DNP 日本ユニシスと業務連携 異なる社内内情で実現は成功するか 2013年2月6日 企業徹底研究 ツイート 大日本印刷(DNP)と日本ユニシスは、12年8月に締結した業務提携に基づき、データセンター(DC)や電子出版などの事業で提携する。DNPは連携でIT関連を印刷業の次の中核事業に育てる狙い。2016年度に両社で500億円の連携売り上げを目指す。 連携の中身は「マーケティング・販売連携」「サービス事業基盤の強化」など4分野。ただ、「業務連携売り上げ目標500億円」の内訳を見ると、狙いはDCの共同運営と新規事業創出の2つに絞られていることがわかる。なぜなら、DCの共同運営では300億円程度、新規事業創出では、200億円程度の売り上げを見込んでいるからだ。新規事業の中心は電子出版だ。 DNPの高波光一副社長は「異業種連携だからこそ、当社の視点にない新しいビジネスモデルと市場を開発して行ける」と連携の意義を説明。一方、ユニシスの黒川茂社長は「DNPの3万社の顧客にSI(システムインテグレーション)と新規事業の両面からアプローチし、当社経営基盤の強化を図りたい」と述べている。 ただ連携説明では、両社の間に微妙な温度差も感じられる。両社の連携はうまくゆくのだろうか。キャリコネに寄せられた2社の社員の声から、企業体質と連携の可能性を探ってみよう。 ◇ 社員が感じているDNP、ユニシスの企業体質とは 企業体質について、DNPで研究開発として働く男性社員(20代後半)は、次のように話している。 「会社として全体最適となる事業部統合や工程改善も、結局は(事業部の)上層部の政治的な思惑が絡んで実現できない」 同じく、研究開発の男性社員(30代前半)もこう言う。 「次世代製品においてイニシアチブを取れるような製品が少ない。事業部間の情報共有も皆無な、まさに大企業病そのもの」 同社関係者は「事業部間の利害対立が激しい。だから、経営の決定事項も事業部側で骨抜きにしたりするケースも多い」と言う。 一方、ユニシスはどうだろうか。生産・物流コンサルタントの男性社員(20代後半)は、組織の弊害を指摘している。 「社内が縦割りで閉鎖的なので、新しい企画を通したり、推進するのに非常に苦労がかかる。リスクを恐れ新しいことにチャレンジしたがらない」 マーケティングの男性社員(30代後半)は事業に対する姿勢に疑問を投げかけている。 「事業戦略や売り上げ計画が甘く、事業の実現性に問題がある。すべて中途半端になっている」 DNPは三井物産が親会社だったが、ユニシスが12年8月にDNPの株式の約19%を取得。筆頭株主になった。しかし、三井物産の関連会社時代のぬるま湯体質はまだ残っているようだ。同社関係者がこう解説する。 「2011年7月に黒川繁社長が初のプロパーとしてトップに就任するまで、トップが三井物産からの天下りがほとんど。そのため、独立系ベンダーのようにあくせくしなくても、三井グループの仕事だけで十分食べてゆけるとの甘えが経営陣から抜けず、それが事なかれ主義に繋がっていた。また、新ビジネスにはアレルギー的な抵抗を示す社風がある」。 ◇ 「その場凌ぎで決めた業務提携」との指摘も そもそもDNPがユニシスの筆頭株主になったのはIT関連事業強化が目的だったといわれている。 一例がDM印刷受託事業。凸版、共同印刷などとの競争に勝つためには、受託先から顧客名簿を預かり、反応率の高いDMを提案するなどの差別化が重要だ。それには商用DC運営から顧客分析ツールの導入・活用まで、広範なITスキルが必要になる。また電子書籍事業へ本格的に進出には、電子商取引分野でのITのノウハウが求められる。 しかし、DNPの社内にはそうしたスキルを持つ人材はいない。IT分野の強化が「3年越しの経営課題」(前出の関係者)だったが、手を組む相手がなかなか見つからなかった。そして、業績が悪化していたユニシスを手放したかった三井物産が売り出した株に飛びついた。 一方、ユニシスは主力のSI事業の先細りから、「ITを活用したサービス事業」の展開が急務になっていた。株が売却されたことで、三井グループの後ろ盾もなくなり、「パートナーとの共創ビジネス開発」(黒川社長)が緊急課題で、株の取得もあり、急いで選んだのがDNPだった。 ただ「お互いに切羽詰まった社内事情があって、業務提携し、それを今回の業務連携に発展させたわけだが、やはりその場凌ぎの感が拭えない」と、IT業界関係者は指摘する。そして、その理由を、次にように説明している。 「本来なら両社とも長期的なグランドデザインに基づき、慎重に選ぶべきパートナーを、出たとこ勝負のような感覚で、しかも相身互いのように選んでいる。異業種連携だから1+1の補完関係で2以上の連携効果が生まれると、軽く考えている」。 社員の声を見る限りでも、両社の企業文化や体質に共通点や親和性はあまりありそうには思えない。前出の関係者の懸念は杞憂(きゆう)では済まないかもしれない。 【その他の企業徹底研究の記事はこちら】
DNP 日本ユニシスと業務連携 異なる社内内情で実現は成功するか
大日本印刷(DNP)と日本ユニシスは、12年8月に締結した業務提携に基づき、データセンター(DC)や電子出版などの事業で提携する。DNPは連携でIT関連を印刷業の次の中核事業に育てる狙い。2016年度に両社で500億円の連携売り上げを目指す。
連携の中身は「マーケティング・販売連携」「サービス事業基盤の強化」など4分野。ただ、「業務連携売り上げ目標500億円」の内訳を見ると、狙いはDCの共同運営と新規事業創出の2つに絞られていることがわかる。なぜなら、DCの共同運営では300億円程度、新規事業創出では、200億円程度の売り上げを見込んでいるからだ。新規事業の中心は電子出版だ。
DNPの高波光一副社長は「異業種連携だからこそ、当社の視点にない新しいビジネスモデルと市場を開発して行ける」と連携の意義を説明。一方、ユニシスの黒川茂社長は「DNPの3万社の顧客にSI(システムインテグレーション)と新規事業の両面からアプローチし、当社経営基盤の強化を図りたい」と述べている。
ただ連携説明では、両社の間に微妙な温度差も感じられる。両社の連携はうまくゆくのだろうか。キャリコネに寄せられた2社の社員の声から、企業体質と連携の可能性を探ってみよう。
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社員が感じているDNP、ユニシスの企業体質とは
企業体質について、DNPで研究開発として働く男性社員(20代後半)は、次のように話している。
「会社として全体最適となる事業部統合や工程改善も、結局は(事業部の)上層部の政治的な思惑が絡んで実現できない」
同じく、研究開発の男性社員(30代前半)もこう言う。
「次世代製品においてイニシアチブを取れるような製品が少ない。事業部間の情報共有も皆無な、まさに大企業病そのもの」
同社関係者は「事業部間の利害対立が激しい。だから、経営の決定事項も事業部側で骨抜きにしたりするケースも多い」と言う。
一方、ユニシスはどうだろうか。生産・物流コンサルタントの男性社員(20代後半)は、組織の弊害を指摘している。
「社内が縦割りで閉鎖的なので、新しい企画を通したり、推進するのに非常に苦労がかかる。リスクを恐れ新しいことにチャレンジしたがらない」
マーケティングの男性社員(30代後半)は事業に対する姿勢に疑問を投げかけている。
「事業戦略や売り上げ計画が甘く、事業の実現性に問題がある。すべて中途半端になっている」
DNPは三井物産が親会社だったが、ユニシスが12年8月にDNPの株式の約19%を取得。筆頭株主になった。しかし、三井物産の関連会社時代のぬるま湯体質はまだ残っているようだ。同社関係者がこう解説する。
「2011年7月に黒川繁社長が初のプロパーとしてトップに就任するまで、トップが三井物産からの天下りがほとんど。そのため、独立系ベンダーのようにあくせくしなくても、三井グループの仕事だけで十分食べてゆけるとの甘えが経営陣から抜けず、それが事なかれ主義に繋がっていた。また、新ビジネスにはアレルギー的な抵抗を示す社風がある」。
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「その場凌ぎで決めた業務提携」との指摘も
そもそもDNPがユニシスの筆頭株主になったのはIT関連事業強化が目的だったといわれている。
一例がDM印刷受託事業。凸版、共同印刷などとの競争に勝つためには、受託先から顧客名簿を預かり、反応率の高いDMを提案するなどの差別化が重要だ。それには商用DC運営から顧客分析ツールの導入・活用まで、広範なITスキルが必要になる。また電子書籍事業へ本格的に進出には、電子商取引分野でのITのノウハウが求められる。
しかし、DNPの社内にはそうしたスキルを持つ人材はいない。IT分野の強化が「3年越しの経営課題」(前出の関係者)だったが、手を組む相手がなかなか見つからなかった。そして、業績が悪化していたユニシスを手放したかった三井物産が売り出した株に飛びついた。
一方、ユニシスは主力のSI事業の先細りから、「ITを活用したサービス事業」の展開が急務になっていた。株が売却されたことで、三井グループの後ろ盾もなくなり、「パートナーとの共創ビジネス開発」(黒川社長)が緊急課題で、株の取得もあり、急いで選んだのがDNPだった。
ただ「お互いに切羽詰まった社内事情があって、業務提携し、それを今回の業務連携に発展させたわけだが、やはりその場凌ぎの感が拭えない」と、IT業界関係者は指摘する。そして、その理由を、次にように説明している。
「本来なら両社とも長期的なグランドデザインに基づき、慎重に選ぶべきパートナーを、出たとこ勝負のような感覚で、しかも相身互いのように選んでいる。異業種連携だから1+1の補完関係で2以上の連携効果が生まれると、軽く考えている」。
社員の声を見る限りでも、両社の企業文化や体質に共通点や親和性はあまりありそうには思えない。前出の関係者の懸念は杞憂(きゆう)では済まないかもしれない。
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