迷える就活生必見 お探しの「離職率の低い業界」はココだ! 2013年5月13日 キャリコネ調査班 ツイート 先日、東洋経済オンラインにて「新卒離職率が低い、ホワイト企業トップ300」が発表された。普段ブラック企業を相手に調査分析している私にとっても興味深いテーマだ。 まず、「離職率」と「ホワイト企業」が本当に結びつくかについては、厳密には必ずしもすべての会社がそう言えるわけではない。 飲食業界や外資系コンサル業界の離職率が高いのは、ある程度の職務経験を積んだら、独立して仕事をした方が割りがいいからだ。しかし独立した人に「ブラックでしたか?」と聞いても、必ずしも「うん」とは答えないだろう。 労働環境が厳しくとも、リクルートに代表される「人材輩出企業」も存在する。強烈なプレッシャーと高いハードルを乗り越え、経験とスキルを活かしてポジティブに転職をしていったり、独立したりする社員が一定割合いる。 とはいえ、離職率の低さは、総合すると「働きやすい環境」にある会社には不満がない⇒社員が辞めない⇒定着率が高い、と敷衍できる部分もある。 「ハードワーク」「低賃金」「社長がワンマン」「セクハラ、パワハラが横行」といった会社では社員は定着しないし、「週休二日」「残業なし」「給与水準が高い」「福利厚生が充実」「平均勤続年数が長い」といった労働条件を望むなら、離職率の低い企業が狙い目だ。 元記事では、「入社後3年で新入社員が辞めていない状態」を「定着率100%」と定義し、男女別の人数データが揃っている800社をランク付けしている。そのうち、3年間誰も辞めていない定着率100%の会社が92社存在した。その会社を分類すると、以下のようになる。 (1) 安定感が人気の「インフラ系」 四国電力、日本郵船、安田倉庫、三井不動産、川崎汽船、宇徳 など (2) 確固とした基盤を持つ「成熟産業系」 昭和シェル石油、住友金属鉱山、マルハニチロHD、不二製油 など (3) 他にはない強みを持つ「独自技術/高シェア系」 東京エレクトロン、曙ブレーキ工業、ヱスビー食品、東亜合成、アサヒ飲料 など また、これらの業種はおおむね自己資本比率でも40%を超えており、「倒産しにくい」領域に分類されるのも特徴といえる。 「人材が流動しない」「組織が硬直化した」会社のおそれも 上位企業・業種の共通点はさまざまあるが、一言でまとめると「じっくり腰を落ち着けて仕事に取り組むことができる環境」といえるだろう。 要するに「成熟産業で」「独自技術によって」「安定したシェアを持ち」「倒産しにくい」という基盤があれば、それほどハードに残業をせずとも、じっくり働ける環境である可能性が高い。しかし、これが備わっていれば理想の職場といえるかどうかは別だ。 逆に、「証券・商品先物」、「小売」、「サービス」業界が低い、という結果になっている。 留意しておきたいのは、「勤続年数が長い」「定着率が高い」ということは、いいかえれば「人材が流動しない」「組織が硬直化した」会社である可能性が高いことだ。 社内で実績を残していれば心配はないだろうが、組織に依存し、与えられる環境に慣れてしまうと、万一会社になにかあった際、社外の労働市場では使い物にならなくなっている可能性がある。常に「普遍的な市場価値」を意識しておきたいものだ。 また、成熟産業ということは、成長性が低く、給料も上がらない可能性があるし、あっという間に社会的な存在意義が失われることもあるだろう。例えば新聞記者が現在のように1千万円以上もらうような世の中は、そう長くない。 就活生は表面上の数字だけで判断するのではなく、業種の特性から「離職者数と離職理由」まであわせて考えて欲しいものだ。離職率が高くとも、その理由が個人の価値観に合致するものであれば、人は納得の上でその会社を選ぶものであるし、結局はミスマッチ解消につながることだろう。 【新田 龍・ブラック企業アナリスト】
迷える就活生必見 お探しの「離職率の低い業界」はココだ!
先日、東洋経済オンラインにて「新卒離職率が低い、ホワイト企業トップ300」が発表された。普段ブラック企業を相手に調査分析している私にとっても興味深いテーマだ。
まず、「離職率」と「ホワイト企業」が本当に結びつくかについては、厳密には必ずしもすべての会社がそう言えるわけではない。
飲食業界や外資系コンサル業界の離職率が高いのは、ある程度の職務経験を積んだら、独立して仕事をした方が割りがいいからだ。しかし独立した人に「ブラックでしたか?」と聞いても、必ずしも「うん」とは答えないだろう。
労働環境が厳しくとも、リクルートに代表される「人材輩出企業」も存在する。強烈なプレッシャーと高いハードルを乗り越え、経験とスキルを活かしてポジティブに転職をしていったり、独立したりする社員が一定割合いる。
とはいえ、離職率の低さは、総合すると「働きやすい環境」にある会社には不満がない⇒社員が辞めない⇒定着率が高い、と敷衍できる部分もある。
「ハードワーク」「低賃金」「社長がワンマン」「セクハラ、パワハラが横行」といった会社では社員は定着しないし、「週休二日」「残業なし」「給与水準が高い」「福利厚生が充実」「平均勤続年数が長い」といった労働条件を望むなら、離職率の低い企業が狙い目だ。
元記事では、「入社後3年で新入社員が辞めていない状態」を「定着率100%」と定義し、男女別の人数データが揃っている800社をランク付けしている。そのうち、3年間誰も辞めていない定着率100%の会社が92社存在した。その会社を分類すると、以下のようになる。
(1) 安定感が人気の「インフラ系」
四国電力、日本郵船、安田倉庫、三井不動産、川崎汽船、宇徳 など
(2) 確固とした基盤を持つ「成熟産業系」
昭和シェル石油、住友金属鉱山、マルハニチロHD、不二製油 など
(3) 他にはない強みを持つ「独自技術/高シェア系」
東京エレクトロン、曙ブレーキ工業、ヱスビー食品、東亜合成、アサヒ飲料 など
また、これらの業種はおおむね自己資本比率でも40%を超えており、「倒産しにくい」領域に分類されるのも特徴といえる。
「人材が流動しない」「組織が硬直化した」会社のおそれも
上位企業・業種の共通点はさまざまあるが、一言でまとめると「じっくり腰を落ち着けて仕事に取り組むことができる環境」といえるだろう。
要するに「成熟産業で」「独自技術によって」「安定したシェアを持ち」「倒産しにくい」という基盤があれば、それほどハードに残業をせずとも、じっくり働ける環境である可能性が高い。しかし、これが備わっていれば理想の職場といえるかどうかは別だ。
逆に、「証券・商品先物」、「小売」、「サービス」業界が低い、という結果になっている。
留意しておきたいのは、「勤続年数が長い」「定着率が高い」ということは、いいかえれば「人材が流動しない」「組織が硬直化した」会社である可能性が高いことだ。
社内で実績を残していれば心配はないだろうが、組織に依存し、与えられる環境に慣れてしまうと、万一会社になにかあった際、社外の労働市場では使い物にならなくなっている可能性がある。常に「普遍的な市場価値」を意識しておきたいものだ。
また、成熟産業ということは、成長性が低く、給料も上がらない可能性があるし、あっという間に社会的な存在意義が失われることもあるだろう。例えば新聞記者が現在のように1千万円以上もらうような世の中は、そう長くない。
就活生は表面上の数字だけで判断するのではなく、業種の特性から「離職者数と離職理由」まであわせて考えて欲しいものだ。離職率が高くとも、その理由が個人の価値観に合致するものであれば、人は納得の上でその会社を選ぶものであるし、結局はミスマッチ解消につながることだろう。
【新田 龍・ブラック企業アナリスト】