• 「上司が仕事をくれません!」 輪の欠如が生む「社内失業」~社内失業に堕ちた社員たち(1)

    こんにちは。サラリーマン研究家の増田不三雄と申します。

    皆さんは「社内失業」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。

    「社内にいるのに失業?何のこっちゃ?」と疑問に思う方もいると思いますので、まずは簡単に説明しましょう。

    「社内失業」とは、会社内に居ながらにして仕事を失うこと。「社内失業者」とは、企業に雇用され、出勤していながら担当業務を持たず、職務に従事していないサラリーマンのことをいいます。

    「え?そんな人が本当にいるの? 解雇されないの? 窓際族のこと? うちの職場にもいる?」といろいろな疑問が浮かぶことと思います。

    当連載では、この社内失業に焦点を当てます。

    社内失業とは何なのか、どのような職場が社内失業を生むのか、どういう上司が部下を社内失業させてしまうのか、について、実際に私がいろいろな方に聞いた事例を元に、徐々に明らかにしていこうと思います。

    社内失業と「輪」の関係

    さて、急に話は変わりますけれども、12月も暮れとなりました。2013年もいよいよ終わりですねー。

    自民党の安倍政権がTPPへの参加を正式に表明したり、三浦雄一郎さんが史上最高齢の80歳でエベレスト登頂に成功したり、食品偽装が話題になったり、プロ野球では東北楽天イーグルスが初の日本一になったり……良いことも悪いこともあった2013年でしたが、皆さんにとってはどのような年だったでしょう?

    今年の日本はどんな年だったか……を一言で現してくれるのが、日本漢字能力検定協会が毎年京都の清水寺で発表する「今年の漢字」です。夏の全国の平均気温が観測史上最高を記録した2010年は「暑」、ロンドンオリンピックで38個の金メダルを取った2012年は「金」。

    そして、2013年の漢字は「輪」になったそうです。清水寺の住職である森貫主は、「輪」という漢字に込めた意味を「大勢の方々が加わって、円滑に回転していくこと。『わ』という読みは、平和の和にも通じます」と話したそう。

    今回はそんな「輪」が職場から失われた結果、社内失業を生んでしまった……そんな事例をご紹介しましょう。

    「俺の部下に勝手に仕事を与えるんじゃない!!」

    新卒のSさんは都内の某商社につとめる正社員。他の新卒と違うのは、担当のお仕事が何も無いことです。上司である課長に「何かお手伝いできることないですか?」と聞いても「特にないな」と言われてしまいます。

    「取引先からFAXが来ていたら、上司に渡す。仕事って言えばそれぐらいでした」

    ついには、こんな状態になってしまったんだそうです。

    新卒で入社したばかりの社員に何も仕事が無い?「どうして採用したんだよ」って信じられないかもしれませんが、これ、実際にあった話ですよー。

    しかしある時、違う課の方がその状況を不憫に思ったのか、仕事を振ってくれたんだそうです。

    Sさんは喜んで引き受けたんですが、それを聞いた課長がフロア中に響き渡る声で、その他部署の方に向かってこう怒鳴りました。

    「俺の部下に勝手に仕事を与えるんじゃない!! 自分の仕事を押し付けてサボるつもりだろう!!」

    一瞬で凍りつく職場……。以来、周囲もSさんには話しかけにくくなり、本格的に社内で孤立、社内失業者化してしまったんだそうな。

    この話、どう思います? 多くの方は「自分の面子ばっかり大切にする、アホな上長が社内失業を生んだんだな」って思うかもしれませんね。

    「ラッキー!」と思うべきだった?

    自部署の利益や都合を優先する考え方を「セクショナリズム」と言います。責任の所在を明確にするためにも、適度なセクショナリズムは必要でしょう。

    ただ、過度なセクショナリズムは、組織全体の向かうべき方向性を見失わせ、組織の機能不全を招くことがあります。

    この上司はセクショナリズムを意識するあまり、自分の部下をうまく使えていないことを見抜かれたくなかったのかもしれません。ただ、与える仕事がないからと言って「飼い殺し」のような状態にするのは会社にとっても、部下自身にとっても不利益です。

    「ラッキー!他部署の人がうちの部署の新人を教育してくれてる。手間が省けたな。やっぱり、組織というものは大勢の人々が協力しあう『輪』が大切だよね……」

    自分が楽をして部下が成長する、それはすなわち会社にとっても自分にとっても利益……。この上司はこれくらい狡猾に、部下や他部署の人の行為を許すべきだったのでは、と思います。そうすれば、この社内失業は生まれなかったでしょう。

    今日のまとめ: 過度なセクショナリズムが社内失業を生む。上司は、自分の部下が社内失業していると思ったら、「輪」でも他部署でも、何でも利用して解決すべき。

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    増田不三雄(ますだ ふみお)

    1980年生まれのサラリーマン時々ライター。正社員として都内の企業に就職したものの、ひょんなことから社内での仕事を失い、毎日職場で暇を持て余す「社内失業」の状態に。将来への不安とスキルアップにならない雑務を積み重ねながら会社員生活を送る。日々の主な業務は、郵便の宛名書きとファイル整理。 ブログ『社内失業と呼ばれて』 

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