あなどれない「土下座」の力 上手に使えば物事も自分ペースに 2013年10月31日 仕事のエコノミクス ツイート 最近「土下座」といえば、大ヒットしたドラマ「半沢直樹」だ。主人公の半沢を土下座させた大和田常務が、逆に自ら土下座せざる得なくなる場面は圧巻だった。 土下座は他人に強制すれば犯罪になる。店員を土下座させた女性が名誉毀損で罰金刑を受け、子どもがいじめられたと担任教諭を土下座させた保護者が強要の疑いで逮捕された例もある。屈辱感もこの上ない。 お客や上司から強いられれば屈辱的だが キャリコネには、お客から土下座を要求された社員の痛切な口コミがある。 「クレーム処理に追われることが多く、土下座の毎日」(モンテローザ) 「謝ってもグチグチずっと言ってくる人や、土下座しろという人もいる」(ビックカメラ) 「お座敷で土下座を強要されることも」(木曽路) 中には、上司に社内で土下座を強要される職場もある。 「契約が取れないと、もの凄く怒られます。罵倒されたり土下座させられたり」(マンション販売会社) 「うつ病続出、社内で土下座等、噂にたがわぬブラック企業でした」(大手印刷会社) ところが屈辱的な土下座も、主体的にやれば自分の願いをかなえるための強力なパワーを発揮すると指摘する人もいる。 「裏・最強 土下座」(幻冬舎)の著者で格闘技漫画家の板垣恵介氏が土下座に注目したきっかけは、連載中の雑誌の編集者から競合他社の依頼を受けぬよう、公衆の面前で土下座されたことだ。 「どこの雑誌で描くかは俺の勝手」と思ったが、いきなりの土下座を前に、思わず「分かった」と約束してしまったという。 消費カロリーはわずか。費用対効果も高い これを機に周囲の「土下座状況」を聴き取りすると、女性にデートしてもらうための土下座から、灰皿を持ってきてもらうための土下座まで、願いをかなえるため「自ら行う土下座」が多く存在したそうだ。 しかも土下座を受け入れる側は、相手のために重い腰を上げざるを得ないが、土下座する側の消費カロリーは0.012カロリー。「費用対効果の高さ」にも板垣氏は気づいた。 ビジネスで土下座を活用する経営者もいる。「消臭力」などの消臭剤でおなじみのエステー化学の鈴木喬会長だ。著書「社長は少しバカがいい」(WAVE出版)によれば、自社シェアが弱い地域の卸会社の社長を訪ねた際、いきなり土下座でお願いをしたという。 「私を男にしてください。今までの2倍、いや3倍売ってください」 相手は度肝を抜かれたそうだが、これが営業の糸口になった。 土下座に着目する海外の経営者もいる。世界的なアウトドアメーカー、パタゴニアの創業者のイヴォン・シュイナードは、スタッフのミスに激怒した顧客に日本の社員が土下座して謝ると、顧客は急に笑顔になり、対応に感謝の意さえ口にしたと述懐する(東洋経済新報社刊「社員をサーフィンに行かせよう」より)。 大手広告代理店では、正しい土下座の手順が伝統的に引き継がれており、目撃した人によれば、その様式美は目を見張るほどだったそうだ。他人から強要される前に、ここぞとばかり差し込む戦略的土下座は、交渉時の選択肢に入れておいてもいいのではないか。 (最新の記事は twitter.com/kigyo_insiderへ)
あなどれない「土下座」の力 上手に使えば物事も自分ペースに
最近「土下座」といえば、大ヒットしたドラマ「半沢直樹」だ。主人公の半沢を土下座させた大和田常務が、逆に自ら土下座せざる得なくなる場面は圧巻だった。
土下座は他人に強制すれば犯罪になる。店員を土下座させた女性が名誉毀損で罰金刑を受け、子どもがいじめられたと担任教諭を土下座させた保護者が強要の疑いで逮捕された例もある。屈辱感もこの上ない。
お客や上司から強いられれば屈辱的だが
キャリコネには、お客から土下座を要求された社員の痛切な口コミがある。
中には、上司に社内で土下座を強要される職場もある。
ところが屈辱的な土下座も、主体的にやれば自分の願いをかなえるための強力なパワーを発揮すると指摘する人もいる。
「裏・最強 土下座」(幻冬舎)の著者で格闘技漫画家の板垣恵介氏が土下座に注目したきっかけは、連載中の雑誌の編集者から競合他社の依頼を受けぬよう、公衆の面前で土下座されたことだ。
「どこの雑誌で描くかは俺の勝手」と思ったが、いきなりの土下座を前に、思わず「分かった」と約束してしまったという。
消費カロリーはわずか。費用対効果も高い
これを機に周囲の「土下座状況」を聴き取りすると、女性にデートしてもらうための土下座から、灰皿を持ってきてもらうための土下座まで、願いをかなえるため「自ら行う土下座」が多く存在したそうだ。
しかも土下座を受け入れる側は、相手のために重い腰を上げざるを得ないが、土下座する側の消費カロリーは0.012カロリー。「費用対効果の高さ」にも板垣氏は気づいた。
ビジネスで土下座を活用する経営者もいる。「消臭力」などの消臭剤でおなじみのエステー化学の鈴木喬会長だ。著書「社長は少しバカがいい」(WAVE出版)によれば、自社シェアが弱い地域の卸会社の社長を訪ねた際、いきなり土下座でお願いをしたという。
相手は度肝を抜かれたそうだが、これが営業の糸口になった。
土下座に着目する海外の経営者もいる。世界的なアウトドアメーカー、パタゴニアの創業者のイヴォン・シュイナードは、スタッフのミスに激怒した顧客に日本の社員が土下座して謝ると、顧客は急に笑顔になり、対応に感謝の意さえ口にしたと述懐する(東洋経済新報社刊「社員をサーフィンに行かせよう」より)。
大手広告代理店では、正しい土下座の手順が伝統的に引き継がれており、目撃した人によれば、その様式美は目を見張るほどだったそうだ。他人から強要される前に、ここぞとばかり差し込む戦略的土下座は、交渉時の選択肢に入れておいてもいいのではないか。
(最新の記事は twitter.com/kigyo_insiderへ)