希望退職募集で優秀な人材流出 残るは「思考能力のない人ばかり」 2012年9月14日 企業徹底研究 ツイート 解雇規制の厳しい日本では、人員削減の前に「希望退職」を募ることが避けられない。 「整理解雇の4要件」によって、新規採用の抑制や希望退職の募集なしにリストラすると、会社は不当解雇で訴えられてしまうからだ。 仕方なく企業は、退職金の上乗せや再就職先のあっせんなどをエサに退職者を募るのだが、結果として辞めるのはヨソの会社でも通用する「優秀な人材」だ。 会社として辞めて欲しくない人から先に流出し、辞めて欲しい人の身分は保護されてしまうのだ。 もしも、優秀でない人から指名解雇ができれば、会社は傷が浅いうちに手を打って立ち直る可能性が残る。 首尾よく余裕を取り戻した時、解雇した人を優先して再雇用できたのかもしれない。しかし、日本ではそうした「弱者切り捨て」は許されない。 ◇ 応じなければ「無期限の自宅待機」を強いられる 結果、会社全体が倒れるか、外国企業などに買われるかするまで、何も手を打つことができない。これこそ「本末転倒」だ。 二言目には「経団連が」と批判する人もいるが、手かせ足かせの重さを考えれば、日本の企業経営は極めて難易度が高いといえるだろう。 日本経済の復活にあたって本当に変えなければならないのは、健全な雇用流動化を妨げる「正社員至上主義」など日本人のムラ的メンタリティである。 キャリコネに寄せられた企業の社員の口コミを見ても、希望退職の募集が招くのは、決まって企業体質の弱体化であることがわかる。 それでも、健康な巨体が突然死するよりはマシなのだろうか。特に金融業界では、その傾向がはっきりしている。 「2011年末の希望退職時に統率力もなく営業力もない、思考能力もない人ばかりが残った感じです」(みずほ証券、40代後半の女性契約社員) 「人員削減の希望退職で有能な40代は出ていってしまって、残りの会社にしがみついている40代がいまのんびり働いているように見えます」(三菱UFJニコス、30代前半の男性社員) 厳しい状況は、メーカーも同じだ。 2012年6月末に第一次リストラの希望退職を、銀行主導で行った真空装置のアルバックは、本社の人員を3分の1にまで減らした。そのため、会社が保有していた知識や技量は散逸してしまった。 「残った若年層の再配置で見かけ上は最低限の頭数を揃えたが各部門の基本インフラが麻痺したまま。希望退職に応じなかった社員については、パソコンを取り上げて、無期限の自宅待機を強いている」(40代後半の男性社員 ) ◇ 退職した技術者は中国や韓国へ? 2011年10月にJVCケンウッドに吸収合併されて消滅した日本ビクター。 40代後半の男性社員によると、早期希望退職の大量募集で、最大で1万3000人いた社員が、消滅直前には3000人ほどに減ってしまったそうだ。 「この影響で若手社員の退職者が継続して出ているそうです。この結果、仕事に出来る人間はほとんど退職してしまったので、今後仮に景気が良くなったとしても、業績を上げることは非常に困難であると思います」 東京機械製作所では、2012年末までに約40%の人員削減計画が提示され、第一段階として5月末までに希望退職者を募ったところ、55歳以上の多くの社員が応じたという。 しかし、このまま人が減り続ければ、 「もの作りの会社としては将来が非常に危うい。現に55歳の希望退職により業務進行に支障が出始めている」 と、30代後半の男性社員は危惧する。 退職した技術者たちは、きっと中国や韓国で厚遇されていることだろう。そして、国ごと追い越されようとしているのである。 【その他の企業徹底研究の記事はこちら】 *「キャリコネ」は、社員が投稿した企業に関する口コミ、年収情報、面接体験などを共有するサイトです。2012年8月末現在、45万社、19万件の口コミが登録されています。
希望退職募集で優秀な人材流出 残るは「思考能力のない人ばかり」
解雇規制の厳しい日本では、人員削減の前に「希望退職」を募ることが避けられない。
「整理解雇の4要件」によって、新規採用の抑制や希望退職の募集なしにリストラすると、会社は不当解雇で訴えられてしまうからだ。
仕方なく企業は、退職金の上乗せや再就職先のあっせんなどをエサに退職者を募るのだが、結果として辞めるのはヨソの会社でも通用する「優秀な人材」だ。
会社として辞めて欲しくない人から先に流出し、辞めて欲しい人の身分は保護されてしまうのだ。
もしも、優秀でない人から指名解雇ができれば、会社は傷が浅いうちに手を打って立ち直る可能性が残る。
首尾よく余裕を取り戻した時、解雇した人を優先して再雇用できたのかもしれない。しかし、日本ではそうした「弱者切り捨て」は許されない。
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応じなければ「無期限の自宅待機」を強いられる
結果、会社全体が倒れるか、外国企業などに買われるかするまで、何も手を打つことができない。これこそ「本末転倒」だ。
二言目には「経団連が」と批判する人もいるが、手かせ足かせの重さを考えれば、日本の企業経営は極めて難易度が高いといえるだろう。
日本経済の復活にあたって本当に変えなければならないのは、健全な雇用流動化を妨げる「正社員至上主義」など日本人のムラ的メンタリティである。
キャリコネに寄せられた企業の社員の口コミを見ても、希望退職の募集が招くのは、決まって企業体質の弱体化であることがわかる。
それでも、健康な巨体が突然死するよりはマシなのだろうか。特に金融業界では、その傾向がはっきりしている。
「2011年末の希望退職時に統率力もなく営業力もない、思考能力もない人ばかりが残った感じです」(みずほ証券、40代後半の女性契約社員)
「人員削減の希望退職で有能な40代は出ていってしまって、残りの会社にしがみついている40代がいまのんびり働いているように見えます」(三菱UFJニコス、30代前半の男性社員)
厳しい状況は、メーカーも同じだ。
2012年6月末に第一次リストラの希望退職を、銀行主導で行った真空装置のアルバックは、本社の人員を3分の1にまで減らした。そのため、会社が保有していた知識や技量は散逸してしまった。
「残った若年層の再配置で見かけ上は最低限の頭数を揃えたが各部門の基本インフラが麻痺したまま。希望退職に応じなかった社員については、パソコンを取り上げて、無期限の自宅待機を強いている」(40代後半の男性社員 )
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退職した技術者は中国や韓国へ?
2011年10月にJVCケンウッドに吸収合併されて消滅した日本ビクター。
40代後半の男性社員によると、早期希望退職の大量募集で、最大で1万3000人いた社員が、消滅直前には3000人ほどに減ってしまったそうだ。
「この影響で若手社員の退職者が継続して出ているそうです。この結果、仕事に出来る人間はほとんど退職してしまったので、今後仮に景気が良くなったとしても、業績を上げることは非常に困難であると思います」
東京機械製作所では、2012年末までに約40%の人員削減計画が提示され、第一段階として5月末までに希望退職者を募ったところ、55歳以上の多くの社員が応じたという。
しかし、このまま人が減り続ければ、
「もの作りの会社としては将来が非常に危うい。現に55歳の希望退職により業務進行に支障が出始めている」
と、30代後半の男性社員は危惧する。
退職した技術者たちは、きっと中国や韓国で厚遇されていることだろう。そして、国ごと追い越されようとしているのである。
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*「キャリコネ」は、社員が投稿した企業に関する口コミ、年収情報、面接体験などを共有するサイトです。2012年8月末現在、45万社、19万件の口コミが登録されています。