創業者一族が支配権握る「同族会社」――メリットとデメリット 2012年3月30日 企業徹底研究 ツイート 創業者一族が実質的な経営の支配権を握る「同族会社」。資本と経営の分離が図られている欧米と比べて、日本には同族経営の会社が格段に多い。世界のトヨタ自動車でさえ、豊田家の影響力は小さくない。 ウィキペディアの「同族経営」の項目には、多くの有名企業の名前が並ぶ。竹中工務店や村田製作所といった創業者の苗字を掲げる会社だけでなく、キヤノン(御手洗家)やYKK(吉田家)、サントリー(鳥井家・佐治家)や大正製薬(上原家)、エーザイ(内藤家)、タカラトミー(富山家)やコナミ(上月家)、カプコン(辻元家)など枚挙にいとまがない。 ◇ 「歴代の社長の銅像を建て、営業所に写真を飾る」 同族会社にもメリットはあると言われる。「後継者に対する充実した早期教育」「親族間の結束力の強さ」「コミュニケーションのよさ」などである。一方で、親族の利害を優先した経営を行ったり、会社の資産を私的に流用するなどの悪いケースも見られる。 東京と岐阜に本社を置く物流資材メーカーで代理店営業を行う20代後半の男性は、会社の様子を呆れながら説明している。 「同族、社長は神様レベル。今の時代に初代、2代目の社長の銅像を置いてたりする。写真は全営業所かな?(略)ゴルフ場、ボーリング場、美術館を所有。利益を上げられてる気はしなく、完全に社長の趣味の世界」 都内の従業員200名規模のIT教育研修会社に勤める20代後半の女性は、コールセンターで働いているが、その眼差しは辛辣だ。 「社内環境は同族企業なので、親族ばかり…と思うこともある。才能無いのに経営層にいるので不満に思うこともある。(略)会社経営を続けていくならば同族経営はいい加減終わりにしていただきたい」 中には、創業家とは血縁のない一族が経営権を握っている会社もある。大手印刷会社の研究開発部門で働く20代後半の男性社員は、会社の問題点について、こう述べている。 「なぜ創業者でもない一族が会社を牛耳っているのか疑問に感じる。世襲で能力が高い経営者を次々と排(輩)出が出来るはずもないので、今後の業績に不安を強く感じる。競争を勝ち抜いてきたわけでもないのに、8億以上の高報酬を受け取っている事も疑問。役員を厚遇し、社員を冷遇する会社に未来は無い」 能力のない親族が後継社長になれば、会社の行く末は危うくなり、社員たちのやる気も失せる。そもそも、頑張ればトップを取るチャンスがある会社で働くことと、そんな可能性が全くない会社で働くことでは、心理的に大きな違いがある。 ◇ 同族企業だからできる「積極的な海外進出」 もちろん、同族経営の会社であっても、その中をうまく泳ぎ切って安泰なサラリーマン生活を送る道もありうる。 食品会社で研究開発に携わる30代前半の男性は、出世をするには「同族に気に入られることが必要条件」としつつ、「あくの強い経営者ではないので、非常にまじめに仕事に取り組むことができます」と楽観的だ。 「若く出世する社員が一方、降格も明確にスピード感を持って実施されます。非常にメリハリのきいた人事をすることがあります」 賛否両論はあるだろうが、これも同族経営の良いところではないか。大手総合ディベロッパーで法人営業を行う20代前半男性に至っては、同族経営が利点となっていると高く評価している。 「都市開発の規模が他者(社)と比較してもかなり大規模なのが魅力のひとつ。また同業他社にはないような積極的な海外進出も同族企業だからこそ出来ている」 雇われサラリーマン社長が失点を恐れれば、リスクを取らない経営を選びがちになる。しかし同族経営であれば、短期的な評価に一喜一憂する必要はない。特に数十年単位で物事を考える都市開発においては、プラスに働くこともありそうだ。 いずれにしても就職・転職先選びの際には、その会社が同族経営かどうかは、一度は確認しておくべきだろう。 【その他の企業徹底研究の記事はこちら】 *「キャリコネ」は、社員が投稿した企業に関する口コミ、年収情報、面接体験などを共有するサイトです。2012年2月末現在、45万社、16万6000件の口コミが登録されています。
創業者一族が支配権握る「同族会社」――メリットとデメリット
創業者一族が実質的な経営の支配権を握る「同族会社」。資本と経営の分離が図られている欧米と比べて、日本には同族経営の会社が格段に多い。世界のトヨタ自動車でさえ、豊田家の影響力は小さくない。
ウィキペディアの「同族経営」の項目には、多くの有名企業の名前が並ぶ。竹中工務店や村田製作所といった創業者の苗字を掲げる会社だけでなく、キヤノン(御手洗家)やYKK(吉田家)、サントリー(鳥井家・佐治家)や大正製薬(上原家)、エーザイ(内藤家)、タカラトミー(富山家)やコナミ(上月家)、カプコン(辻元家)など枚挙にいとまがない。
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「歴代の社長の銅像を建て、営業所に写真を飾る」
同族会社にもメリットはあると言われる。「後継者に対する充実した早期教育」「親族間の結束力の強さ」「コミュニケーションのよさ」などである。一方で、親族の利害を優先した経営を行ったり、会社の資産を私的に流用するなどの悪いケースも見られる。
東京と岐阜に本社を置く物流資材メーカーで代理店営業を行う20代後半の男性は、会社の様子を呆れながら説明している。
「同族、社長は神様レベル。今の時代に初代、2代目の社長の銅像を置いてたりする。写真は全営業所かな?(略)ゴルフ場、ボーリング場、美術館を所有。利益を上げられてる気はしなく、完全に社長の趣味の世界」
都内の従業員200名規模のIT教育研修会社に勤める20代後半の女性は、コールセンターで働いているが、その眼差しは辛辣だ。
「社内環境は同族企業なので、親族ばかり…と思うこともある。才能無いのに経営層にいるので不満に思うこともある。(略)会社経営を続けていくならば同族経営はいい加減終わりにしていただきたい」
中には、創業家とは血縁のない一族が経営権を握っている会社もある。大手印刷会社の研究開発部門で働く20代後半の男性社員は、会社の問題点について、こう述べている。
「なぜ創業者でもない一族が会社を牛耳っているのか疑問に感じる。世襲で能力が高い経営者を次々と排(輩)出が出来るはずもないので、今後の業績に不安を強く感じる。競争を勝ち抜いてきたわけでもないのに、8億以上の高報酬を受け取っている事も疑問。役員を厚遇し、社員を冷遇する会社に未来は無い」
能力のない親族が後継社長になれば、会社の行く末は危うくなり、社員たちのやる気も失せる。そもそも、頑張ればトップを取るチャンスがある会社で働くことと、そんな可能性が全くない会社で働くことでは、心理的に大きな違いがある。
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同族企業だからできる「積極的な海外進出」
もちろん、同族経営の会社であっても、その中をうまく泳ぎ切って安泰なサラリーマン生活を送る道もありうる。
食品会社で研究開発に携わる30代前半の男性は、出世をするには「同族に気に入られることが必要条件」としつつ、「あくの強い経営者ではないので、非常にまじめに仕事に取り組むことができます」と楽観的だ。
「若く出世する社員が一方、降格も明確にスピード感を持って実施されます。非常にメリハリのきいた人事をすることがあります」
賛否両論はあるだろうが、これも同族経営の良いところではないか。大手総合ディベロッパーで法人営業を行う20代前半男性に至っては、同族経営が利点となっていると高く評価している。
「都市開発の規模が他者(社)と比較してもかなり大規模なのが魅力のひとつ。また同業他社にはないような積極的な海外進出も同族企業だからこそ出来ている」
雇われサラリーマン社長が失点を恐れれば、リスクを取らない経営を選びがちになる。しかし同族経営であれば、短期的な評価に一喜一憂する必要はない。特に数十年単位で物事を考える都市開発においては、プラスに働くこともありそうだ。
いずれにしても就職・転職先選びの際には、その会社が同族経営かどうかは、一度は確認しておくべきだろう。
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*「キャリコネ」は、社員が投稿した企業に関する口コミ、年収情報、面接体験などを共有するサイトです。2012年2月末現在、45万社、16万6000件の口コミが登録されています。