• 中国人にとって「契約書」とは何か? 後出しジャンケンは当たり前!

    こんにちは。中国在住の日本人ライター、Hanaです。中国との貿易を行う日本企業に3年勤務した後、中国湾岸部の某都市にわたって中国人の工場労働者などを相手に3年ほど日本語教師をしています。

    中国には、日本語を学びたい人がたくさんいます。中国人と日本人の関係はこれからどうなっていくのか分かりませんが、相互理解が深まることに越したことはありません。私が日々受けているカルチャーギャップの話が、何かの参考になれば幸いです。

    「契約価格」ばかりか原料まで勝手に変えてくる

    会社間、あるいは個人と会社との間でもいいのですが、本格的な取引交渉に入るに当たって、双方の合意のしるしとしての「契約書」が重要だということは、ビジネスパーソンにとっては言うまでもないことです。

    特に外国企業との取引ともなると、契約書の文面が英語、またはその他外国語で作成する必要があり、余分の労力がかかります。自社で準備するにしても、相手企業が作成するにしても、十分なチェックが欠かせません。

    ここで注意したいのは、そもそも「中国人にとって契約書とは何を意味するのか」という点です。中国企業との契約は、特に中小企業間の取引では、欧米企業とのそれとは勝手が違います。

    例えば「契約価格」。価格といえば、契約書の中で最も重要な部分の一つです。通常の契約書で、いったん双方の合意の下に決まった価格は、よほどのことでもない限り、契約期間は同じ価格が守られます。

    しかし、中国企業はというと、その大前提がありません。彼らは契約し、取引が始まった後で色々言ってきて、価格の変更を迫ります。元々そのような話になっていれば問題ないのですが、一般的には契約時に何も聞いていないのが普通です。

    価格だけではありません。中国側の製造企業は、原料や材料を連絡なしに変えたり、包装がロットによって違ったりと、まるで契約書の存在を知らないかのようなやりよう。日本側にとっては寝耳に水ですが、他に頼れる取引先もない場合、妥協させられたり、要求を呑まざるを得なかったりということもしばしばです。

    そもそも「約束の半分は守られない」中国の文化

    そう、日本人だけでなく欧米人も言うことですが、「中国企業との契約書はほとんど意味がない!」のです。当初このような状況に出くわすと面食らいますが、中国文化を少し理解すると幾分あきらめもつきます。企業としてはそれを踏まえた上で、対策を講じる必要があるでしょう。

    実は中国人にとっては、状況に応じて契約内容を変えることが、ごくごく自然なこと。彼らは普段の生活でもまさに臨機応変に手段や方法を変えます。中国人が誰かと会う約束をしているとして、実際に会う確率は5~6割程度といっても過言ではありません。

    会えたとしても「予定の時間通りに予定の場所で」というのは到底期待できません。ドタキャンも決して珍しくなく、「用事ができたから」「やっぱり疲れたから」「遠くに来ちゃったから」と理由は様々ですが、約束を破ることについて罪悪感はあまりありません。

    キャンセルされた方も「そっか、来ないんだ」とさらりとしたもの。一瞬面白くないと感じても、何歩か歩けばすぐ忘れます。融通が利くとも言えますし、いい加減という言い方もありますが…。

    というわけで、契約書にかかわる摩擦は文化の問題でもあり、劇的な解決方法はありません。とはいえ、こちらも「また約束を破られた!」「また騙された!」と打ちのめされるだけではなく、柔軟に対応する術を身につける必要があります。

    中国人が好む「歩み寄りによる解決」

    たとえば、契約書に記載の合意事項を変更したいと相手が要求した場合、まず「なぜそうする必要があるのか」という理由を追及すべきです。こちらが買い手なら、売り手の口先だけの説明で説得されるのではなく、相手に正確なデータを出させます。

    同時に自社でも情報を集め、取引先の要求が市場の一般的な状況に合致しているのかを確認します。故意に嘘をつくかどうかは別にして、中国企業は原価計算をそれほど緻密に行なわない傾向にあるため、自社でのこの作業は重要です。

    相手企業の状況が逼迫していることが分かったなら、その上で、要求をすべて呑むのではなく、「歩み寄り」という形で解決していきます。この「歩み寄り」または「譲歩」という方法は、中国人の特に好む解決方法です。

    この「譲歩」ですが、正確には「譲歩する姿勢を見せる」ということです。相手の言うことを撥ね付けることも、できるにはできます。が、相手企業が本当に苦しんでいる場合、問題を軽減するために、こちらの想像を絶するとんでもない打開策を講じるという恐れがあります。それを避けるためには、ある程度相手の話を聞き入れることも必要になります。

    それでは、中国人は、いったい何のために契約書を作るのでしょうか? 一つ言えるのは「これから一緒に取引していこうね」という一種の儀式、または握手の役割は果たしているということです。

    もちろん、すべての中国企業が契約書に関してルーズな訳ではないでしょう。しかし、多くの中小企業について言えば、上記の状況も事実です。というわけで、みなさま、中国人から契約書にサインをもらったからといって安心してはダメですよ!

    あわせてよみたい:中国が抱える「三大問題」の深刻さ

    【プロフィール】Hana
    九州出身の30代元OL。日本の中小企業で経理や貿易事務などの業務に携わった後、単身中国にわたる。現在は中国某都市で、日系企業の中国人社員を対象とした日本語教師をしている。中国文化と貿易事務に詳しい。

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