「業績崩壊」のパナソニック、ソニー 社員の声から見えた課題とは? 2012年3月14日 企業徹底研究 ツイート パナソニック、ソニーが2月に発表した2012年3月期の決算は、パナソニックが7800億円、ソニーは2200億円の赤字の見通しとなり、まさに「業績崩壊」というべき内容だった。 ところが、決算発表の翌日には両社の株価が上昇。その理由の1つに「これだけの赤字を出しても倒れないだろう」という皮肉な見方があったという。 しかし、楽観的な市場とは対照的に両社の社員の憂いは深い。実際、キャリコネに寄せられた口コミを見ると、ソニーの40代前半の男性社員は次のように不安を述べている。 「今後の進むべき道が見つかっていません。(略)このままでは将来的には衰退してしまうことは目に見えています。しかし、これといった対策もせず、経営方針の改善がまったく見られないのは、死活問題であると思います」 社長交代で復活を図るが「エゴ強い」「権限ない」の組織で可能か? こうした中、パナソニックは津賀一宏専務(55)、ソニーは平井一夫副社長(51)を社長に昇格する人事を発表。50代社長の新体制で業績回復に向けて取り組むことになった。 立て直し策に打ち出したのは、パナソニックが環境・エネルギー分野への注力、ソニーはデジタルカメラやセンサーといったデジタルイメージングとゲーム事業の強化など。ただ、その実行には両社とも硬直した社内の改革が必要なようだ。パナソニックの40代前半の男性社員は次のように指摘する。 「社内間取引においては、製品ビジネスユニットのエゴが非常に強く出やすく、パナソニック全体の総力結集の阻害要因になっていても、製品ビジネスユニットの収益が優先される傾向にある」 一方、ソニーの20代後半の男性社員は社内の体制に不満を述べている。 「部長の下に担当部長がおり、その下に課長。若手より、部長~課長のラインのほうが多くいるような組織構造。基本的に課長になるのも40歳前後、大した権限もなし」 技術力で上回るもアップル、サムスンに敗れる 業績回復に向けて2社を取り巻く環境は厳しい。ともに赤字のテレビ事業を抱え、成長を狙い展開する海外市場では海外メーカーとの激しい戦いが待っているからだ。 実際、2社は、携帯オーディオやスマートフォン(スマホ、高機能携帯電話)で、iPodやiPhoneなどで時価総額が世界一になった米アップル、薄型テレビでは、経営スピードの速い韓国サムスン電子に、技術で勝りながらも負け続けている。こうしたライバルを、ソニー、パナソニックの社員は、こう述べている。 「商品戦略とユーザーエクスペリエンスの提供が他社を圧倒している。(略)持って居なければ格好良くないという社会現象にまで発展させたことは、かつてのウォークマンを超える商品の提供であり、学ぶべきところが多い」(ソニーの30代前半の男性社員) 「サムスンの意思決定の早さから来る製品開発、販売のスピード、収益力(日本国内の家電メーカが束になっても、負けない利益)、低価格と、最近では品質向上、ブランド浸透力がすさまじい。非常に勢いを感じます」(パナソニックの30代前半の男性社員) 薄型テレビ市場では韓国メーカーが1、2位を占める。日本メーカーはシェアでサムスンに倍の差をつけられている。 日本の電機メーカーが最強だった頃には対照的な企業文化で競ったパナソニックとソニー。実は、「起業家精神」「革新マインド」「実行スピード」という共通したDNAが両社にはある。こうした背景があるからか、ソニーの30代の男性社員は、こんな大胆な意見も寄せている。 「ソニーとパナソニックはもはや業態も異なるので、競い合うよりは同じ日本企業として良い協力関係を築いていくことが重要。いっそうのこと部分的に統合してくれたほうが日本のためには良いかも知れない」 この考えは、かなり常識から外れているとは思うが、いずれにしてもパナソニックとソニーが立ち直るためには眠っているDNAを呼び覚まし、社内改革を進めることが必要だ。果たして、両社は復活と雪辱を果たすことができるだろうか。 *「キャリコネ」は、社員が投稿した企業に関する口コミ、年収情報、面接体験などを共有するサイトです。2012年2月末現在、45万社、16万6000件の口コミが登録されています。
「業績崩壊」のパナソニック、ソニー 社員の声から見えた課題とは?
パナソニック、ソニーが2月に発表した2012年3月期の決算は、パナソニックが7800億円、ソニーは2200億円の赤字の見通しとなり、まさに「業績崩壊」というべき内容だった。
ところが、決算発表の翌日には両社の株価が上昇。その理由の1つに「これだけの赤字を出しても倒れないだろう」という皮肉な見方があったという。
しかし、楽観的な市場とは対照的に両社の社員の憂いは深い。実際、キャリコネに寄せられた口コミを見ると、ソニーの40代前半の男性社員は次のように不安を述べている。
「今後の進むべき道が見つかっていません。(略)このままでは将来的には衰退してしまうことは目に見えています。しかし、これといった対策もせず、経営方針の改善がまったく見られないのは、死活問題であると思います」
社長交代で復活を図るが「エゴ強い」「権限ない」の組織で可能か?
こうした中、パナソニックは津賀一宏専務(55)、ソニーは平井一夫副社長(51)を社長に昇格する人事を発表。50代社長の新体制で業績回復に向けて取り組むことになった。
立て直し策に打ち出したのは、パナソニックが環境・エネルギー分野への注力、ソニーはデジタルカメラやセンサーといったデジタルイメージングとゲーム事業の強化など。ただ、その実行には両社とも硬直した社内の改革が必要なようだ。パナソニックの40代前半の男性社員は次のように指摘する。
「社内間取引においては、製品ビジネスユニットのエゴが非常に強く出やすく、パナソニック全体の総力結集の阻害要因になっていても、製品ビジネスユニットの収益が優先される傾向にある」
一方、ソニーの20代後半の男性社員は社内の体制に不満を述べている。
「部長の下に担当部長がおり、その下に課長。若手より、部長~課長のラインのほうが多くいるような組織構造。基本的に課長になるのも40歳前後、大した権限もなし」
技術力で上回るもアップル、サムスンに敗れる
業績回復に向けて2社を取り巻く環境は厳しい。ともに赤字のテレビ事業を抱え、成長を狙い展開する海外市場では海外メーカーとの激しい戦いが待っているからだ。
実際、2社は、携帯オーディオやスマートフォン(スマホ、高機能携帯電話)で、iPodやiPhoneなどで時価総額が世界一になった米アップル、薄型テレビでは、経営スピードの速い韓国サムスン電子に、技術で勝りながらも負け続けている。こうしたライバルを、ソニー、パナソニックの社員は、こう述べている。
「商品戦略とユーザーエクスペリエンスの提供が他社を圧倒している。(略)持って居なければ格好良くないという社会現象にまで発展させたことは、かつてのウォークマンを超える商品の提供であり、学ぶべきところが多い」(ソニーの30代前半の男性社員)
「サムスンの意思決定の早さから来る製品開発、販売のスピード、収益力(日本国内の家電メーカが束になっても、負けない利益)、低価格と、最近では品質向上、ブランド浸透力がすさまじい。非常に勢いを感じます」(パナソニックの30代前半の男性社員)
薄型テレビ市場では韓国メーカーが1、2位を占める。日本メーカーはシェアでサムスンに倍の差をつけられている。
日本の電機メーカーが最強だった頃には対照的な企業文化で競ったパナソニックとソニー。実は、「起業家精神」「革新マインド」「実行スピード」という共通したDNAが両社にはある。こうした背景があるからか、ソニーの30代の男性社員は、こんな大胆な意見も寄せている。
「ソニーとパナソニックはもはや業態も異なるので、競い合うよりは同じ日本企業として良い協力関係を築いていくことが重要。いっそうのこと部分的に統合してくれたほうが日本のためには良いかも知れない」
この考えは、かなり常識から外れているとは思うが、いずれにしてもパナソニックとソニーが立ち直るためには眠っているDNAを呼び覚まし、社内改革を進めることが必要だ。果たして、両社は復活と雪辱を果たすことができるだろうか。
*「キャリコネ」は、社員が投稿した企業に関する口コミ、年収情報、面接体験などを共有するサイトです。2012年2月末現在、45万社、16万6000件の口コミが登録されています。