若者の「社内失業」問題は、中高年の「窓際族」より深刻だ! 2012年3月23日 企業徹底研究 ツイート 「社内失業者」の割合が全雇用者の8・5%に達することは、以前、「大手企業『働かない中高年』の実態」と題して、この企業徹底研究で取り上げたとおりだ。しかし、会社に雇われながら仕事がないのは、中高年だけではない。実は社内でくすぶっている20代や30代の社員もいる。 首都圏の電鉄会社の経理部門で働く36歳の女性は、年収240万円。仕事のやりがいは「あまりない」と虚ろだ。 「毎日与えられた仕事をこなし(ているが)、仕事がなくなることも多く、時間をつぶすのが大変。もっと仕事がほしい」 ◇ 業務経験が乏しければ「未来」まで失われる 学習塾チェーンの教員を勤める20代後半の女性は、年収230万円の契約社員。雇用が安定していない非正規雇用は、海外では正社員より給与が高いところもあるが、日本ではほとんどの場合、極めて低収入だ。 「(辛さを感じるのは)やることがないこと。毎日、今日は会社に行って何をして時間を潰そうかと悩む日々。出来ることが増えていかないのも、面白みがない。入試の時期は、さすがに少し忙しくはなるが、どこかで役に立つようなスキルがつくことは全くない」 大手楽器メーカーの営業企画部門に2008年ころまで勤めていた20代後半の男性は、当時をこう振り返る。 「基本的にヒマすぎて、何かをやってるふりをするのが大変でした(笑)ただ、やる意味の分からない、売れない言い訳だらけの会議の資料作成がやたらと面倒だったり…。部署にもよるのだろうけど、一言で言えば役所みたいな会社でした。今、この不況下で当時のままだったら相当厳しいでしょうね」 「ヒマでうらやましい」と思うかもしれないが、年齢が上がれば早期希望退職の募集対象者となるなど、会社から退職を奨められるおそれが高まる。それまでに業務経験が乏しければ、他社への再就職は難しくなる。 若いころの経験やキャリアの差は、中高年におけるスキルや会社の処遇の大きな違いとなって現れる。非常に低い給与のまま据え置かれている「若年社内失業者」は、「現在」とともに「未来」も奪われているといっていいだろう。 ◇ 従業員の可能性をゼロに近づける会社でいいのか 一方、安月給で過酷な仕事を引き受けざるをえない状況にある人もいる。大阪にある製薬会社で2008年ころまで働いた男性は、30代前半で年収240万円程度だった。 「契約社員といいますか、基本的には完全にアルバイトということです。昇級もほとんど聞いたことはありません。まさに“ワーキングプア”の世界でした。昼休みは皆下を向いてぐったりしていました」 「ワーキングプア」とは、フルタイムで働いても、ギリギリの生活すら困難だという低賃金で働いている人々のことを指す。労働組合は本来、このような人たちを救うことが求められているはずだが、いまは大手企業の中高年正社員の「既得権」を守る方を優先しているのではないか。 とはいえ、40~60代の人たちが路頭に迷えば、その妻や子どもたちの生活もままならなくなる。「老害は退け!」と訴えれば、すべての問題がきれいに片付くわけではない。 大手ドラッグストアチェーンに勤める20代後半の男性は、どれだけ努力しても給与が上がる見込みは「まったくありません」と言い切り、「頑張っている自分がみじめになるだけ」と悲しみをこらえる。 「特に若手社員にとってはスキルアップにもなりませんので早く転職したほうがいいです。長くいればいるほど自身の将来の可能性をゼロに近づけていきます」 いくら儲かっていても、従業員にここまで言われるような会社は、存在価値が疑われる。社員に家庭を営めるくらいの給与を支払い、スキルアップの機会を与えることは、社会的存在である会社の大事な役割であるはずだ。 【その他の企業徹底研究の記事はこちら】 *「キャリコネ」は、社員が投稿した企業に関する口コミ、年収情報、面接体験などを共有するサイトです。2012年2月末現在、45万社、16万6000件の口コミが登録されています。
若者の「社内失業」問題は、中高年の「窓際族」より深刻だ!
「社内失業者」の割合が全雇用者の8・5%に達することは、以前、「大手企業『働かない中高年』の実態」と題して、この企業徹底研究で取り上げたとおりだ。しかし、会社に雇われながら仕事がないのは、中高年だけではない。実は社内でくすぶっている20代や30代の社員もいる。
首都圏の電鉄会社の経理部門で働く36歳の女性は、年収240万円。仕事のやりがいは「あまりない」と虚ろだ。
「毎日与えられた仕事をこなし(ているが)、仕事がなくなることも多く、時間をつぶすのが大変。もっと仕事がほしい」
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業務経験が乏しければ「未来」まで失われる
学習塾チェーンの教員を勤める20代後半の女性は、年収230万円の契約社員。雇用が安定していない非正規雇用は、海外では正社員より給与が高いところもあるが、日本ではほとんどの場合、極めて低収入だ。
「(辛さを感じるのは)やることがないこと。毎日、今日は会社に行って何をして時間を潰そうかと悩む日々。出来ることが増えていかないのも、面白みがない。入試の時期は、さすがに少し忙しくはなるが、どこかで役に立つようなスキルがつくことは全くない」
大手楽器メーカーの営業企画部門に2008年ころまで勤めていた20代後半の男性は、当時をこう振り返る。
「基本的にヒマすぎて、何かをやってるふりをするのが大変でした(笑)ただ、やる意味の分からない、売れない言い訳だらけの会議の資料作成がやたらと面倒だったり…。部署にもよるのだろうけど、一言で言えば役所みたいな会社でした。今、この不況下で当時のままだったら相当厳しいでしょうね」
「ヒマでうらやましい」と思うかもしれないが、年齢が上がれば早期希望退職の募集対象者となるなど、会社から退職を奨められるおそれが高まる。それまでに業務経験が乏しければ、他社への再就職は難しくなる。
若いころの経験やキャリアの差は、中高年におけるスキルや会社の処遇の大きな違いとなって現れる。非常に低い給与のまま据え置かれている「若年社内失業者」は、「現在」とともに「未来」も奪われているといっていいだろう。
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従業員の可能性をゼロに近づける会社でいいのか
一方、安月給で過酷な仕事を引き受けざるをえない状況にある人もいる。大阪にある製薬会社で2008年ころまで働いた男性は、30代前半で年収240万円程度だった。
「契約社員といいますか、基本的には完全にアルバイトということです。昇級もほとんど聞いたことはありません。まさに“ワーキングプア”の世界でした。昼休みは皆下を向いてぐったりしていました」
「ワーキングプア」とは、フルタイムで働いても、ギリギリの生活すら困難だという低賃金で働いている人々のことを指す。労働組合は本来、このような人たちを救うことが求められているはずだが、いまは大手企業の中高年正社員の「既得権」を守る方を優先しているのではないか。
とはいえ、40~60代の人たちが路頭に迷えば、その妻や子どもたちの生活もままならなくなる。「老害は退け!」と訴えれば、すべての問題がきれいに片付くわけではない。
大手ドラッグストアチェーンに勤める20代後半の男性は、どれだけ努力しても給与が上がる見込みは「まったくありません」と言い切り、「頑張っている自分がみじめになるだけ」と悲しみをこらえる。
「特に若手社員にとってはスキルアップにもなりませんので早く転職したほうがいいです。長くいればいるほど自身の将来の可能性をゼロに近づけていきます」
いくら儲かっていても、従業員にここまで言われるような会社は、存在価値が疑われる。社員に家庭を営めるくらいの給与を支払い、スキルアップの機会を与えることは、社会的存在である会社の大事な役割であるはずだ。
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*「キャリコネ」は、社員が投稿した企業に関する口コミ、年収情報、面接体験などを共有するサイトです。2012年2月末現在、45万社、16万6000件の口コミが登録されています。