014年4月15日 仕事のエコノミクス ツイート インターネットの普及により、仕事をする場所と時間の制約は緩和された。おかげで自由度が増した人もいるが、逆に仕事が私生活を侵食し、不自由度が増したと困惑している人もいるはずだ。 複数の海外メディアによると、そんな労働者にとって恩恵がありそうな労働協約がフランスで結ばれたという。労働者が勤務時間を終えてオフィスを出たら、仕事のメールは「一切無視してもいい」という内容だ。 週35時間労働にバカンス、サバティカル… ガーディアン紙によると、今回の協約はテクノロジー関連およびコンサルティング関連企業に勤める従業員約25万人が対象とのことだ。 労働者はメール以外にも、資料など仕事関連の情報をPCやスマートフォンで閲覧することも認められなくなる。企業は勤務時間外の社員に電話やメールで連絡できなくなるだけでなく、労働者が仕事のプレッシャーから解放されるよう求められる。 フランスではこれまでも、余暇を積極的に取る方針が取られている。2000年2月から段階的に「週35時間労働制」が導入され、法定有給休暇は年に「5週間」も付与される。 毎年5月から10月までの「バカンス・シーズン」には、連続した2週間から4週間の有給休暇を取らなければならない。 さらに通算6年以上の勤務をした人には、6か月から11か月の長期の「サバティカル休暇)が与えられる。この期間は基本的に無給だが、余った有給休暇を積み立てることができ、計画的に長期休暇を取れるようにもなっている。 これほど休暇が取れるフランスだが、OECD加盟国のうち就業1時間当たりで見た労働生産性では8位(約5950円)だ。日本は20位(約4010円)で、大きく水を開けられている(2012年調査)。 短時間労働が「過酷な労働」を要求する? このような制度が実現できる背景には、正規社員と、非正規労働者や移民との賃金格差があると指摘する声もある。それでもネットでは、こうした働き方について羨ましいという声が多い。 「日本もそうなってほしい。何十年先の話になるんだろうか?」 「なんとうらやましい。。。5週間の休暇を義務付けって・・・ そんなに休みとった記憶全くない」 意外なことに、そんなフランスは自殺率が高い。人口10万人あたり21.7人の日本よりは低いものの、西ヨーロッパではベルギー、スイスに次いで3位(同17.0人)。2008年、フランステレコムでは年間20人以上の社員が自殺した。その理由についてブルームバーグは「35時間労働制の副作用」の可能性を指摘している。 「雇用主は失われた5時間を取り戻そうと、従業員にさらなる結果を求める。それが職場でのストレスと暴力が増加する温床になっている」 フランスの病院に医療通訳として勤務する古田深雪氏は、「ここ数年の失業率上昇」も理由のひとつに挙げている。フランスの失業率は2008年2月(7.4%)を境に緩やかに上昇を続け、2013年7月には11.0%にまで達してしまった。 「健康監視研究所の調査によれば、自殺者の数は交通事故による死者の3倍にものぼり、毎年7万~8万人の自殺未遂者がいる。その多くは、うつ病、アルコール中毒、不安障害が引き金となっている」 制度だけ見れば羨ましい限りのフランスだが、実情はそう単純ではなさそうだ。今回の労働協約は、結果的に勤務時間内の労働量をさらに増やしてしまう可能性もある。普通の人が1日7時間でこなせない密度の仕事を要求されるならば、これはかえって大変かもしれない。 あわせてよみたい:ポーランドが親日すぎる「驚くべき理由」
フランスで「勤務時間外のメール」禁止 労働者の負担は本当に減るのか?
インターネットの普及により、仕事をする場所と時間の制約は緩和された。おかげで自由度が増した人もいるが、逆に仕事が私生活を侵食し、不自由度が増したと困惑している人もいるはずだ。
複数の海外メディアによると、そんな労働者にとって恩恵がありそうな労働協約がフランスで結ばれたという。労働者が勤務時間を終えてオフィスを出たら、仕事のメールは「一切無視してもいい」という内容だ。
週35時間労働にバカンス、サバティカル…
ガーディアン紙によると、今回の協約はテクノロジー関連およびコンサルティング関連企業に勤める従業員約25万人が対象とのことだ。
労働者はメール以外にも、資料など仕事関連の情報をPCやスマートフォンで閲覧することも認められなくなる。企業は勤務時間外の社員に電話やメールで連絡できなくなるだけでなく、労働者が仕事のプレッシャーから解放されるよう求められる。
フランスではこれまでも、余暇を積極的に取る方針が取られている。2000年2月から段階的に「週35時間労働制」が導入され、法定有給休暇は年に「5週間」も付与される。
毎年5月から10月までの「バカンス・シーズン」には、連続した2週間から4週間の有給休暇を取らなければならない。
さらに通算6年以上の勤務をした人には、6か月から11か月の長期の「サバティカル休暇)が与えられる。この期間は基本的に無給だが、余った有給休暇を積み立てることができ、計画的に長期休暇を取れるようにもなっている。
これほど休暇が取れるフランスだが、OECD加盟国のうち就業1時間当たりで見た労働生産性では8位(約5950円)だ。日本は20位(約4010円)で、大きく水を開けられている(2012年調査)。
短時間労働が「過酷な労働」を要求する?
このような制度が実現できる背景には、正規社員と、非正規労働者や移民との賃金格差があると指摘する声もある。それでもネットでは、こうした働き方について羨ましいという声が多い。
意外なことに、そんなフランスは自殺率が高い。人口10万人あたり21.7人の日本よりは低いものの、西ヨーロッパではベルギー、スイスに次いで3位(同17.0人)。2008年、フランステレコムでは年間20人以上の社員が自殺した。その理由についてブルームバーグは「35時間労働制の副作用」の可能性を指摘している。
フランスの病院に医療通訳として勤務する古田深雪氏は、「ここ数年の失業率上昇」も理由のひとつに挙げている。フランスの失業率は2008年2月(7.4%)を境に緩やかに上昇を続け、2013年7月には11.0%にまで達してしまった。
制度だけ見れば羨ましい限りのフランスだが、実情はそう単純ではなさそうだ。今回の労働協約は、結果的に勤務時間内の労働量をさらに増やしてしまう可能性もある。普通の人が1日7時間でこなせない密度の仕事を要求されるならば、これはかえって大変かもしれない。
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