理想と現実に大きな違い JTB、エイチ・アイ・エス…旅行業界の実態 2012年5月31日 企業徹底研究 ツイート 大学生の就職人気ランキングで常にトップグループ入りをしているJTBグループをはじめ、旅行業界は人気が高い。 業界全体に目を向けると、トップのJTBグループに、近畿日本ツーリスト、日本旅行が続き、長らくトップ3の位置を保持してきた。 しかし、海外旅行ではエイチ・アイ・エスが2006年度に2位にランキング入りを果たし、以降、その座をキープする一方、国内旅行でも楽天トラベルが2010年度に日本旅行、近畿日本ツーリストを抜いて2位に浮上した。 この結果、業界全体の勢力図も変わりつつある。ネット予約を売り物にする楽天トラベルなどの新興勢力を、旧・旅行大手各社が迎え撃つ格好だ。そして、営業合戦が続き、利益なき繁忙に陥っている。 そこで、旅行業界の実情をキャリコネに寄せられた各社の社員の口コミから追ってみた。 ◇ 「軍隊」のような社風、高い退職率…厳しい労働環境 旅行業界は参入が容易な業種で「電話と机があればできる」といわれている。実際、1万社を超える旅行会社が存在する。こうした業界環境なので、基本的に過当競争となり、各社は価格競争に走ることになる。このため、人件費を削り、結果、労働環境が劣悪となる傾向が強い。 例えば、エイチ・アイ・エスの20代後半の女性社員は、「社風がほとんど軍隊のよう」だと告白している。この女性社員は続けてこう書き込んでいる。 「予約をとらなければ生きていけないような給料しかもらえない。社内で罵声が常に飛びかっている。(略)残業してナンボ。タフなもののみ生き残れる。同期がどんどんやめていくので社歴3年でお局扱いを受ける」 こうした環境だからか、27歳の男性社員は退職する人の多さについて次のように話している。 「異常に高い失業率は改善すべきだと思います。私の同僚も半分以上が3年以内に辞めました。(略)ただ単純に旅行が好きだからという安易な理由で入社してしまうと理想と現実の違いに失望してしまう」 阪急交通社の35歳の女性契約社員も労働環境の悪さから「休みの日は廃人のよう」と述べている。 社員に対する配慮のなさは、躍進する楽天トラベルでも例外ではないようだ。 「時間外手当を支給せずに済むように『企画型裁量労働制』に強制的に同意させられます。コアタイム9時から18時、どこにも裁量の余地のない裁量労働です。結果、深夜、早朝、休日、祝日に関係なくこき使われます。その結果何が起こってもなんとも思わない会社です」 と、30代前半の男性社員は人事政策への不信感を書き込んでいる。 ◇ 「将来が見えない業界」と嘆く社員 一方で、旅行代理店の将来性に疑問を呈している人も多い。近畿日本ツーリストの20代後半の男性社員はこう述べている。 「人件費率が高く、また外的要因をあまりに受けやすい」 同じく近畿日本ツーリストの40代の男性社員は会社業界環境の変化に対応し切れていないのが問題だと話している。 「そもそもこの10年間で旅行業を取り巻く環境が大きく変わりました。上層部では対応策を検討して改革をしようとしていますが、特に年配の社員には危機感が無く、改革の実行が難しい」。 日本旅行の30代前半男性社員も、「そもそも業界の将来が見えない」と嘆いている。この男性社員は続けて、こう話している。 「労働集約型産業であるが、手数料商売の薄利多売型であるため、今のままではとても産業として成り立たない。会社はその辺も見据えて大胆な改革も行うべきなのに、スローガンだけでなんら具体的な動きはしない。(略)ジリ貧になっていくのを現場の責任にする」 ◇ 最大手のJTBは社内で顧客の奪い合い 長年にわたり業界トップを走る王者のJTBでも、社内に問題があるようだ。32歳の男性社員によると、営業エリア・地区が整理されていないため、混乱が生じているという。 「同じ会社内で顧客の奪い合いが日常茶飯事。(略)エリア・業種などセールスエリア・ターゲットを分け、会社全体で営業戦略を持ってやっていかないと立ち行かない状況まで来ている」 販売する商品の華やかさや楽しさが目立つ旅行会社。しかし、口コミをみると実際はそれとは縁遠く、現場の労働環境や将来性は厳しい業界といえそうだ。 *「キャリコネ」は、社員が投稿した企業に関する口コミ、年収情報、面接体験などを共有するサイトです。2012年4月末現在、45万社、17万件の口コミが登録されています。
理想と現実に大きな違い JTB、エイチ・アイ・エス…旅行業界の実態
大学生の就職人気ランキングで常にトップグループ入りをしているJTBグループをはじめ、旅行業界は人気が高い。
業界全体に目を向けると、トップのJTBグループに、近畿日本ツーリスト、日本旅行が続き、長らくトップ3の位置を保持してきた。
しかし、海外旅行ではエイチ・アイ・エスが2006年度に2位にランキング入りを果たし、以降、その座をキープする一方、国内旅行でも楽天トラベルが2010年度に日本旅行、近畿日本ツーリストを抜いて2位に浮上した。
この結果、業界全体の勢力図も変わりつつある。ネット予約を売り物にする楽天トラベルなどの新興勢力を、旧・旅行大手各社が迎え撃つ格好だ。そして、営業合戦が続き、利益なき繁忙に陥っている。
そこで、旅行業界の実情をキャリコネに寄せられた各社の社員の口コミから追ってみた。
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「軍隊」のような社風、高い退職率…厳しい労働環境
旅行業界は参入が容易な業種で「電話と机があればできる」といわれている。実際、1万社を超える旅行会社が存在する。こうした業界環境なので、基本的に過当競争となり、各社は価格競争に走ることになる。このため、人件費を削り、結果、労働環境が劣悪となる傾向が強い。
例えば、エイチ・アイ・エスの20代後半の女性社員は、「社風がほとんど軍隊のよう」だと告白している。この女性社員は続けてこう書き込んでいる。
「予約をとらなければ生きていけないような給料しかもらえない。社内で罵声が常に飛びかっている。(略)残業してナンボ。タフなもののみ生き残れる。同期がどんどんやめていくので社歴3年でお局扱いを受ける」
こうした環境だからか、27歳の男性社員は退職する人の多さについて次のように話している。
「異常に高い失業率は改善すべきだと思います。私の同僚も半分以上が3年以内に辞めました。(略)ただ単純に旅行が好きだからという安易な理由で入社してしまうと理想と現実の違いに失望してしまう」
阪急交通社の35歳の女性契約社員も労働環境の悪さから「休みの日は廃人のよう」と述べている。
社員に対する配慮のなさは、躍進する楽天トラベルでも例外ではないようだ。
「時間外手当を支給せずに済むように『企画型裁量労働制』に強制的に同意させられます。コアタイム9時から18時、どこにも裁量の余地のない裁量労働です。結果、深夜、早朝、休日、祝日に関係なくこき使われます。その結果何が起こってもなんとも思わない会社です」
と、30代前半の男性社員は人事政策への不信感を書き込んでいる。
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「将来が見えない業界」と嘆く社員
一方で、旅行代理店の将来性に疑問を呈している人も多い。近畿日本ツーリストの20代後半の男性社員はこう述べている。
「人件費率が高く、また外的要因をあまりに受けやすい」
同じく近畿日本ツーリストの40代の男性社員は会社業界環境の変化に対応し切れていないのが問題だと話している。
「そもそもこの10年間で旅行業を取り巻く環境が大きく変わりました。上層部では対応策を検討して改革をしようとしていますが、特に年配の社員には危機感が無く、改革の実行が難しい」。
日本旅行の30代前半男性社員も、「そもそも業界の将来が見えない」と嘆いている。この男性社員は続けて、こう話している。
「労働集約型産業であるが、手数料商売の薄利多売型であるため、今のままではとても産業として成り立たない。会社はその辺も見据えて大胆な改革も行うべきなのに、スローガンだけでなんら具体的な動きはしない。(略)ジリ貧になっていくのを現場の責任にする」
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最大手のJTBは社内で顧客の奪い合い
長年にわたり業界トップを走る王者のJTBでも、社内に問題があるようだ。32歳の男性社員によると、営業エリア・地区が整理されていないため、混乱が生じているという。
「同じ会社内で顧客の奪い合いが日常茶飯事。(略)エリア・業種などセールスエリア・ターゲットを分け、会社全体で営業戦略を持ってやっていかないと立ち行かない状況まで来ている」
販売する商品の華やかさや楽しさが目立つ旅行会社。しかし、口コミをみると実際はそれとは縁遠く、現場の労働環境や将来性は厳しい業界といえそうだ。
*「キャリコネ」は、社員が投稿した企業に関する口コミ、年収情報、面接体験などを共有するサイトです。2012年4月末現在、45万社、17万件の口コミが登録されています。