• 当選はブラック企業のおかげ? 「共産党アイドル」が駆使した選挙戦術

    【新田哲史のワークシフトなう】

    初のネット選挙となった参院選が終わり、1カ月が経つ。広報コンサルタントである筆者も、東京選挙区で民主党現職の鈴木寛候補をお手伝いする形で参戦。しかし、残念ながら次点に終わってしまった。忸怩(じくじ)たる思いをまだ吹っ切れないでいる。

    5つのイスを巡り、9人の有力候補が激しく争った選挙戦。敗戦の要因は、民主党に対する有権者の不信感がまだまだ根強いことにもあったが、今回は新人候補の勢いをまざまざと感じさせられた。

     今世紀共産党の「最多得票」を獲得した吉良氏

    終わってみると、東京選挙区は3位が共産党新人の吉良よし子氏、4位は無所属新人の山本太郎氏。自民党のベテラン、武見敬三氏と民主党政権で文科副大臣を歴任した鈴木氏を引き離して早々と「当確」をものにするほどだった。

    吉良氏と山本氏はネットの力を巧みに使ったといえる。ただ、ネットは所詮ツールであり、何をどう打ち出すか、「コンテンツの作り込み」がポイントだった。

    この点についてはもちろん、我が鈴木陣営も様々な手を打っていた。だが、現職候補の場合、実績が豊かなため、訴える政策が専門的になりがちで、発信内容の絞り込みが意外に難しい。一方、新人たちは山本氏が「脱原発」を前面に打ち出したように、明確かつシンプルなメッセージで有権者に訴えた。

    選挙後の報道では、山本氏の番狂わせに焦点が集まったが、吉良氏の「勝因」も分析する価値は高い。3番手に浮上した彼女の得票は70万。この数字は、今世紀に入ってからの参院選東京選挙区では共産党の「最多得票」である。

    2007年と10年の参院選東京選挙区での共産党は、いずれも得票数55万票で議席に届かなかったわけだから、これは、まさに同党が常々目の敵にしている大企業も驚きの「V字回復」である。07年、10年といえば、当時は自民と民主の二大政党がせめぎ合った頃で共産党は埋没していた。

    ところで、この55万票というのは「雨が降っても槍が降っても」共産党に入れる固定票だ。それでは、積みあげた15万票はどこから呼び込んできたのか?

     リア充候補者はマネできない、吉良氏の「ブルーオーシャン戦略」

    「私もブラック企業で働いていました。関西からも吉良さんを応援しています」

    これは、選挙終盤の7月18日に、吉良氏がFacebookに投稿した記事に対し、若い女性が書きこんだコメントだ。候補者の世代別得票率がまだ明らかになっていないので現時点では推測しかできないが、自らもまだ31歳と若い吉良氏は、同世代の若者層からの支持を開拓したようにみえる。

    選挙戦中、吉良氏が「脱原発」と共に力を入れていたのが「ブラック企業」問題だった。おりしも、ユニクロやワタミの労働実態を巡る問題が噴出。「ブラック企業」という旬の切り口を有効に活用し、若者層に寄り添うスタンスを前面に見せたという点では、十分な差別化ができていた印象が強い。

    候補者自身も就職氷河期で仕事が見つからずに悩んだというエピソードは説得力があり、官僚出身やアナウンサー出身といった「リア充」な他の候補者には真似が出来ない。そうした若者層への訴求は“ブルーオーシャン戦略”の域に達していたといえる。

    ネット選挙では、「ブラック企業」をキラーコンテンツとして勝利した吉良氏。急進的な脱原発を掲げて同じく初当選した山本氏と同様、議席を持ったこれからは、選挙戦中に打ち出した内容を実行に移す責任が付いて回る。次の選挙までの6年間、どのように取り組むのか、東京の有権者の一人として、お手並み拝見ではある。

    本コラムでは、ジャーナリズムとマーケティングの視点から、新しい時代の働き方を見据えた雇用問題、企業経営、人材育成などについて取り上げます。

    新田哲史 広報コンサルタント/コラムニスト

    1975年生まれ。大手新聞記者(社会部、運動部等)、マーケティング会社勤務を経て、2013年独立。中小ベンチャー企業の広報コンサルティングの傍ら、「アゴラ」「BLOGOS」のブロガーとして、政治経済、エンタメ、スポーツなど評論活動も行う。専門領域は、ジャーナリズム、ネットメディア、新聞ビジネス、企業広報、ネット選挙、スポーツビジネス(特に野球)など。個人ブログ(http://blog.livedoor.jp/tetsujinitta/)、ツイッター(https://twitter.com/TetsuNitta)。

     

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