国も業を煮やす電力会社の杜撰経営 「国が救ってくれる」とトップは高いびき 2012年5月22日 企業徹底研究 ツイート 電力大手10社の2012年3月期決算が出そろった。増収増益を確保したのは中国電力の1社だけで、10社中の8社が赤字を計上。増収を確保し、赤字転落も免れた沖縄電力も減益は避けられなかった。 中国電力が好業績をだったのは、他の電力会社に対する販売電力量の増加と燃料費の調整制度による電気料金収入の増加が要因。増益は繰延税金資産の取り崩しなどの会計処理があったためで、業績内容は他の電力会社と大差はなかった。 電力業界が史上最悪の決算になった原因として、原発より発電コストが高い火力発電の稼働率が高くなったことに加え、原油高などによる燃料費の高騰があげられている。 しかし、真の理由は「長年の地域独占にあぐらをかいた放漫経営」との指摘が多い。原発稼働停止、燃料費高騰などの環境変化に対して有効な対策を何一つ打てなかったからだ。 関係者は「これも『想定外の出来事』と、他人事のように受け止め、事態に真剣に立ち向かおうとした役員は電力10社に一人もいなかった」と呆れ顔で話している。 そこで、こうした大赤字を垂れ流した大手電力会社について、キャリコネに寄せられた口コミからどんな会社なのかを探った。 ◇ 東京電力 コスト計算ができない正社員 まずは東京電力だ。同社は、前々期の1兆2473億円に続き、2期連続の巨額赤字を計上。ついに実質的な国有化に追い込まれてしまった。 同社の口コミを読んでいると、やはり普通の会社と違う独特の閉鎖的体質が浮かび上がってくる。例えば、30代後半の社員はこう書き込んでいる。 「未だについてゆけないのが飲み会。異常に多い。他部署の人と午後の打ち合わせや出張があると、ほぼ確実に定時で帰っての飲み会となる。飲み会に付き合わないと周囲から浮き、仕事もやり難くなり、上司の受けも悪くなって、結果的に仕事の評価も落とす」 どうやら同社は酒付き合いができない社員は疎外される会社らしい。また、上昇志向のある社員にとっては、業務が退屈なようで、20代後半の男性社員はこう述べている。 「業務が余りにも細分化、マニュアル化され過ぎているため、モチベーションを保つのが難しい」 別の20代後半の男性社員も同様の意見だ。 「仕事はマニュアルと関連法規さえ覚えておけば何とかなる。(略)上昇志向の強い人間にとっては辛い」 努力と工夫を許されない仕事は、誰だって退屈になるだろう。東電全体に漂う緊張感のなさは、こんなマニュアル仕事の影響なのかも知れない。 さらに、派遣社員で、20代後半の男性は、驚くような書き込みもしている。 「コスト削減はいいけれど、それを算出できる人がいない。正社員の代わりに契約社員がコスト算出をしてそれを説明し、それを正社員は他部署の会議で使用していた」 こうした企業体質だからか、出世するための条件も変わっているようだ。30代後半の男性社員が言う。 「ほとんどがルーチンワークなので、ミクロな差異にやりがいを見出すことができ、ほんのちょっとしたことを、さも凄いかのようにうまく上や周りにアピールできる人。後は上の欲していること(飲み会時の注文の段取りも含めて)を敏感に察し、それを踏まえた対応を続けても疲弊しない人」 東電は広瀬直己常務の社長昇格と、下河辺和彦・原子力賠償支援機構運営委員長の会長就任を決めた。政府が同社を実質国有化するために承認した「総合特別事業計画」を推進するのが両氏の使命だ。 計画には委員会設置会社への移行、社内カンパニー制の導入など経営改革のさまざまな施策が盛り込まれている。 だが、この計画は「官僚がデータを集めてパソコンで作った机上の空論。あれで東電の経営改革ができるとは官僚以外誰も思っていない」(金融関係者)と周囲の目は冷ややかだ。 なぜなら、経営改革の陣頭指揮に立つ下河辺委員長は、東電社内に基盤を持たない落下傘の会長、広瀬常務は福島原発の賠償対応にも見られたようにマニュアル通りの考え方しかできないからだ。2人とも「非常時を取り仕切るリーダーシップに欠ける」と見られているのだ。 原発をはじめとする問題が山積の東電だが、新しいトップにとっては、そうした問題に真摯(しんし)に対処してもらう一方、キャリコネの口コミから推察できる社員のモチベーション対策も重要な任務になるだろう。 ◇ 東北電力 経営者意識のないトップ 次は東北電力。同社は2319億円の赤字で、前々期より1981億円多い過去最悪の赤字幅となった。 そんな同社に対しては、査定やお役所仕事に対する社員の不満の口コミが多く見られる。例えば、27歳の男性社員は次のように言う。 「査定根拠が『上司の主観』にあるような感じだ」 この男性社員はスキルアップについても、こう書き込んでいる。 「全くといいほど成長の機会がない。社員の育成方針はゼネラリスト型なので、スキルは身に着けづらい」 一方、32歳男性社員は、こう嘆いている。 「技術的・専門的な仕事や現場作業はほとんど協力会社や外注。社員はデスクワークや社内・役所折衝が多い。(略)技術部門でも技術的な仕事をしている社員は少ない」 また、「全体的な経営方針が守りの姿勢。新しいことや自由な発想が出難い」と断言している。 他にも「事務的な役所仕事に時間を費やすばかりで、どんな決定にも長い時間がかかる」と訴える書き込みが多い。 同社の口コミを読んでいると、社員は消費者のためにではなく、会社のためにいかに仕事をしているかがよくわかる。これでは過去最悪の赤字を出しても、社員は危機意識など持ちようがないだろう。 その危機意識のなさは、トップが率先垂範(そっせんすいはん)で示している。 東北電力が今回の決算を発表した4月の定例記者会見。海輪誠社長は赤字要因を「電力需要の減少」「火力燃料費の増加」などの外的要因が不可避であったかのように淡々と述べるばかりだった。 そして、どんな対策を講じたかの言及は一言もない。すべて運任せの経営で、経営危機意識のかけらはどこにもないと思われても仕方がない様子だった。 今期の業績予想についても「需給見通しについて政府の需給検証委員会において検証していただいている最中」と、経営の最高責任者が自社の業績見通しすら立てられなかった。これでは経営者ではなく「事業管理者」とでも形容するしかないだろう。 ◇ 九州電力 思考放棄の経営 九州電力は、1664億円の赤字で、こちらも過去最悪となった。同社の口コミで目立つのは年功序列の弊害だ。 「完全なる年功序列と言っていいくらい上下関係が厳しい。(略)実力がどんなに備わっていても年功序列のため上には上がりにくい」 と、27歳の男性社員は書き込んでいる。また、28歳の男性社員はこの会社で働く虚しさを次のように訴えている。 「年功序列の体質が変わらないことからモチベーションの維持が難しく、淡々と一日一日が終了してしまっているように感じる」 業務にもムダが多いようだ。派遣社員の30代前半の女性は、その仕事ぶりに唖然としたと書き込んでいる。 「どうも無駄な仕事が多いように感じた。集計業務を行うにも何回も形を変え、手作業で集計していることが多く、非常に手間を感じた。(略)効率が悪いので、夜中までかかって集計作業をしていた」 同社の辞書には、どうやら「効率」と言う言葉はないようだ。 同社の体質を「企業エゴ」と指摘する関係者がいる。だがエゴならまだ救いがある。そこには多少なりともポジティブな思考が残っているからだ。だが、口コミを読むと思考すること自体を放棄しているような体質を感じてしまう。 それは4月に行われた記者会見の内容からも窺える。 九州電力の瓜生道明社長は、2012年度の経営方針説明の中で、1200億円規模の経費削減を「現時点で精一杯の努力」と話している。しかし、九州では高給と言われる同社賃金水準の見直し、子会社の不採算事業整理などの「聖域」には全く手を付けていない。 ようするに、国から指導された通り一遍の経費削減をしただけなのだ。懸念されている夏場の電力不足に対しても、消費者への節電のお願いと「原発を再稼働できれば」の対策しか考えていないのだろう。 これが経営といえるのだろうか。同社の説明に納得できる消費者はどこにもいないだろう。 ◇ 本来は赤字がありえない電力事業の仕組み 大手電力会社の、こうした内向き体質はどうして生まれたのだろうか。その要因はやはり電力事業の地域独占が起因しているとしか考えられない。 現在の地域独占体制が確立したのは1951年のことだ。以降、電力大手は独占事業の楯に守られて成長しながら、地域最大の設備投資発注者として「地域経済に絶大な影響力を行使してきた」(経産省関係者)と言われている。 さらに、事業コストに一定の利益率を自動的に上乗せできる「総括原価方式」による電気料金設定を許された電力大手の経営は、そもそも赤字にならない仕組みになっている。 この「独占事業」と「総括原価方式」によって、電力大手には「市場競争」や「経営努力」など、個人事業主でも当たり前に持っている経営意識は芽生えようがなかったともいえる。 そして、これまでは国の指導通り経営してさえいれば何の問題もなかったわけだ。そこから重箱の隅をつつくような、役所も驚くマニュアル主義も生まれたのは想像に難くない。 そんなところへ、「全原発稼働停止」と言う電力大手にとっては前代未聞の環境変化が起きたのだ。 ごく当たり前の経営感覚すらない電力大手が、この事態になす術もなく、政府の指示待ちになるのは、ある意味で仕方がない。「踏んだり蹴ったり」というのが電力会社トップの本音かもしれない。 こうした杜撰(ずさん)な経営に、さすがにこれではまずいと思ったのか、国は2014年以降に地域独占を解体する方針を打ち出した。しかし、これも方針がブレまくる民主党政権下ではどうなるか分からない。経営感覚がない大手電力会社が今後、どのような道をたどることになるのか、その動向から目が離せないだろう。 *「キャリコネ」は、社員が投稿した企業に関する口コミ、年収情報、面接体験などを共有するサイトです。2012年4月末現在、45万社、17万件の口コミが登録されています。
国も業を煮やす電力会社の杜撰経営 「国が救ってくれる」とトップは高いびき
電力大手10社の2012年3月期決算が出そろった。増収増益を確保したのは中国電力の1社だけで、10社中の8社が赤字を計上。増収を確保し、赤字転落も免れた沖縄電力も減益は避けられなかった。
中国電力が好業績をだったのは、他の電力会社に対する販売電力量の増加と燃料費の調整制度による電気料金収入の増加が要因。増益は繰延税金資産の取り崩しなどの会計処理があったためで、業績内容は他の電力会社と大差はなかった。
電力業界が史上最悪の決算になった原因として、原発より発電コストが高い火力発電の稼働率が高くなったことに加え、原油高などによる燃料費の高騰があげられている。
しかし、真の理由は「長年の地域独占にあぐらをかいた放漫経営」との指摘が多い。原発稼働停止、燃料費高騰などの環境変化に対して有効な対策を何一つ打てなかったからだ。
関係者は「これも『想定外の出来事』と、他人事のように受け止め、事態に真剣に立ち向かおうとした役員は電力10社に一人もいなかった」と呆れ顔で話している。
そこで、こうした大赤字を垂れ流した大手電力会社について、キャリコネに寄せられた口コミからどんな会社なのかを探った。
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東京電力 コスト計算ができない正社員
まずは東京電力だ。同社は、前々期の1兆2473億円に続き、2期連続の巨額赤字を計上。ついに実質的な国有化に追い込まれてしまった。
同社の口コミを読んでいると、やはり普通の会社と違う独特の閉鎖的体質が浮かび上がってくる。例えば、30代後半の社員はこう書き込んでいる。
「未だについてゆけないのが飲み会。異常に多い。他部署の人と午後の打ち合わせや出張があると、ほぼ確実に定時で帰っての飲み会となる。飲み会に付き合わないと周囲から浮き、仕事もやり難くなり、上司の受けも悪くなって、結果的に仕事の評価も落とす」
どうやら同社は酒付き合いができない社員は疎外される会社らしい。また、上昇志向のある社員にとっては、業務が退屈なようで、20代後半の男性社員はこう述べている。
「業務が余りにも細分化、マニュアル化され過ぎているため、モチベーションを保つのが難しい」
別の20代後半の男性社員も同様の意見だ。
「仕事はマニュアルと関連法規さえ覚えておけば何とかなる。(略)上昇志向の強い人間にとっては辛い」
努力と工夫を許されない仕事は、誰だって退屈になるだろう。東電全体に漂う緊張感のなさは、こんなマニュアル仕事の影響なのかも知れない。
さらに、派遣社員で、20代後半の男性は、驚くような書き込みもしている。
「コスト削減はいいけれど、それを算出できる人がいない。正社員の代わりに契約社員がコスト算出をしてそれを説明し、それを正社員は他部署の会議で使用していた」
こうした企業体質だからか、出世するための条件も変わっているようだ。30代後半の男性社員が言う。
「ほとんどがルーチンワークなので、ミクロな差異にやりがいを見出すことができ、ほんのちょっとしたことを、さも凄いかのようにうまく上や周りにアピールできる人。後は上の欲していること(飲み会時の注文の段取りも含めて)を敏感に察し、それを踏まえた対応を続けても疲弊しない人」
東電は広瀬直己常務の社長昇格と、下河辺和彦・原子力賠償支援機構運営委員長の会長就任を決めた。政府が同社を実質国有化するために承認した「総合特別事業計画」を推進するのが両氏の使命だ。
計画には委員会設置会社への移行、社内カンパニー制の導入など経営改革のさまざまな施策が盛り込まれている。
だが、この計画は「官僚がデータを集めてパソコンで作った机上の空論。あれで東電の経営改革ができるとは官僚以外誰も思っていない」(金融関係者)と周囲の目は冷ややかだ。
なぜなら、経営改革の陣頭指揮に立つ下河辺委員長は、東電社内に基盤を持たない落下傘の会長、広瀬常務は福島原発の賠償対応にも見られたようにマニュアル通りの考え方しかできないからだ。2人とも「非常時を取り仕切るリーダーシップに欠ける」と見られているのだ。
原発をはじめとする問題が山積の東電だが、新しいトップにとっては、そうした問題に真摯(しんし)に対処してもらう一方、キャリコネの口コミから推察できる社員のモチベーション対策も重要な任務になるだろう。
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東北電力 経営者意識のないトップ
次は東北電力。同社は2319億円の赤字で、前々期より1981億円多い過去最悪の赤字幅となった。
そんな同社に対しては、査定やお役所仕事に対する社員の不満の口コミが多く見られる。例えば、27歳の男性社員は次のように言う。
「査定根拠が『上司の主観』にあるような感じだ」
この男性社員はスキルアップについても、こう書き込んでいる。
「全くといいほど成長の機会がない。社員の育成方針はゼネラリスト型なので、スキルは身に着けづらい」
一方、32歳男性社員は、こう嘆いている。
「技術的・専門的な仕事や現場作業はほとんど協力会社や外注。社員はデスクワークや社内・役所折衝が多い。(略)技術部門でも技術的な仕事をしている社員は少ない」
また、「全体的な経営方針が守りの姿勢。新しいことや自由な発想が出難い」と断言している。
他にも「事務的な役所仕事に時間を費やすばかりで、どんな決定にも長い時間がかかる」と訴える書き込みが多い。
同社の口コミを読んでいると、社員は消費者のためにではなく、会社のためにいかに仕事をしているかがよくわかる。これでは過去最悪の赤字を出しても、社員は危機意識など持ちようがないだろう。
その危機意識のなさは、トップが率先垂範(そっせんすいはん)で示している。
東北電力が今回の決算を発表した4月の定例記者会見。海輪誠社長は赤字要因を「電力需要の減少」「火力燃料費の増加」などの外的要因が不可避であったかのように淡々と述べるばかりだった。
そして、どんな対策を講じたかの言及は一言もない。すべて運任せの経営で、経営危機意識のかけらはどこにもないと思われても仕方がない様子だった。
今期の業績予想についても「需給見通しについて政府の需給検証委員会において検証していただいている最中」と、経営の最高責任者が自社の業績見通しすら立てられなかった。これでは経営者ではなく「事業管理者」とでも形容するしかないだろう。
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九州電力 思考放棄の経営
九州電力は、1664億円の赤字で、こちらも過去最悪となった。同社の口コミで目立つのは年功序列の弊害だ。
「完全なる年功序列と言っていいくらい上下関係が厳しい。(略)実力がどんなに備わっていても年功序列のため上には上がりにくい」
と、27歳の男性社員は書き込んでいる。また、28歳の男性社員はこの会社で働く虚しさを次のように訴えている。
「年功序列の体質が変わらないことからモチベーションの維持が難しく、淡々と一日一日が終了してしまっているように感じる」
業務にもムダが多いようだ。派遣社員の30代前半の女性は、その仕事ぶりに唖然としたと書き込んでいる。
「どうも無駄な仕事が多いように感じた。集計業務を行うにも何回も形を変え、手作業で集計していることが多く、非常に手間を感じた。(略)効率が悪いので、夜中までかかって集計作業をしていた」
同社の辞書には、どうやら「効率」と言う言葉はないようだ。
同社の体質を「企業エゴ」と指摘する関係者がいる。だがエゴならまだ救いがある。そこには多少なりともポジティブな思考が残っているからだ。だが、口コミを読むと思考すること自体を放棄しているような体質を感じてしまう。
それは4月に行われた記者会見の内容からも窺える。
九州電力の瓜生道明社長は、2012年度の経営方針説明の中で、1200億円規模の経費削減を「現時点で精一杯の努力」と話している。しかし、九州では高給と言われる同社賃金水準の見直し、子会社の不採算事業整理などの「聖域」には全く手を付けていない。
ようするに、国から指導された通り一遍の経費削減をしただけなのだ。懸念されている夏場の電力不足に対しても、消費者への節電のお願いと「原発を再稼働できれば」の対策しか考えていないのだろう。
これが経営といえるのだろうか。同社の説明に納得できる消費者はどこにもいないだろう。
◇
本来は赤字がありえない電力事業の仕組み
大手電力会社の、こうした内向き体質はどうして生まれたのだろうか。その要因はやはり電力事業の地域独占が起因しているとしか考えられない。
現在の地域独占体制が確立したのは1951年のことだ。以降、電力大手は独占事業の楯に守られて成長しながら、地域最大の設備投資発注者として「地域経済に絶大な影響力を行使してきた」(経産省関係者)と言われている。
さらに、事業コストに一定の利益率を自動的に上乗せできる「総括原価方式」による電気料金設定を許された電力大手の経営は、そもそも赤字にならない仕組みになっている。
この「独占事業」と「総括原価方式」によって、電力大手には「市場競争」や「経営努力」など、個人事業主でも当たり前に持っている経営意識は芽生えようがなかったともいえる。
そして、これまでは国の指導通り経営してさえいれば何の問題もなかったわけだ。そこから重箱の隅をつつくような、役所も驚くマニュアル主義も生まれたのは想像に難くない。
そんなところへ、「全原発稼働停止」と言う電力大手にとっては前代未聞の環境変化が起きたのだ。
ごく当たり前の経営感覚すらない電力大手が、この事態になす術もなく、政府の指示待ちになるのは、ある意味で仕方がない。「踏んだり蹴ったり」というのが電力会社トップの本音かもしれない。
こうした杜撰(ずさん)な経営に、さすがにこれではまずいと思ったのか、国は2014年以降に地域独占を解体する方針を打ち出した。しかし、これも方針がブレまくる民主党政権下ではどうなるか分からない。経営感覚がない大手電力会社が今後、どのような道をたどることになるのか、その動向から目が離せないだろう。
*「キャリコネ」は、社員が投稿した企業に関する口コミ、年収情報、面接体験などを共有するサイトです。2012年4月末現在、45万社、17万件の口コミが登録されています。