ワタミの「完全週休二日制宣言」 本当に「徹底されている」と言えるのか? 2014年6月12日 元社員が語る「外食産業」の舞台裏 ツイート ワタミ創業者の渡邊美樹さんが5月19日、フェイスブックにこんなことを書いています。 「ワタミ理念集119ページに『365日24時間、死ぬまで働け』と言う表現はたしかにありました。しかし120ページには『完全週休二日宣言』と言う表題で私も本気で『365日24時間、働いて欲しいなどと考えていません。』と明記し、119ページから120ページにわたりその『想い』と『理念』を述べています。『完全週休二日宣言』も含めた『本意』が、創業者の理念でありワタミ理念集です。」 「年中無休、深夜営業」のまま実現は困難 果たして「イメージ攻撃」なのか それから渡邉さんは、「これまで、文章の一部だけを切り取り、一方的に誤訳され悪意を込めたイメージ攻撃を受けて参りました」とマスコミやネットを暗に批判した上で、「365日24時間、死ぬまで働け」という表現をようやく撤回しました。 私は近年までワタミで働いていたので、理念集に「完全週休二日宣言」があることは知っています。しかし、それがきちんと実現できていたのか、実態に即しているのかというと、大いに疑問だといわざるを得ません。 私が働き始めた2000年代後半には、確かにそうしたことも言われていました。入社したばかりのころや、一般社員のころは守られていたときもありました。ただ、店長以上のクラスになるころには、有名無実になっていました。 そもそも、とうてい守れるような状況にはないのです。ワタミの店は、365日営業しています。午後4時から午前4~5時まで毎日お客を入れています。この状態で「完全週休2日制」など、果たして可能でしょうか。前回も書いたように、人件費も厳しく管理されています。 「完全週休2日制宣言」は完全に看板倒れであるうえに、水面下では長時間労働やサービス残業も当たり前になっているのが現実で、そのことは会社も重々知っているはずです。 とはいえ実際のところ悪いのはワタミだけでなく、大抵の外食チェーンはこの状態でしょう。だからこそいま、外食産業は人材不足に悩まされているのだと思います。今まで人材を大切にしてこなかったツケが、今来ているのです。それほど働く魅力に欠け、厳しい環境にあるというのが通説になってしまっているのが残念です。 外面ばかり気にしていると内部から崩れていく 外食産業がいまの人手不足を打開するには、「店の定休日を作る」「営業時間を減らす」などといった改革が必要です。これを言うと、おそらく会社から「そんなことをしたら売上が下がる。だから簡単にはできない」という答えが返ってくることでしょう。 しかし私は、「労働環境を改善しつつ、売上を上げる道を模索すべきだ」と返したい。短期的に見れば、売上は減るかもしれませんが、働く人がいなくては、会社も店も成立しません。一流の経営者であれば難しい道を進み、社員を守る義務があるはずです。 また渡邉さんは、同じ日のフェイスブックにこんなことも書いています。 「ワタミグループは本日現在、本年度の新卒新入社員が、1名も辞めていないとの報告を受けています。ワタミ理念集には元々『完全週休二日宣言』との明記があり、今年の新卒新入社員は1名も辞めていないこと、『事実は事実』です」 しかし投稿されたのは、まだ5月の下旬。入社1か月そこそこでは、労働環境の良さのアピールにはならないと言わざるを得ません。今ワタミが一番しなくてはいけないことは、「イメージ攻撃」からの回復ではなく、現場の労働環境の実質的な改善であると思います。 外面のイメージばかり考えている今のままでは、肝心の内部がズタズタになりかねないという懸念を持っています。こういった批判の中でも、必死に働いている社員やアルバイトの人たちがいることを忘れてはいけないでしょう。 今回のワタミの「ブラック企業批判」を労働環境改善のいい機会ととらえ、数年後「ワタミは変わった」「働きやすくなった」と社員やアルバイトの人たちが、本心からそう思うことこそ必要なことではないでしょうか。(ライター:ナイン) あわせてよみたい:元社員が語る「外食産業」の舞台裏 バックナンバー 【プロフィール】ナイン北海道在住の20代後半の男性。大学卒業後、居酒屋チェーンWを運営する会社に正社員として入社。都内店舗のスタッフや副店長として約4年間勤務した後、「もう少し発展性のある仕事がしたい」と転職。現場を知る立場から、外食産業を頭ごなしにブラックと批判する声には「違和感がある」という。Twitter/Facebook/ブログ
ワタミの「完全週休二日制宣言」 本当に「徹底されている」と言えるのか?
ワタミ創業者の渡邊美樹さんが5月19日、フェイスブックにこんなことを書いています。
「年中無休、深夜営業」のまま実現は困難
それから渡邉さんは、「これまで、文章の一部だけを切り取り、一方的に誤訳され悪意を込めたイメージ攻撃を受けて参りました」とマスコミやネットを暗に批判した上で、「365日24時間、死ぬまで働け」という表現をようやく撤回しました。
私は近年までワタミで働いていたので、理念集に「完全週休二日宣言」があることは知っています。しかし、それがきちんと実現できていたのか、実態に即しているのかというと、大いに疑問だといわざるを得ません。
私が働き始めた2000年代後半には、確かにそうしたことも言われていました。入社したばかりのころや、一般社員のころは守られていたときもありました。ただ、店長以上のクラスになるころには、有名無実になっていました。
そもそも、とうてい守れるような状況にはないのです。ワタミの店は、365日営業しています。午後4時から午前4~5時まで毎日お客を入れています。この状態で「完全週休2日制」など、果たして可能でしょうか。前回も書いたように、人件費も厳しく管理されています。
「完全週休2日制宣言」は完全に看板倒れであるうえに、水面下では長時間労働やサービス残業も当たり前になっているのが現実で、そのことは会社も重々知っているはずです。
とはいえ実際のところ悪いのはワタミだけでなく、大抵の外食チェーンはこの状態でしょう。だからこそいま、外食産業は人材不足に悩まされているのだと思います。今まで人材を大切にしてこなかったツケが、今来ているのです。それほど働く魅力に欠け、厳しい環境にあるというのが通説になってしまっているのが残念です。
外面ばかり気にしていると内部から崩れていく
外食産業がいまの人手不足を打開するには、「店の定休日を作る」「営業時間を減らす」などといった改革が必要です。これを言うと、おそらく会社から「そんなことをしたら売上が下がる。だから簡単にはできない」という答えが返ってくることでしょう。
しかし私は、「労働環境を改善しつつ、売上を上げる道を模索すべきだ」と返したい。短期的に見れば、売上は減るかもしれませんが、働く人がいなくては、会社も店も成立しません。一流の経営者であれば難しい道を進み、社員を守る義務があるはずです。
また渡邉さんは、同じ日のフェイスブックにこんなことも書いています。
しかし投稿されたのは、まだ5月の下旬。入社1か月そこそこでは、労働環境の良さのアピールにはならないと言わざるを得ません。今ワタミが一番しなくてはいけないことは、「イメージ攻撃」からの回復ではなく、現場の労働環境の実質的な改善であると思います。
外面のイメージばかり考えている今のままでは、肝心の内部がズタズタになりかねないという懸念を持っています。こういった批判の中でも、必死に働いている社員やアルバイトの人たちがいることを忘れてはいけないでしょう。
今回のワタミの「ブラック企業批判」を労働環境改善のいい機会ととらえ、数年後「ワタミは変わった」「働きやすくなった」と社員やアルバイトの人たちが、本心からそう思うことこそ必要なことではないでしょうか。(ライター:ナイン)
あわせてよみたい:元社員が語る「外食産業」の舞台裏 バックナンバー
【プロフィール】ナイン
北海道在住の20代後半の男性。大学卒業後、居酒屋チェーンWを運営する会社に正社員として入社。都内店舗のスタッフや副店長として約4年間勤務した後、「もう少し発展性のある仕事がしたい」と転職。現場を知る立場から、外食産業を頭ごなしにブラックと批判する声には「違和感がある」という。Twitter/Facebook/ブログ