中古車業界 買取、査定、オークション、小売の相互乗り入れで縮小市場を奪いあい 2012年8月16日 企業徹底研究 ツイート 中古品の流通市場が最も早くから整備され、査定のノウハウが確立し、流通のシステムが整えられてきたのが、自動車だった。 乗用車と軽乗用車についていえば、2011年の新車登録台数が421万0220台なのに対し、中古車登録台数は518万2656台で、中古車のほうが97万2436台も多い(日本自動車販売協会連合会、全国軽自動車協会連合会調べ)。 2010年に比べて新車は15・1%減少したが、中古車は1・9%の減少にとどまり、中古車販売は健闘している。 その背景には、消費者の節約志向が強まって、新車に比べて低価格な中古車に人気が集まった、ということがある。今回は、中古車業界についてキャリコネに寄せられた主要各社の口コミを見ながら分析しよう。 ◇ 新車が売れない中でも中古車は健闘 中古車販売台数は、貨物車やバスや特殊車両も含めた全車種合計で見ると、2000~2006年は常に800万台以上をキープしていた。しかし、2007年から年々落ち込み、5年で約2割も減少している。 中古車の流通台数が減ると、買い取り、査定、オークションを含めた業者間販売、小売り販売を行っている中古車業界全体の市場規模も縮小する。 矢野経済研究所の推計によると、2010年の中古車小売りの市場規模は2兆1995億円で、2008年と比べると2年で約1割減少した。 市場が縮小する原因として、新車販売の不振、ユーザーの自動車使用期間の長期化で、良質な中古車の供給が細っていることが挙げられる。 中古車センターをのぞくとわかるが、年式の低い中古車は捨て値同然で並んでいるが、3~5年落ちぐらいの年式で状態のいい車はまず見つからない。 そういう車は中古車オークションに出品され海外のバイヤーなども競売に加わって値段がつり上がる。高値で落札してもすぐ買い手がつくので、中古車センターの雨ざらしの展示場などには回ってこない。中古車販売の最前線では、そんな二極化が起きている。 ◇ 市場で存在感を増す買い取り業者、小売り部門を設け顧客開拓 中古車は、新車ディーラーの下取りと買い取り業者が二大供給源だが、最近はガリバーインターナショナル、アップルインターナショナル、カーチス・ホールディングス、アイケイコーポレーション、アークコア、TRUCK-ONEのような買い取り業者の比重が高まっている。 買い取り業者が査定して買い取った車は、ユー・エス・エス、ジェイ・エー・エー、オークネット、システム・ロケーションのようなオークション業者を通じ中古車オークションにかけられることが多かった。 しかし、最近は買い取り業者が小売り部門を設けて中古車を直接、消費者に販売するルートが開拓されている。 小売りはメーカー系中古車販売会社や独立系のケーユーホールディングス、ハナテンなどが展開する昔ながらの中古車センター以外に、店頭の在庫を持たず、消費者が端末で商品情報をチェックして予約し、後で現物を見に行けるようなチェーン店やネット販売が拡大している。 買い取り業者の小売り部門や後発組のほとんどはそれで、海外個人顧客向けネット販売に特化したトラストもその一つである。 それぞれ業態が違い、買い取り+小売り、オークション+ネット販売など複数の業態を兼ねる会社もある。こうした企業を売上高ランキングでまとめたのが以下の表だ。 ガリバーインターナショナルは、2位以下に大差をつけた文字通りの中古車業界のガリバー(寡占企業)で、在庫検索ができる「ドルフィネット」を武器に小売りにも進出している。同社によると、現在は買い取り業態から小売業態への転換期なのだという。 ユー・エス・エスは、中古車オークション会場の運営会社で出品、成約、落札の手数料を主要な収入源にしている。また、「ラビット」のブランドで買い取りにも進出している。 ケーユーホ-ルディングスは、中古車の販売・買い取り店チェーンの「ケーユー」以外に連結子会社に輸入車ディーラー3社を抱えていて、売上比率は輸入車のほうが高い。 買い取り主体のカーチス・ホールディングスは元ライブドアオートで、オーナーがコロコロ変わってきた。ハナテンは買い取りでその名を知られた大阪の独立系中古車販売店がルーツだ。 アップルインターナショナルは「車買い取り専門店アップル」の全国ネットワークを急拡大させた企業で、二輪専門買い取りのアイケイコーポレーションは「バイク王」という店名のほうが一般には知られているだろう。 上位7社は全て上場企業である。中古車の業界は15位あたりまで上場企業、元上場企業がズラリと並んでいる。これは他の業種にはちょっと見られない特徴で、「経営を近代化しよう」という前向きな姿勢で、こうなったのなら、結構なのだが。 ◇ とにかく数字! 営業スキルは自分で身につけろ 中古車業界の大手はローカル企業からのし上がってきた会社が多いので、社風については「トップダウン」「実力主義」「体育会系」でほぼ共通している。 そのためやはり営業で実績を残すことが出世の近道になる。わかりやすいといえばわかりやすい。 「やはり数字でしょう。とにもかくにも営業ですので、実績数字を出さないことには何ともし難い環境下と思います」(ガリバーインターナショナル、20代後半の男性社員) その営業職に求められるスキルは、かなりレベルが高いようだ。 「基本的に1度目の来店で即決を狙うスタイルなので、商談力は身につくと思う。また常にバックオーダーを数台~数十台抱えているので、効率的に事務処理をこなしつつ、販売もしなければならない。売り優先だとどんどんバックオーダーが溜まっていくので、納車と販売のバランスをとらないと目標達成は難しい。自己管理能力も必要だと思う」(ケーユー、20代後半の男性社員) スキルを身につけるのは教育研修になるのだが、急成長した会社はそれが後回しにされてきたため、社員に無理がかかっているところもある。 しかも、教育研修体制は成果が出るまで時間がかかるので、試行錯誤が繰り返される。 「とにかく無茶苦茶。研修は実践とかけ離れすぎているし、何より体育会系の極みでノルマを気合だ根性だと無理難題を言ってくる」(ガリバーインターナショナル、20代後半の男性社員) 「営業に対する技術を磨く場所が極端に少ない。最初の研修でもシステムと流れだけしか学ぶことが出来ないので、結局は自己流で買い取りをしなければならなくなる。個人の問題ともとられかねないが、もう少しシステムとして研修や営業力を磨く勉強会があってもよい」(アイケイコーポレーション、20代前半の男性社員) 「自己投資」をしないと、仕事ができないのであれば、社員も大変だろう。 ◇ 給与の受け止め方は人によって、まったく異なる 一方、報酬の良し悪しについて口コミを見ると、評価は各社バラバラだ。 そして、本部と店舗、職種、入社年次、業績の良い時期と悪い時期で違ったりするので、一概にこうと言えない面もあるようだ。 ただ、それでも次のようなものが営業職の代表的なものだろう。 「中古車の営業部の場合、月額給与は基本給+販売台数に応じたインセンティブで決まります。賞与は別で出ます(略)新車の販売部門もあり、そちらは給与体系が異なります。配属される部門によって、営業給の体系が異なります。扱う商品が違うので、あうあわないがあり、一概にどこがよいとは言えませんが・・・」(ケーユー、30代前半の男性元社員、年収550万円) また、同じ会社でも、口コミを見ると、報酬で大きく違っている例もあるようだ。 「勤続年数、年齢等は関係無く実力主義で基本給と歩合で解りやすい給料制度である。店舗規模にもよるが店長クラスで1000万程度もらっている人もいる」(ガリバーインターナショナル、30代後半の男性正社員、年収480万円) 「給料はどんなに頑張っても上がりません。相当な成績を出さない限りは満足のいく金額にはならないんです。相当な体力と気力とやる気がないとダメだと思います。一人で普通に生活するくらいなら大丈夫だと思いますが、家族がいる人は厳しいと思います」(ガリバーインターナショナル、20代前半の男性社員、年収360万円) この会社では毎年のように人事評価の方法や給与体系が変わり、社員を戸惑わせているのだという。 中古車販売は営業職が会社を支えている業種なので、それ以外の職種になるとやはり報酬は低くなるようだ。 「水準の低さを見て、『相変わらずだな』と思いました。特に管理部門の低さは顕著で、このことが影響し離職率の高さが問題になってました。報酬は、根本的に改善が必要だと思います」(アイケイコーポレーション、30代前半の男性元社員、年収230万円) ◇ 車を売るのが難しい時代に、どうやって利益を出していくかが課題 自動車販売の世界はかつて、ライフサイクルができていた。 そのサイクルはこうだ。モデルチェンジや2回目の車検のたびに新車を買い換えてくれる「アッパークラス」がいる。 彼らから下取りされた良質な中古車が新車ディーラーからメーカー系中古車販売店に流れて「ミドルクラス」が買う。 そして、さんざん乗り回された後に独立系の中古車販売店がそれを買い取り、安い価格で店頭に並べ「ローワークラス」の手に渡り、廃車まで乗りつぶす。 例えば、「日産スカイライン」などは、このサイクルで、山の手のお金持ちのケンさんとメリーさん→社宅に住むドライブが大好きなサラリーマン、ヒロシさん→改造車マニアで、ツッパリ竜次アニキへと、オーナーチェンジしていた。しかし、そんな「昭和のモデル」は、今や完全に崩れてしまった。 耐久性が向上してアッパークラスでも同じ車を10年も乗るようになり、新車は、スタイルや排気量よりも燃費など環境性能で選ばれるようになった。 また、ミドルクラスの生活は毎週末にドライブできるような余裕がなくなり、車を持たないし興味もないという若者が増え、自動車ディーラーはエコカー補助金が途絶え、新車が全然売れなくなったと政府に文句を言うような状況にある。 そして、ローワークラスがお得意様だった独立系中古車販売店は安さを武器に成長して上場企業に出世し、全国ネットワークになった。 そんな時代に、車を売るのは難しい。「昭和のモデル」が崩壊する過程でできたスキをついて、買い取りを軸にのし上がってきた中古車業界の雄たちも、ここ数年の自動車販売の不振には、新車ほどではないにしても、やはり苦しんでいる。 矢野経済研究所は、今後も中古車の供給不足と需要低迷により中古車小売市場の拡大は見込みにくい状況にあると、中古車流通市場の調査レポートの中で述べている。 最近の中古車の特徴は「低年式・過走行」だそうで、消費者が買い取り業者から直接買えるようになったため、そこで売れ残ってオークションに出品されるような車では単価がどんどん切り下がって利益が思うように乗せられない傾向があるという。 そこでカギを握るのは「どれだけ良い在庫を持っているか」「在庫がどれだけ速く回転させられるか」ということになる。 オークションや小売り専業の業者は「カスしか回ってこない」というリスクを避けたいから、買い取りへの進出はますます盛んになり、良質中古車の高価買い取り競争は今後、激化していくことだろう。 そうやって、小売りでもオークションでも買い取りでも利益率が低下すると、中古車はあまり儲からない商売になっていく。 そんな厳しい状況を乗り越える最大の切り札は、企業体力なのか。アイデアなのか。新規事業進出なのか。経営者の強力なリーダーシップなのか。社内のマンパワーなのだろうか。 *「キャリコネ」は、社員が投稿した企業に関する口コミ、年収情報、面接体験などを共有するサイトです。2012年7月末現在、45万社、19万件の口コミが登録されています。
中古車業界 買取、査定、オークション、小売の相互乗り入れで縮小市場を奪いあい
中古品の流通市場が最も早くから整備され、査定のノウハウが確立し、流通のシステムが整えられてきたのが、自動車だった。
乗用車と軽乗用車についていえば、2011年の新車登録台数が421万0220台なのに対し、中古車登録台数は518万2656台で、中古車のほうが97万2436台も多い(日本自動車販売協会連合会、全国軽自動車協会連合会調べ)。
2010年に比べて新車は15・1%減少したが、中古車は1・9%の減少にとどまり、中古車販売は健闘している。
その背景には、消費者の節約志向が強まって、新車に比べて低価格な中古車に人気が集まった、ということがある。今回は、中古車業界についてキャリコネに寄せられた主要各社の口コミを見ながら分析しよう。
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新車が売れない中でも中古車は健闘
中古車販売台数は、貨物車やバスや特殊車両も含めた全車種合計で見ると、2000~2006年は常に800万台以上をキープしていた。しかし、2007年から年々落ち込み、5年で約2割も減少している。
中古車の流通台数が減ると、買い取り、査定、オークションを含めた業者間販売、小売り販売を行っている中古車業界全体の市場規模も縮小する。
矢野経済研究所の推計によると、2010年の中古車小売りの市場規模は2兆1995億円で、2008年と比べると2年で約1割減少した。
市場が縮小する原因として、新車販売の不振、ユーザーの自動車使用期間の長期化で、良質な中古車の供給が細っていることが挙げられる。
中古車センターをのぞくとわかるが、年式の低い中古車は捨て値同然で並んでいるが、3~5年落ちぐらいの年式で状態のいい車はまず見つからない。
そういう車は中古車オークションに出品され海外のバイヤーなども競売に加わって値段がつり上がる。高値で落札してもすぐ買い手がつくので、中古車センターの雨ざらしの展示場などには回ってこない。中古車販売の最前線では、そんな二極化が起きている。
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市場で存在感を増す買い取り業者、小売り部門を設け顧客開拓
中古車は、新車ディーラーの下取りと買い取り業者が二大供給源だが、最近はガリバーインターナショナル、アップルインターナショナル、カーチス・ホールディングス、アイケイコーポレーション、アークコア、TRUCK-ONEのような買い取り業者の比重が高まっている。
買い取り業者が査定して買い取った車は、ユー・エス・エス、ジェイ・エー・エー、オークネット、システム・ロケーションのようなオークション業者を通じ中古車オークションにかけられることが多かった。
しかし、最近は買い取り業者が小売り部門を設けて中古車を直接、消費者に販売するルートが開拓されている。
小売りはメーカー系中古車販売会社や独立系のケーユーホールディングス、ハナテンなどが展開する昔ながらの中古車センター以外に、店頭の在庫を持たず、消費者が端末で商品情報をチェックして予約し、後で現物を見に行けるようなチェーン店やネット販売が拡大している。
買い取り業者の小売り部門や後発組のほとんどはそれで、海外個人顧客向けネット販売に特化したトラストもその一つである。
それぞれ業態が違い、買い取り+小売り、オークション+ネット販売など複数の業態を兼ねる会社もある。こうした企業を売上高ランキングでまとめたのが以下の表だ。
ガリバーインターナショナルは、2位以下に大差をつけた文字通りの中古車業界のガリバー(寡占企業)で、在庫検索ができる「ドルフィネット」を武器に小売りにも進出している。同社によると、現在は買い取り業態から小売業態への転換期なのだという。
ユー・エス・エスは、中古車オークション会場の運営会社で出品、成約、落札の手数料を主要な収入源にしている。また、「ラビット」のブランドで買い取りにも進出している。
ケーユーホ-ルディングスは、中古車の販売・買い取り店チェーンの「ケーユー」以外に連結子会社に輸入車ディーラー3社を抱えていて、売上比率は輸入車のほうが高い。
買い取り主体のカーチス・ホールディングスは元ライブドアオートで、オーナーがコロコロ変わってきた。ハナテンは買い取りでその名を知られた大阪の独立系中古車販売店がルーツだ。
アップルインターナショナルは「車買い取り専門店アップル」の全国ネットワークを急拡大させた企業で、二輪専門買い取りのアイケイコーポレーションは「バイク王」という店名のほうが一般には知られているだろう。
上位7社は全て上場企業である。中古車の業界は15位あたりまで上場企業、元上場企業がズラリと並んでいる。これは他の業種にはちょっと見られない特徴で、「経営を近代化しよう」という前向きな姿勢で、こうなったのなら、結構なのだが。
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とにかく数字! 営業スキルは自分で身につけろ
中古車業界の大手はローカル企業からのし上がってきた会社が多いので、社風については「トップダウン」「実力主義」「体育会系」でほぼ共通している。
そのためやはり営業で実績を残すことが出世の近道になる。わかりやすいといえばわかりやすい。
「やはり数字でしょう。とにもかくにも営業ですので、実績数字を出さないことには何ともし難い環境下と思います」(ガリバーインターナショナル、20代後半の男性社員)
その営業職に求められるスキルは、かなりレベルが高いようだ。
「基本的に1度目の来店で即決を狙うスタイルなので、商談力は身につくと思う。また常にバックオーダーを数台~数十台抱えているので、効率的に事務処理をこなしつつ、販売もしなければならない。売り優先だとどんどんバックオーダーが溜まっていくので、納車と販売のバランスをとらないと目標達成は難しい。自己管理能力も必要だと思う」(ケーユー、20代後半の男性社員)
スキルを身につけるのは教育研修になるのだが、急成長した会社はそれが後回しにされてきたため、社員に無理がかかっているところもある。
しかも、教育研修体制は成果が出るまで時間がかかるので、試行錯誤が繰り返される。
「とにかく無茶苦茶。研修は実践とかけ離れすぎているし、何より体育会系の極みでノルマを気合だ根性だと無理難題を言ってくる」(ガリバーインターナショナル、20代後半の男性社員)
「営業に対する技術を磨く場所が極端に少ない。最初の研修でもシステムと流れだけしか学ぶことが出来ないので、結局は自己流で買い取りをしなければならなくなる。個人の問題ともとられかねないが、もう少しシステムとして研修や営業力を磨く勉強会があってもよい」(アイケイコーポレーション、20代前半の男性社員)
「自己投資」をしないと、仕事ができないのであれば、社員も大変だろう。
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給与の受け止め方は人によって、まったく異なる
一方、報酬の良し悪しについて口コミを見ると、評価は各社バラバラだ。
そして、本部と店舗、職種、入社年次、業績の良い時期と悪い時期で違ったりするので、一概にこうと言えない面もあるようだ。
ただ、それでも次のようなものが営業職の代表的なものだろう。
「中古車の営業部の場合、月額給与は基本給+販売台数に応じたインセンティブで決まります。賞与は別で出ます(略)新車の販売部門もあり、そちらは給与体系が異なります。配属される部門によって、営業給の体系が異なります。扱う商品が違うので、あうあわないがあり、一概にどこがよいとは言えませんが・・・」(ケーユー、30代前半の男性元社員、年収550万円)
また、同じ会社でも、口コミを見ると、報酬で大きく違っている例もあるようだ。
「勤続年数、年齢等は関係無く実力主義で基本給と歩合で解りやすい給料制度である。店舗規模にもよるが店長クラスで1000万程度もらっている人もいる」(ガリバーインターナショナル、30代後半の男性正社員、年収480万円)
「給料はどんなに頑張っても上がりません。相当な成績を出さない限りは満足のいく金額にはならないんです。相当な体力と気力とやる気がないとダメだと思います。一人で普通に生活するくらいなら大丈夫だと思いますが、家族がいる人は厳しいと思います」(ガリバーインターナショナル、20代前半の男性社員、年収360万円)
この会社では毎年のように人事評価の方法や給与体系が変わり、社員を戸惑わせているのだという。
中古車販売は営業職が会社を支えている業種なので、それ以外の職種になるとやはり報酬は低くなるようだ。
「水準の低さを見て、『相変わらずだな』と思いました。特に管理部門の低さは顕著で、このことが影響し離職率の高さが問題になってました。報酬は、根本的に改善が必要だと思います」(アイケイコーポレーション、30代前半の男性元社員、年収230万円)
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車を売るのが難しい時代に、どうやって利益を出していくかが課題
自動車販売の世界はかつて、ライフサイクルができていた。
そのサイクルはこうだ。モデルチェンジや2回目の車検のたびに新車を買い換えてくれる「アッパークラス」がいる。
彼らから下取りされた良質な中古車が新車ディーラーからメーカー系中古車販売店に流れて「ミドルクラス」が買う。
そして、さんざん乗り回された後に独立系の中古車販売店がそれを買い取り、安い価格で店頭に並べ「ローワークラス」の手に渡り、廃車まで乗りつぶす。
例えば、「日産スカイライン」などは、このサイクルで、山の手のお金持ちのケンさんとメリーさん→社宅に住むドライブが大好きなサラリーマン、ヒロシさん→改造車マニアで、ツッパリ竜次アニキへと、オーナーチェンジしていた。しかし、そんな「昭和のモデル」は、今や完全に崩れてしまった。
耐久性が向上してアッパークラスでも同じ車を10年も乗るようになり、新車は、スタイルや排気量よりも燃費など環境性能で選ばれるようになった。
また、ミドルクラスの生活は毎週末にドライブできるような余裕がなくなり、車を持たないし興味もないという若者が増え、自動車ディーラーはエコカー補助金が途絶え、新車が全然売れなくなったと政府に文句を言うような状況にある。
そして、ローワークラスがお得意様だった独立系中古車販売店は安さを武器に成長して上場企業に出世し、全国ネットワークになった。
そんな時代に、車を売るのは難しい。「昭和のモデル」が崩壊する過程でできたスキをついて、買い取りを軸にのし上がってきた中古車業界の雄たちも、ここ数年の自動車販売の不振には、新車ほどではないにしても、やはり苦しんでいる。
矢野経済研究所は、今後も中古車の供給不足と需要低迷により中古車小売市場の拡大は見込みにくい状況にあると、中古車流通市場の調査レポートの中で述べている。
最近の中古車の特徴は「低年式・過走行」だそうで、消費者が買い取り業者から直接買えるようになったため、そこで売れ残ってオークションに出品されるような車では単価がどんどん切り下がって利益が思うように乗せられない傾向があるという。
そこでカギを握るのは「どれだけ良い在庫を持っているか」「在庫がどれだけ速く回転させられるか」ということになる。
オークションや小売り専業の業者は「カスしか回ってこない」というリスクを避けたいから、買い取りへの進出はますます盛んになり、良質中古車の高価買い取り競争は今後、激化していくことだろう。
そうやって、小売りでもオークションでも買い取りでも利益率が低下すると、中古車はあまり儲からない商売になっていく。
そんな厳しい状況を乗り越える最大の切り札は、企業体力なのか。アイデアなのか。新規事業進出なのか。経営者の強力なリーダーシップなのか。社内のマンパワーなのだろうか。
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