人材コモディティ化の中で「買い叩かれない人材」になるには?~瀧本哲史氏・TWDW基調講演 2013年11月21日 仕事のエコノミクス ツイート 「私は『平等』とか大嫌いなんですよね。優秀な人が残ればそれでいい」 20日から始まった「働き方」や「仕事」にまつわる都市型イベント「TOKYO WORK DESIGN WEEK 2013」の基調講演が同日、渋谷であった。 講演者は投資家の瀧本哲史氏(京都大学客員准教授)。13日に発売された著書「君に友だちはいらない」はAmazonベストセラーで1位にもなっている。 ノマドワーカーは「愚か」 瀧本氏はそれ以前の著書でも、人材の「コモディティ化」が進行すると警鐘を鳴らしている。コモディティ化とは、市場に出回る商品が個性を失い、もはや差別化できない状態。商品の質が変わらないのだから、需要は安いものに集まるというわけだ。 この現象は人材にも起こる。つまり、個性がなければ人と人とを差別化するのは「価格」、つまり「賃金」でしかなくなってしまうのだ。結果、労働力が買い叩かれてしまう。つまり冒頭のように平等などあり得ないというのが、瀧本氏の考え方だ。 「ノマドブーム」などはその帰着点のひとつであるかもしれない。様々な場所で仕事をする新しいワークスタイル、といえば聞こえはいい。しかし、肝心の仕事が「誰でもできる同じような仕事」なら、価格競争を激しくさせるものでしかない。 ライター、Webデザイナーから、会計士、弁護士まで。人材のコモディティ化はみるみると進んでいる。だから、瀧本氏はノマドブームが「大嫌い」だと言い、シニカルにこう批判するのだ。 「人間は愚かである自由もある。すばらしいことです。ひとつ、ノマドワーカーを前向きに捉えるとしたら、遠回りを続けて初めて正しいことが分かるということもある、ということですかね」 ノマドブームで儲けているのはその「仕掛け人」になれた人だけで、「フォロワー」としてのノマドワーカーたちは、ただ「買い叩かれ」にいっただけにすぎない。 欠陥だらけのリーダーでも良い 人は能力も環境も平等でない。ましてや人材のコモディティ化は進み、日本は構造的に衰退に向かっている。だから、コモディティ化「されにくい」人材になる必要がある。 いちばんわかりやすいのは「リーダー」だろう。 「変革者は、危機に陥っている分野に登場した新人であって、古いパラダイムで決定される世界観やルールにとらわれず、他のものを考えようということになりやすい」 瀧本氏は講演中にトマス・クーンの言葉を引用した。つまりイノベーションは「新人」をリーダーにしたチームで起こる。新人というのは、新しい理想を掲げられる人である。カリスマ性がなくともよく、欠陥だらけでも「突破力」があれば良い。 新しい理想が惹きつけるものならば、自然と人は集まってくる。mixiがひとりのインドネシア人留学生によって提案された話は有名だ。その提案が魅力的ならば、必要な職能を持つ人や、チームを補完する能力を持つ人、運転に必要な資金も集まってくるというわけだ。 異質者の中で発揮できる「スペシャリティ」はあるか ゲームは変わった。良い学校に入って、良い会社に入れば安泰、というゲームではなくなったということだ。いま「生き残る」には、その人特有のスペシャリティが必要になる。それがリーダーシップだったり、実績に裏打ちされた職能だったりするわけだ。 さらに言えば、組織が「スペシャリティの集合体」になるには、異なるバックグラウンドを持つ「異質者」がたくさん集まらなければならない。安定し、普通を求めて活動する大企業が衰退するのは、組織が同質化し、イノベーションが起こらなくなるからだ。必然的に、そこで働く人の市場価値も下がる。 異質者の中で発揮できるスペシャリティをいかに獲得するか。そしていかに発揮するか。自分の属するチームはスペシャリティを発揮できるチームであるか。目的は共有されているか。観点は多様にあるが、さように現代で働くのは難しい。それがいま、「働き方」をテーマにしたセッションが成立する理由でもあるだろう。キャリコネ編集部でも引き続き注目していきたい。 「TOKYO WORK DESIGN WEEK 2013」は、渋谷ヒカリエを中心に広域渋谷圏で26日まで開催中だ。 あわせてよみたい:ノマド、メディアに惑わされるな!
人材コモディティ化の中で「買い叩かれない人材」になるには?~瀧本哲史氏・TWDW基調講演
20日から始まった「働き方」や「仕事」にまつわる都市型イベント「TOKYO WORK DESIGN WEEK 2013」の基調講演が同日、渋谷であった。
講演者は投資家の瀧本哲史氏(京都大学客員准教授)。13日に発売された著書「君に友だちはいらない」はAmazonベストセラーで1位にもなっている。
ノマドワーカーは「愚か」
瀧本氏はそれ以前の著書でも、人材の「コモディティ化」が進行すると警鐘を鳴らしている。コモディティ化とは、市場に出回る商品が個性を失い、もはや差別化できない状態。商品の質が変わらないのだから、需要は安いものに集まるというわけだ。
この現象は人材にも起こる。つまり、個性がなければ人と人とを差別化するのは「価格」、つまり「賃金」でしかなくなってしまうのだ。結果、労働力が買い叩かれてしまう。つまり冒頭のように平等などあり得ないというのが、瀧本氏の考え方だ。
「ノマドブーム」などはその帰着点のひとつであるかもしれない。様々な場所で仕事をする新しいワークスタイル、といえば聞こえはいい。しかし、肝心の仕事が「誰でもできる同じような仕事」なら、価格競争を激しくさせるものでしかない。
ライター、Webデザイナーから、会計士、弁護士まで。人材のコモディティ化はみるみると進んでいる。だから、瀧本氏はノマドブームが「大嫌い」だと言い、シニカルにこう批判するのだ。
ノマドブームで儲けているのはその「仕掛け人」になれた人だけで、「フォロワー」としてのノマドワーカーたちは、ただ「買い叩かれ」にいっただけにすぎない。
欠陥だらけのリーダーでも良い
人は能力も環境も平等でない。ましてや人材のコモディティ化は進み、日本は構造的に衰退に向かっている。だから、コモディティ化「されにくい」人材になる必要がある。
いちばんわかりやすいのは「リーダー」だろう。
瀧本氏は講演中にトマス・クーンの言葉を引用した。つまりイノベーションは「新人」をリーダーにしたチームで起こる。新人というのは、新しい理想を掲げられる人である。カリスマ性がなくともよく、欠陥だらけでも「突破力」があれば良い。
新しい理想が惹きつけるものならば、自然と人は集まってくる。mixiがひとりのインドネシア人留学生によって提案された話は有名だ。その提案が魅力的ならば、必要な職能を持つ人や、チームを補完する能力を持つ人、運転に必要な資金も集まってくるというわけだ。
異質者の中で発揮できる「スペシャリティ」はあるか
ゲームは変わった。良い学校に入って、良い会社に入れば安泰、というゲームではなくなったということだ。いま「生き残る」には、その人特有のスペシャリティが必要になる。それがリーダーシップだったり、実績に裏打ちされた職能だったりするわけだ。
さらに言えば、組織が「スペシャリティの集合体」になるには、異なるバックグラウンドを持つ「異質者」がたくさん集まらなければならない。安定し、普通を求めて活動する大企業が衰退するのは、組織が同質化し、イノベーションが起こらなくなるからだ。必然的に、そこで働く人の市場価値も下がる。
異質者の中で発揮できるスペシャリティをいかに獲得するか。そしていかに発揮するか。自分の属するチームはスペシャリティを発揮できるチームであるか。目的は共有されているか。観点は多様にあるが、さように現代で働くのは難しい。それがいま、「働き方」をテーマにしたセッションが成立する理由でもあるだろう。キャリコネ編集部でも引き続き注目していきたい。
「TOKYO WORK DESIGN WEEK 2013」は、渋谷ヒカリエを中心に広域渋谷圏で26日まで開催中だ。
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