「準大手・中堅証券」という生き方 岡三、東海東京、丸三、いちよしの「ノルマ漬け」 2012年5月21日 企業徹底研究 ツイート バブル崩壊後の長引く金融不況の影響で、ここ数年、証券業界のビジネス構造が変化してきた。銀行による証券業への参入で、勢力図が大きく書き換えられている。 証券会社のグループとしては、以下のように大別される。 ・独立系大手証券 ・銀行系証券 ・準大手、中堅証券 独立系大手には業界のガリバーである野村証券や大和証券があり、銀行系には三菱UFJモルガンスタンレー証券やみずほ証券、三井住友グループのSMBC日興証券などがある。これら大手は、それぞれが狙う総合化戦略の下で、M&A(企業の合併・買収)を繰り返しながら規模拡大を続けてきた。 そんな激しい動きのなかで、まるで谷底でうごめくように苦闘するのが、準大手・中堅の証券会社だ。 具体的には、このグループに入る証券会社として、岡三証券、東海東京証券、丸三証券、いちよし証券、東洋証券がある。また、それよりさらに小さな証券会社として、水戸証券、岩井証券、極東証券などがある。 金融専門の編集者・記者として長い経験をもつ齋藤裕氏は、近著『金融業界大研究(第3版)』で、こうした準大手・中堅の先行きについて注目している。 「大半の準大手・中堅証券は、株式手数料収入依存からの脱却は難しい。かといっていたずらにリスクの高い投資銀行ビジネスモデルに傾斜することもない」 「各社とも今後、一段と収益の安定化、コスト削減を急ぐ考えだ。組織・店舗の見直しを急ぐ会社もあり、リストラもこれから本格化しそうだ」 暗い見通しである。 ではそうした準大手・中堅の証券会社員たち自身は、どう考えているのか。キャリコネに寄せられた社員の口コミから、現場の声や働きぶりについて見ていこう。 ◇ ノルマ達成できなければ切り捨て、軍隊のような新人研修 まずは、岡三証券。営業担当の20代前半の男性社員は、自分の会社の「使い捨て体質」について、こう指摘する。 「大量採用、大量退職。このスタンスはいい加減変えた方が良いと思う。特に新卒で証券会社は非常に得るものがある半面、育成しようというスタンスがない」 ノルマが達成しない社員は、追い込んで辞職させるという。それによって、新しい社員を入れているわけだ。その新入社員が優秀なら仕事を続けてもらうが、ダメならまた追い込んで辞めさせ、次を入れる繰り返しだそうだ。いかにも証券会社らしいやり方だ。 「会社として非常に不安定なのではと思うし、採用にかける費用もばかばか鹿しい。この体制を刷新して、定年まで働きたいと思える会社になって欲しい」 と、この男性社員は、切実に訴えている。 東海東京証券はどうだろうか。 「入社後すぐに待ち受けている新入社員研修から異様な雰囲気を感じた」 と、暴露するのは、営業担当の20代後半の女性社員だ。上司に対する態度からお辞儀の角度まで厳しく指導され、まるで軍隊のようだったと振り返る。 「これから待ち受けているであろうツラく厳しい証券マン、証券レディとしての仕事に対する、『これくらいの仕打ちにめげているようでは務まらない』という会社からのメッセージと試されているという雰囲気を感じた」 そして実際、その後の仕事は「研修の1000倍は大変なものであった」のだそうだ。 ◇ ノルマがなく社風が良くても、やはり最後は営業成績がすべて 丸三証券は、これら2社に比べれば、まだのどかな感じがする。 「会社の雰囲気はアットホームな感じで、職場は仲が良い」(20代後半のルートセールスの男性社員) 「殺伐とした職場ではありません。(略)飲み会なんかも時々ありました。いい環境だと思います」(20代前半の営業の女性社員) などの声が聞こえる。25歳の代理店営業を担当する男性社員は、こう言う。 「ノルマを廃止しており、社員一人一人が、自ら考えて行動できる」 と、前向きな評価だ。 だが、当然ながら、たとえ明確なノルマがなくても、営業成績を厳しく問われることには変わりない。 「開拓営業は、顧客にとっては迷惑きわまりない。『最低5回は訪問しましょう』というルールがあり、クレーム電話が来ることもあるが、それを勲章とみなす雰囲気が社内にある」 と、明かすのは、20代前半の男性社員だ。20代後半の男性社員もこう言う。 「目立った成績を残せれば出世も早いと思います。結果が全てです」 結局、証券会社は数字の世界だ。「ノルマ廃止」を掲げていても、結果としての「営業成績がすべて」であることに変わりはない。いちよし証券でコンサルティング営業を担当する男性社員(28)も言う。 「証券会社のため、当然手数料に対するノルマは厳しい。出世するには、手数料を稼がなければいけない。出世コースとしては、主任→係長→課長→支店長のように『リテールひと筋』でないと上には行けない」 要するに、「客にどれだけ売るか」の世界なのだ。この男性社員はこうも言う。 「建前上では8:30出社なのだが、8:00から会議が始まる。支店にもよるが、早いところでは7:00には出社する事を求められる。当然手当がつくこともない。また、土日のサービス出社が常態化している」 「いやなら辞めろ」と、いうことか。証券会社は、やはり、どこまでも証券会社なのだ。 *「キャリコネ」は、社員が投稿した企業に関する口コミ、年収情報、面接体験などを共有するサイトです。2012年4月末現在、45万社、17万件の口コミが登録されています。
「準大手・中堅証券」という生き方 岡三、東海東京、丸三、いちよしの「ノルマ漬け」
バブル崩壊後の長引く金融不況の影響で、ここ数年、証券業界のビジネス構造が変化してきた。銀行による証券業への参入で、勢力図が大きく書き換えられている。
証券会社のグループとしては、以下のように大別される。
・独立系大手証券
・銀行系証券
・準大手、中堅証券
独立系大手には業界のガリバーである野村証券や大和証券があり、銀行系には三菱UFJモルガンスタンレー証券やみずほ証券、三井住友グループのSMBC日興証券などがある。これら大手は、それぞれが狙う総合化戦略の下で、M&A(企業の合併・買収)を繰り返しながら規模拡大を続けてきた。
そんな激しい動きのなかで、まるで谷底でうごめくように苦闘するのが、準大手・中堅の証券会社だ。
具体的には、このグループに入る証券会社として、岡三証券、東海東京証券、丸三証券、いちよし証券、東洋証券がある。また、それよりさらに小さな証券会社として、水戸証券、岩井証券、極東証券などがある。
金融専門の編集者・記者として長い経験をもつ齋藤裕氏は、近著『金融業界大研究(第3版)』で、こうした準大手・中堅の先行きについて注目している。
「大半の準大手・中堅証券は、株式手数料収入依存からの脱却は難しい。かといっていたずらにリスクの高い投資銀行ビジネスモデルに傾斜することもない」
「各社とも今後、一段と収益の安定化、コスト削減を急ぐ考えだ。組織・店舗の見直しを急ぐ会社もあり、リストラもこれから本格化しそうだ」
暗い見通しである。
ではそうした準大手・中堅の証券会社員たち自身は、どう考えているのか。キャリコネに寄せられた社員の口コミから、現場の声や働きぶりについて見ていこう。
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ノルマ達成できなければ切り捨て、軍隊のような新人研修
まずは、岡三証券。営業担当の20代前半の男性社員は、自分の会社の「使い捨て体質」について、こう指摘する。
「大量採用、大量退職。このスタンスはいい加減変えた方が良いと思う。特に新卒で証券会社は非常に得るものがある半面、育成しようというスタンスがない」
ノルマが達成しない社員は、追い込んで辞職させるという。それによって、新しい社員を入れているわけだ。その新入社員が優秀なら仕事を続けてもらうが、ダメならまた追い込んで辞めさせ、次を入れる繰り返しだそうだ。いかにも証券会社らしいやり方だ。
「会社として非常に不安定なのではと思うし、採用にかける費用もばかばか鹿しい。この体制を刷新して、定年まで働きたいと思える会社になって欲しい」
と、この男性社員は、切実に訴えている。
東海東京証券はどうだろうか。
「入社後すぐに待ち受けている新入社員研修から異様な雰囲気を感じた」
と、暴露するのは、営業担当の20代後半の女性社員だ。上司に対する態度からお辞儀の角度まで厳しく指導され、まるで軍隊のようだったと振り返る。
「これから待ち受けているであろうツラく厳しい証券マン、証券レディとしての仕事に対する、『これくらいの仕打ちにめげているようでは務まらない』という会社からのメッセージと試されているという雰囲気を感じた」
そして実際、その後の仕事は「研修の1000倍は大変なものであった」のだそうだ。
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ノルマがなく社風が良くても、やはり最後は営業成績がすべて
丸三証券は、これら2社に比べれば、まだのどかな感じがする。
「会社の雰囲気はアットホームな感じで、職場は仲が良い」(20代後半のルートセールスの男性社員)
「殺伐とした職場ではありません。(略)飲み会なんかも時々ありました。いい環境だと思います」(20代前半の営業の女性社員)
などの声が聞こえる。25歳の代理店営業を担当する男性社員は、こう言う。
「ノルマを廃止しており、社員一人一人が、自ら考えて行動できる」
と、前向きな評価だ。
だが、当然ながら、たとえ明確なノルマがなくても、営業成績を厳しく問われることには変わりない。
「開拓営業は、顧客にとっては迷惑きわまりない。『最低5回は訪問しましょう』というルールがあり、クレーム電話が来ることもあるが、それを勲章とみなす雰囲気が社内にある」
と、明かすのは、20代前半の男性社員だ。20代後半の男性社員もこう言う。
「目立った成績を残せれば出世も早いと思います。結果が全てです」
結局、証券会社は数字の世界だ。「ノルマ廃止」を掲げていても、結果としての「営業成績がすべて」であることに変わりはない。いちよし証券でコンサルティング営業を担当する男性社員(28)も言う。
「証券会社のため、当然手数料に対するノルマは厳しい。出世するには、手数料を稼がなければいけない。出世コースとしては、主任→係長→課長→支店長のように『リテールひと筋』でないと上には行けない」
要するに、「客にどれだけ売るか」の世界なのだ。この男性社員はこうも言う。
「建前上では8:30出社なのだが、8:00から会議が始まる。支店にもよるが、早いところでは7:00には出社する事を求められる。当然手当がつくこともない。また、土日のサービス出社が常態化している」
「いやなら辞めろ」と、いうことか。証券会社は、やはり、どこまでも証券会社なのだ。
*「キャリコネ」は、社員が投稿した企業に関する口コミ、年収情報、面接体験などを共有するサイトです。2012年4月末現在、45万社、17万件の口コミが登録されています。