• ワタミ、経営理念「24時間死ぬまで働け」撤回 でも中身は変わっていない?

    ワタミグループ創業者の渡邉美樹氏が、5月12日に開かれた同社の創業30周年祭で、社員向けの冊子(理念集)にある「24時間365日死ぬまで働け」という一文を撤回すると表明した。

    この「24時間365日死ぬまで働け」という文言は2013年6月、週刊文春が同社の「理念集」を独自に入手したと記事にして以来、ワタミのブラック労働の代名詞として語られる文言となっている。

    仕事とは「生きることそのもの」なのか

    同社では、2008年に入社2か月の女性が過労自殺。残業100時間を超える長時間労働の実態が次々と明らかになり、2013年には「ブラック企業大賞」を受賞するなど、ブラック企業批判が絶えない。

    週刊文春が実施したアンケート(2013年)では、読者の80.6%が「ワタミをブラック企業と考えますか」との質問に「はい」と答えている。

    今回の撤回も、こうした批判に配慮してのことだと見られる。12日付のオルタナによると、理念集の「24時間…」の部分は、こう書き換えられるという。

    「仕事とは、生きることそのものである」

    すでに配布済で社員が所有している理念集には、該当部分にシールを貼ることで対応するという。

    このオルタナの記事は14日18時現在削除されているが、編集部によると「文言の撤回は事実」であり、記念祭に集まった人数などその他のファクトの確認が取れ次第「記事を14日中に再アップする予定」だという。

    しかし、「仕事とは…」というこの書き換えの文言に対しても、ネットでは「中身は変わっていない」という批判が強い。

    仕事は生きることの一部であり、手段のひとつであって、生きることそのものではない。生きることとワタミで働くことを一致させようとする考え方は変わらず、「死なずに働け」ということにしかならないというのだ。

    「死なないと仕事から逃れられないよ。というのは同じ」
    「仕事の時間以外も仕事のことを考えてほしいなんて、あなたのメンタリティ、何も変わってないでござる」

    ワタミの名前は「GOHAN」「銀政」に変更

    こうした「撤回劇」の背景には、企業イメージを何としても改善したいという事情もあるようだ。景気の回復で国内外食市場のアルバイト時給単価は上昇を続け、外食産業は人員の奪い合いになっている。

    これまでパート・アルバイトで人を確保していた会社も、相次いで「正社員化」を打ち出して、優秀な人材の確保に懸命だ。

    一方、ワタミは「ブラック企業」によるイメージ悪化で、人材の確保に苦労している。決算説明会では、同社に入社した4月の新卒社員は約120人で、目標の半分であったことが報告された。

    14年3月期決算は、純損益が約49億円の赤字。全店舗の約1割(60店舗)を閉店する特別損失(約21億円)が響いている。人手不足の中で、適切な労働環境を確保するには、一部の店舗を閉店するしかない、というわけだ。

    遅まきながら、アルバイト約100人を地域限定正社員とすることも決めた。営業時間の見直しや、メンタルヘルスサポートの取り組み強化も行い、労働環境の改善を行っていくという。

    さらに「和民」「わたみん家」といった「ワタミ」という名のつく業態を、現在の9割超から5~6割程度に減らし、「GOHAN」「銀政」などに名前を変える。

    「理念に感動して入社」した人はどう思うのか

    決算資料には「よりお客様にご支持いただける業態への転換を加速させる」とあるが、ブラック企業イメージのついたワタミ色を薄める狙いもあるのだろう。これによって、新しい社員やアルバイトは増えるだろうか。

    創業祭があったことを報告する渡邉美樹氏のフェイスブックには、社員と思われる人からの前向きな書き込みがある。

    「理念に感動して入社して…原点に戻れました。ワタミに入社できて、素晴らしい時間を共有できた事を、誇りに思いました。本当に有難うございます。明日からまた人間性向上の為に頑張ります」

    人手不足が顕在化している外食産業にとって、労働環境の改善は死活問題となっている。理念の一部を切り貼りしただけでは、もはや労働者を騙せないだろう。

    あわせてよみたい:女性店長が「ワタミを選んで良かった!」という理由

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