創業家一族のドロドロ内紛 見かけだけグローバルなサムスンで働く日本人たち 2012年5月28日 企業徹底研究 ツイート サムスンは、韓国最大の企業グループだ。同国のGDPの2割以上をたたき出し、国家を凌ぐ勢いをもつ超巨大財閥である。 だが、世界に知られるグローバル企業としての華やかな顔とは裏腹に、内部では経営者一族のドロドロした骨肉の争いが続いている。 グループを牽引する2代目の李健煕(イ・ゴンヒ)会長(70)に対して、長兄と次姉が、「創業者である父からの遺産相続が足りなかった」として、それぞれ約500億円と約140億円を請求する裁判を起こしているのだ。 グループを告発した書籍も最近、相次いで出版されている。金勇澈(キム・ヨンチョル)著『サムスンの真実』は、かつてサムスンに法務スタッフとして従事した元特捜検事による内部告発だ。 裏切り者と呼ばれ、監視や尾行、盗聴などさまざまな圧力をうけたとされるが、それをはねのけて出版にこぎつけたらしい。韓国社会を騒然とさせるベストセラーになった。 ほかにも、べ・ヨンホン著『サムスン帝国の光と闇』がある。また、週刊文春の5月24日号は「世界一企業サムスンの深すぎる『闇』」と題する記事を掲載した。 醜聞うずまく韓国企業のサムスン。では、その日本法人は、どんな職場なのか。キャリコネに寄せられた口コミから、社員たちの声を拾ってみた。 ◇ 単なる“支社”の日本法人、日本人が幹部なることはほとんどない 日本サムスンの財務部門で働く30代前半の女性社員は、こう告発している。 「産休・育休中の社員がターゲットにされて、大量リストラにあっている。社内から育休、産休、時短の人たちがほとんどいなくなった。この会社で子供を産んで育てることは、ほぼ望めない」 この女性社員によれば、社内の雰囲気は最悪で、韓国語ができないと仕事は精神的にかなりきつくなるという。そして、キャリコネの読者に対して「絶対に転職先にしてはいけない」と警告している。 これは、決して特異な意見ではない。言葉の問題については、法人営業を担当する20代後半の男性社員もこう書き込んでいる。 「韓国語ができないと、出世は不可。母体が韓国企業であるため、韓国語や韓国文化へのアレルギーが無い人でなければ勤まらない。日本人または在日韓国人で、役員レベルまで出生する人は皆無」 さらに別の男性社員も、ほぼ同じ意見だ。カウンターセールス担当の20代後半の男性はこう言う。 「韓国語ができる人にとってはよい環境とは言えますが、グローバルな仕事を先導していく環境ではない」 この男性社員によれば、企業としてはグローバルなイメージをもっているサムスンだが、実体は違うそうだ。 「日本サムスンは基本的に日本支社扱いなので、意思決定は韓国の本社が行う」 単なる出先である日本サムスンには、独自判断がゆだねられることはない。出世についても同じだ。 「ほとんどのチーム長は韓国本社からの駐在員。日本の現地社員が幹部まであがる例はほとんどない」 ◇ 韓国語が母国語レベルでなければ働けない会社 海外営業を担当する30代後半の男性社員も、サムスンに就職や転職を希望する人たちにこう注意を呼びかけている。 「韓国語は必須。入社後の研修はあるが、それだけでは限界がある。(略)レベル的にはかなり上が求められる。韓流ドラマを見ている、というレベルでは厳しい」 どうやら、この会社は決して「グローバル企業」などではないようだ。ドメスティックな社風に縛られた韓国の一企業であり、しかも閉鎖的な体質をもつ同族経営のガチガチ組織である。 べ・ヨンホンの著書では、「サムスンが尊敬されない理由」を次のように考察する。 「社会の公器になって久しい大企業が、いまだに創業家の経営権を世襲する財閥である。李一族はまるで王侯貴族のようだ」 サムスンの従業員は国内外に合わせて20万人もいて、生産拠点も中国やメキシコにあるなど、規模の点ではグローバル企業化も知れないが、実態はあくまで韓国財閥に過ぎないのだそうだ。 しかし、サムスン自身は、こうした外部からの批判に対して、決して耳を貸さない。メディアには取材拒否を貫き、内情をうかがい知ることは困難だ。金勇澈の著書についても、サムスンは「内容はすべて虚偽」という声明を発表して黙殺しようとしている。 文春の記事では、金勇澈が取材にこう答えている。 「サムスンに象徴される財閥の前近代的な問題は、韓国が世界に向け発展していくときに、克服しなければならない課題である」 *「キャリコネ」は、社員が投稿した企業に関する口コミ、年収情報、面接体験などを共有するサイトです。2012年4月末現在、45万社、17万件の口コミが登録されています。
創業家一族のドロドロ内紛 見かけだけグローバルなサムスンで働く日本人たち
サムスンは、韓国最大の企業グループだ。同国のGDPの2割以上をたたき出し、国家を凌ぐ勢いをもつ超巨大財閥である。
だが、世界に知られるグローバル企業としての華やかな顔とは裏腹に、内部では経営者一族のドロドロした骨肉の争いが続いている。
グループを牽引する2代目の李健煕(イ・ゴンヒ)会長(70)に対して、長兄と次姉が、「創業者である父からの遺産相続が足りなかった」として、それぞれ約500億円と約140億円を請求する裁判を起こしているのだ。
グループを告発した書籍も最近、相次いで出版されている。金勇澈(キム・ヨンチョル)著『サムスンの真実』は、かつてサムスンに法務スタッフとして従事した元特捜検事による内部告発だ。
裏切り者と呼ばれ、監視や尾行、盗聴などさまざまな圧力をうけたとされるが、それをはねのけて出版にこぎつけたらしい。韓国社会を騒然とさせるベストセラーになった。
ほかにも、べ・ヨンホン著『サムスン帝国の光と闇』がある。また、週刊文春の5月24日号は「世界一企業サムスンの深すぎる『闇』」と題する記事を掲載した。
醜聞うずまく韓国企業のサムスン。では、その日本法人は、どんな職場なのか。キャリコネに寄せられた口コミから、社員たちの声を拾ってみた。
◇
単なる“支社”の日本法人、日本人が幹部なることはほとんどない
日本サムスンの財務部門で働く30代前半の女性社員は、こう告発している。
「産休・育休中の社員がターゲットにされて、大量リストラにあっている。社内から育休、産休、時短の人たちがほとんどいなくなった。この会社で子供を産んで育てることは、ほぼ望めない」
この女性社員によれば、社内の雰囲気は最悪で、韓国語ができないと仕事は精神的にかなりきつくなるという。そして、キャリコネの読者に対して「絶対に転職先にしてはいけない」と警告している。
これは、決して特異な意見ではない。言葉の問題については、法人営業を担当する20代後半の男性社員もこう書き込んでいる。
「韓国語ができないと、出世は不可。母体が韓国企業であるため、韓国語や韓国文化へのアレルギーが無い人でなければ勤まらない。日本人または在日韓国人で、役員レベルまで出生する人は皆無」
さらに別の男性社員も、ほぼ同じ意見だ。カウンターセールス担当の20代後半の男性はこう言う。
「韓国語ができる人にとってはよい環境とは言えますが、グローバルな仕事を先導していく環境ではない」
この男性社員によれば、企業としてはグローバルなイメージをもっているサムスンだが、実体は違うそうだ。
「日本サムスンは基本的に日本支社扱いなので、意思決定は韓国の本社が行う」
単なる出先である日本サムスンには、独自判断がゆだねられることはない。出世についても同じだ。
「ほとんどのチーム長は韓国本社からの駐在員。日本の現地社員が幹部まであがる例はほとんどない」
◇
韓国語が母国語レベルでなければ働けない会社
海外営業を担当する30代後半の男性社員も、サムスンに就職や転職を希望する人たちにこう注意を呼びかけている。
「韓国語は必須。入社後の研修はあるが、それだけでは限界がある。(略)レベル的にはかなり上が求められる。韓流ドラマを見ている、というレベルでは厳しい」
どうやら、この会社は決して「グローバル企業」などではないようだ。ドメスティックな社風に縛られた韓国の一企業であり、しかも閉鎖的な体質をもつ同族経営のガチガチ組織である。
べ・ヨンホンの著書では、「サムスンが尊敬されない理由」を次のように考察する。
「社会の公器になって久しい大企業が、いまだに創業家の経営権を世襲する財閥である。李一族はまるで王侯貴族のようだ」
サムスンの従業員は国内外に合わせて20万人もいて、生産拠点も中国やメキシコにあるなど、規模の点ではグローバル企業化も知れないが、実態はあくまで韓国財閥に過ぎないのだそうだ。
しかし、サムスン自身は、こうした外部からの批判に対して、決して耳を貸さない。メディアには取材拒否を貫き、内情をうかがい知ることは困難だ。金勇澈の著書についても、サムスンは「内容はすべて虚偽」という声明を発表して黙殺しようとしている。
文春の記事では、金勇澈が取材にこう答えている。
「サムスンに象徴される財閥の前近代的な問題は、韓国が世界に向け発展していくときに、克服しなければならない課題である」
*「キャリコネ」は、社員が投稿した企業に関する口コミ、年収情報、面接体験などを共有するサイトです。2012年4月末現在、45万社、17万件の口コミが登録されています。