• 改正安衛法で「ストレスチェック」義務化 「メンヘラ予備軍」あぶり出しに悪用されないか

    労働安全衛生法(安衛法)の改正案が4月8日、参院本会議で可決され、衆院に送られた。この改正案で注目を集めているのが、従業員50人以上の事業所を対象に、「ストレス検査」を義務づけようとしている点だ。

    2012年度における精神障害の労災認定は、475件。3年連続で過去最高の件数であり、11年度と比較しても150件の増加だ。これを問題視した厚生労働省は、労働者の「心理的負担の程度」を把握するために、安衛法改正で「医師または保健師による検査(ストレスチェック)」の実施を事業者に義務づける。

    自民党も「労働者の不利益」を懸念

    ストレスチェックの検査結果は、会社には通知されず、労働者は希望すれば産業医との面接で直接アドバイスが受けられる。

    労働者が会社に検査結果を知らせることに同意すれば、会社と産業医は意見交換をするなどし、労働者に対して「仕事内容の変更」や「労働時間の短縮」などの措置を行わなければならない。

    また会社は、労働者がメンタルの不調を訴えたからといって、労働者に「不利益な取り扱い」をしてはならない、と規定されている。この案には、政府もメンタルヘルス対策にようやく本腰を入れ始めた、と評価する声もあがる。

    改正案は当初、民主党政権下の2011年12月に国会へ提出されたが、その後の衆院解散で廃案となっていた。それに再度、追加修正を加えたものが、今国会に提出された案だ。

    しかし、この案にはいくつかの批判があったようだ。特に厳しく指摘されていたのが、「検査結果を悪用されないか」という懸念だ。朝日新聞によると、2月の自民党部会で、こんな意見が相次いだという。

    「結果がきちんと管理される保証がない。企業に知られると労働者の不利益が大きい」

    削除された「労働者の受診義務」

    その後、3月13日に国会へ提出された改正案からは「労働者の受診義務」が削除されている。つまり事業者には、ストレス検査を用意する義務があるが、労働者には受診の義務はないのだ。

    さらに、従業員50人未満の中小企業については、ストレス検査を「行うよう努める」といった努力義務に修正されている。

    この修正について、JILPT(労働政策研究・研修機構)研究員の濱口桂一郎氏は自らのブログで、こう推測している。

    「メンタルチェック自体に対するプライバシーなどの危惧や批判がどうしても払拭しきれなかったことを反映しているのでしょう」

    一方、この修正が「改悪」になったと指摘する人もいる。産業医の真崎竜邦氏は、産業医の真崎竜邦氏はイーウェル総合研究所のコラムで、「日本の労働衛生行政は労働者の大多数を占める中小企業に対するケアができていない」と批判する。

    確かに総務省によると、日本の全従業員の約6割は50人未満の企業で働いているという調査もある。過重労働に苦しむ人は、もともと中小・零細企業の方が多く、最終的に「格差」がより広がるという見方ができるかもしれない。

    「誠実な産業医」が非常に重要になる

    さらに真崎氏は、「労働者の受診義務の削除」についても、こう懸念を表明している。

    「企業側から見た場合、(受診義務のない)ストレスチェックを希望するということは、その労働者が"自社に不満を持っている異端分子ではないか"、"すでに病気になりかかっているのではないか"と考えるきっかけになります」

    ストレスチェックを恣意的に使ったり、結果を改ざんしたりすることで、「異端分子」や「メンタルヘルス不全予備軍」を閑職に追いやったり、退職勧奨に使ったりするおそれがあるということだろうか。

    検査のあと希望すれば、労働者は産業医と面接を受けられるが、面談時間の連絡や、産業医から会社への費用請求などを通じて、間接的に事業者にバレてしまうのでは、という懸念もある。

    「ストレスチェックは労働者にとって『踏み絵』になっているように思えてなりません」

    もちろん、事前のストレス検査をしっかり公正に行えれば、重症化する前に手を打てることもあるだろう。本来の趣旨に沿った効果を上げるために、真崎氏は「実施の方法に相当な注意を払うべき」だとし、企業は「良心的なサービス提供機関、誠実な産業医」を見つける必要があると強調している。

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