大手企業「働かない中高年」の実態――旭化成、パナソニック、朝日新聞 2012年2月24日 企業徹底研究 ツイート 内閣府がまとめた「日本経済2011-2012」によると、2011年9月時点で「雇用保蔵者数」が465万人に達したという。「雇用保蔵」とは最適な雇用者数と実際の常用雇用者数との差、すなわち企業の余剰人員=「社内失業者」のことである。 雇用保蔵の推計(「平成21(2009)年度年次経済財政報告」より)。09年第1四半期の607万人より改善しているが、11年9月の465万人は依然として高い水準だ。 全雇用者数は約5470万人なので、「雇用保蔵率」は8.5%。約12人に1人は「大した仕事はないが企業が(仕方なく)雇用し続けている社員」ということになる。この割合が高まると、働きが悪い中高年の人件費が重い負担となったり、若手社員の給与が不当に抑制されたり、学生の就業機会が減ることにつながる。 「中高年」で検索すると若手社員の不満が続々 そこで、今回、「ノンワーキングリッチ」というキーワードでキャリコネの口コミを検索してみた。「ノンワーキングリッチ」とは、働かないのに給料が高い中高年をやゆする言葉だ。まずヒットしたのは、超大手で有名企業の旭化成である。その社員は、自社の状況をこう嘆いている。 「(辛さや憤りを感じるのは)ノンワーキングリッチな中年社員の存在。ほとんど働かず、かといって高い付加価値を生み出しているわけでもなく、若手よりもはるかに高い報酬を得ており、モチベーションが下がる」(研究開発を担当する、20代後半の男性社員) 現在、多くの企業が水面下で早期希望退職の募集を行っている。標的となっているのは、40歳から58歳の中高年世代だ。そこで今度は検索のキーワードを「中高年」に変えてみた。すると、さらに、多くの大手企業がヒットした。 「高い給料をもらいながら働かない中高年が多い。一方で人件費以外は徹底的にコスト削減(特に工場)を行っておりアンバランス」(三菱重工業で海外営業職の30代前半の男性社員) 「問題は(略)優秀な若手の仕事は増える一方でありながら、大して仕事をしていない人が高い給料ももらっているという状況から生じるモチベーションの低下です。さらに、やはり中高年が多いことが会社としての変革を阻んでいます」(パナソニックで経営企画職の30代前半の男性社員) 「中高年になって業務に貢献できなくなっても、だらだらと居させてくれるという点では、すばらしい会社だが、社内失業者が大量にいる」(朝日新聞社でライターの30代後半の男性社員) 「大手企業に入れば安泰」は崩壊寸前 他にも、大手企業の内からも漏れてくる怨嗟の声は、掲載しきれないほど多い。 「バブル世代、50代など中高年社員のボリュームが大きく、できる人とできない人の差も大きい。(略)たいした仕事をしていなくても、中高年世代は私の倍近い年収を手にしていることを思うと、世代間の不公平感は確実にある」(富士ゼロックスで技術職の20代後半の女性社員) 「能力がなくても一定のラインまでは昇格できるため、特に中高年にやる気のない社員が多い。外部から見た企業イメージと実態が180度異なる」(昭和シェル石油で代理店営業の30代の男性社員) シューカツ生の「大手企業志向」が合理的と言われてきたのは、こういった手厚すぎる終身雇用が、これからも永遠に続くと思われたからだろう。しかし、現実にはそうはいかない。 三菱重工業は先日、40%を超える業績の下方修正を発表。パナソニックは11年度の決算で、過去最悪の7800億円の赤字に転落する見通しだ。こうした企業の収益悪化が続けば、雇用の維持は難しくなる。 日本では高給職種の代名詞だった新聞社をはじめとする大手マスコミも安泰ではない。米国ではデジタル化の波に押し流された新聞社で倒産が相次ぎ、多くの記者が路頭に迷っている。その波は、まもなく日本にも到達するだろう。その時、時代の変化に合わせられないでいる日本の新聞社も同じ道をたどりかねない。 ただ、こうした状況は若者にとってプラスになるかも知れない。まもなく団塊の世代を中心とする世代が定年を迎え、中高年はリストラで退職するなど、大手企業から大量の社内失業者が排出されるからだ。そうなれば、優秀な若手社員の待遇は改善される可能性があるし、若者の雇用機会も増えるかも知れない。しかし、その頃には「大手に入ってしまえば安泰」という、これまでのルールも一緒になくなっている可能性は高い。
大手企業「働かない中高年」の実態――旭化成、パナソニック、朝日新聞
内閣府がまとめた「日本経済2011-2012」によると、2011年9月時点で「雇用保蔵者数」が465万人に達したという。「雇用保蔵」とは最適な雇用者数と実際の常用雇用者数との差、すなわち企業の余剰人員=「社内失業者」のことである。
雇用保蔵の推計(「平成21(2009)年度年次経済財政報告」より)。09年第1四半期の607万人より改善しているが、11年9月の465万人は依然として高い水準だ。
全雇用者数は約5470万人なので、「雇用保蔵率」は8.5%。約12人に1人は「大した仕事はないが企業が(仕方なく)雇用し続けている社員」ということになる。この割合が高まると、働きが悪い中高年の人件費が重い負担となったり、若手社員の給与が不当に抑制されたり、学生の就業機会が減ることにつながる。
「中高年」で検索すると若手社員の不満が続々
そこで、今回、「ノンワーキングリッチ」というキーワードでキャリコネの口コミを検索してみた。「ノンワーキングリッチ」とは、働かないのに給料が高い中高年をやゆする言葉だ。まずヒットしたのは、超大手で有名企業の旭化成である。その社員は、自社の状況をこう嘆いている。
「(辛さや憤りを感じるのは)ノンワーキングリッチな中年社員の存在。ほとんど働かず、かといって高い付加価値を生み出しているわけでもなく、若手よりもはるかに高い報酬を得ており、モチベーションが下がる」(研究開発を担当する、20代後半の男性社員)
現在、多くの企業が水面下で早期希望退職の募集を行っている。標的となっているのは、40歳から58歳の中高年世代だ。そこで今度は検索のキーワードを「中高年」に変えてみた。すると、さらに、多くの大手企業がヒットした。
「高い給料をもらいながら働かない中高年が多い。一方で人件費以外は徹底的にコスト削減(特に工場)を行っておりアンバランス」(三菱重工業で海外営業職の30代前半の男性社員)
「問題は(略)優秀な若手の仕事は増える一方でありながら、大して仕事をしていない人が高い給料ももらっているという状況から生じるモチベーションの低下です。さらに、やはり中高年が多いことが会社としての変革を阻んでいます」(パナソニックで経営企画職の30代前半の男性社員)
「中高年になって業務に貢献できなくなっても、だらだらと居させてくれるという点では、すばらしい会社だが、社内失業者が大量にいる」(朝日新聞社でライターの30代後半の男性社員)
「大手企業に入れば安泰」は崩壊寸前
他にも、大手企業の内からも漏れてくる怨嗟の声は、掲載しきれないほど多い。
「バブル世代、50代など中高年社員のボリュームが大きく、できる人とできない人の差も大きい。(略)たいした仕事をしていなくても、中高年世代は私の倍近い年収を手にしていることを思うと、世代間の不公平感は確実にある」(富士ゼロックスで技術職の20代後半の女性社員)
「能力がなくても一定のラインまでは昇格できるため、特に中高年にやる気のない社員が多い。外部から見た企業イメージと実態が180度異なる」(昭和シェル石油で代理店営業の30代の男性社員)
シューカツ生の「大手企業志向」が合理的と言われてきたのは、こういった手厚すぎる終身雇用が、これからも永遠に続くと思われたからだろう。しかし、現実にはそうはいかない。
三菱重工業は先日、40%を超える業績の下方修正を発表。パナソニックは11年度の決算で、過去最悪の7800億円の赤字に転落する見通しだ。こうした企業の収益悪化が続けば、雇用の維持は難しくなる。
日本では高給職種の代名詞だった新聞社をはじめとする大手マスコミも安泰ではない。米国ではデジタル化の波に押し流された新聞社で倒産が相次ぎ、多くの記者が路頭に迷っている。その波は、まもなく日本にも到達するだろう。その時、時代の変化に合わせられないでいる日本の新聞社も同じ道をたどりかねない。
ただ、こうした状況は若者にとってプラスになるかも知れない。まもなく団塊の世代を中心とする世代が定年を迎え、中高年はリストラで退職するなど、大手企業から大量の社内失業者が排出されるからだ。そうなれば、優秀な若手社員の待遇は改善される可能性があるし、若者の雇用機会も増えるかも知れない。しかし、その頃には「大手に入ってしまえば安泰」という、これまでのルールも一緒になくなっている可能性は高い。