「交際の壁」 年収が低いと、結婚どころか彼女すらできない 2013年1月29日 仕事のエコノミクス ツイート 一生を結婚しないままで過ごす「生涯未婚率」が上昇している。 30年前までは、生涯に一度も結婚しない人の割合は、男性が2.6%、女性が4.4%だった。ところがバブル崩壊を契機に、生涯未婚率が急上昇。2010年の時点で、男性が20.1%、女性も10.6%にまで上がってしまった。 このまま状況で推移すると、将来はどうなるのか。2030年には、「全世帯に占める単身世帯の割合」が、37.4%に達すると、国立社会保障・人口問題研究所は予測している。 では、なぜ結婚ができないのだろうか。もっとも大きな要因が「経済的な理由」だ。 この点については、以前、このコーナーの記事「年収が低いと結婚できない―やがて男性の4人に1人は「生涯未婚」になる」で、結婚できるかできないかを隔てる「年収300万円の壁」を明らかにした。そして、男性の場合、年収が高いほど結婚している割合が高くなることも指摘した。 具体的にはこうだ。同世代の半数以上が結婚しているのは、20代後半では年収500万円以上、30代前半ならば300万円以上。つまり、「年収300万円」が、結婚ができるかどうかの壁になっている。 ◇ 年収300万以上が女性と付き合える境界線 しかし、現実はそれだけにとどまらない。 「年収が低いと、交際相手も出来ない」 経済学者の橘木俊詔氏と迫田さやか氏の著書「夫婦格差社会」(中央公論新社刊)は、さらに、こんな現実も明らかにしている。 ここでも、男性に注目しよう。やはり、壁は「300万円」だ。 年収300万円未満の男性の場合、20~30代を通して、既婚者は10%に満たない。「恋人がいる」という男性も、20代で25%、30代では18%だけだ。そして、「交際を経験したことがない」という割合が、30代で33%もいる。 これは、その一つ上の「年収が300万円以上400万円未満」の層になると、既婚率は26%へと急上昇する。また「交際経験なし」という層も20%未満になる。つまり「年収300万円」は、結婚できるかどうかの壁であるだけでなく、それ以前の「彼女ができる」ための巨大な境界線にもなっているのだ。 ◇ 正規か非正規かも分かれ目に この事実を、どう考えるべきか。著者の橘木氏は、こう推察している。 「結婚まで至らずとも、女性との交際には、おカネがある程度は必要だ。また、『経済的理由から結婚は難しい』という思いがあれば、女性に積極的にアプローチする気すら起きないかもしれない」 一方、女性はどうなのだろうか。この本のデータによると、「300万円の壁」は男性ほど明確ではない。年収が低いほど「交際経験なし」の割合は増加する傾向はあるが、男性のように「300万円」を境に跳ね上がる、ということはない。 「まだ日本では、『夫婦生活の経済責任者は男性だ』という意識が強い。『男は外で働き、女は家事育児』という性別役割分担が、まだ根強い」 橘木氏は理由をこう推理している。さらに同書では、雇用形態別の交際状況についても言及。ここでは「正社員」がキーワードとなり、恋人の有無と密接に関係しているのだという。 具体的には、正規雇用の男性の場合、「既婚」が27%を超え、「恋人あり」も同じ程度いる。「交際経験がない」は15%弱に過ぎない。一方、非正規雇用の男性では、「既婚」はわずか4.7%。「恋人あり」も15%に過ぎない。「交際を経験したことがない」は39.3%に達している。 「『年収300万円以上の正社員』でない男性は一生を独身で過ごす可能性が高い」。浮かび上がった現実を見ると、かくもデータは残酷だ。
「交際の壁」 年収が低いと、結婚どころか彼女すらできない
一生を結婚しないままで過ごす「生涯未婚率」が上昇している。
30年前までは、生涯に一度も結婚しない人の割合は、男性が2.6%、女性が4.4%だった。ところがバブル崩壊を契機に、生涯未婚率が急上昇。2010年の時点で、男性が20.1%、女性も10.6%にまで上がってしまった。
このまま状況で推移すると、将来はどうなるのか。2030年には、「全世帯に占める単身世帯の割合」が、37.4%に達すると、国立社会保障・人口問題研究所は予測している。
では、なぜ結婚ができないのだろうか。もっとも大きな要因が「経済的な理由」だ。
この点については、以前、このコーナーの記事「年収が低いと結婚できない―やがて男性の4人に1人は「生涯未婚」になる」で、結婚できるかできないかを隔てる「年収300万円の壁」を明らかにした。そして、男性の場合、年収が高いほど結婚している割合が高くなることも指摘した。
具体的にはこうだ。同世代の半数以上が結婚しているのは、20代後半では年収500万円以上、30代前半ならば300万円以上。つまり、「年収300万円」が、結婚ができるかどうかの壁になっている。
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年収300万以上が女性と付き合える境界線
しかし、現実はそれだけにとどまらない。
「年収が低いと、交際相手も出来ない」
経済学者の橘木俊詔氏と迫田さやか氏の著書「夫婦格差社会」(中央公論新社刊)は、さらに、こんな現実も明らかにしている。
ここでも、男性に注目しよう。やはり、壁は「300万円」だ。
年収300万円未満の男性の場合、20~30代を通して、既婚者は10%に満たない。「恋人がいる」という男性も、20代で25%、30代では18%だけだ。そして、「交際を経験したことがない」という割合が、30代で33%もいる。
これは、その一つ上の「年収が300万円以上400万円未満」の層になると、既婚率は26%へと急上昇する。また「交際経験なし」という層も20%未満になる。つまり「年収300万円」は、結婚できるかどうかの壁であるだけでなく、それ以前の「彼女ができる」ための巨大な境界線にもなっているのだ。
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正規か非正規かも分かれ目に
この事実を、どう考えるべきか。著者の橘木氏は、こう推察している。
「結婚まで至らずとも、女性との交際には、おカネがある程度は必要だ。また、『経済的理由から結婚は難しい』という思いがあれば、女性に積極的にアプローチする気すら起きないかもしれない」
一方、女性はどうなのだろうか。この本のデータによると、「300万円の壁」は男性ほど明確ではない。年収が低いほど「交際経験なし」の割合は増加する傾向はあるが、男性のように「300万円」を境に跳ね上がる、ということはない。
「まだ日本では、『夫婦生活の経済責任者は男性だ』という意識が強い。『男は外で働き、女は家事育児』という性別役割分担が、まだ根強い」
橘木氏は理由をこう推理している。さらに同書では、雇用形態別の交際状況についても言及。ここでは「正社員」がキーワードとなり、恋人の有無と密接に関係しているのだという。
具体的には、正規雇用の男性の場合、「既婚」が27%を超え、「恋人あり」も同じ程度いる。「交際経験がない」は15%弱に過ぎない。一方、非正規雇用の男性では、「既婚」はわずか4.7%。「恋人あり」も15%に過ぎない。「交際を経験したことがない」は39.3%に達している。
「『年収300万円以上の正社員』でない男性は一生を独身で過ごす可能性が高い」。浮かび上がった現実を見ると、かくもデータは残酷だ。