高卒ニートからH.I.S取締役 「期限つきマインドコントロール」が成功のカギ 2013年12月19日 ビジネスの書棚 ツイート 「目標がない」「何のために働いているか分からない」―― そんな悩みを抱えながら働く若者に、期限付きの「マインドコントロール」を勧めるのは、『これならできるよね。』(現代書林刊)の著者・大野尚氏だ。 結婚して子どもができたときは「フリーター」 彼が旅行代理店エイチ・アイ・エスに入ったのは1983年。今でこそ年商4800億円(2013年10月期)を誇る業界大手だが、当時は社員もわずか25人で売上も寂しいものだった。 後に所長を任される福岡営業所に至っては、マンションの一室に、拾ってきたような机と電話が一台だけ、という有様だった。 しかし、それから12年後の95年に、エイチ・アイ・エスはジャスダックに店頭公開。98年には航空会社「スカイマークエアライン」を設立する。さらに6年後の04年には東証一部上場も果たした。 大野氏が統括した九州・中国エリアも、売上が百数十億円にまで伸び、その実績を評価され41歳の若さで取締役に就いた。入社時の月給は8万円だったが、株式公開で億を超えるキャピタルゲインを得た。まさにベンチャードリームの体現者だ。 経歴だけ見ると、余程のバイタリティと才覚を持ったビジネスパーソンではないか、と思うかもしれない。しかし実は大野氏、高校卒業後は「ニート」であり、結婚して子どもができた時は、なんと「フリーター」だったという。 しかも、印刷工場でアルバイトしていた際に社員から「妻子持ちでアルバイトか」とバカにされ、ショックで体調を壊すほどナイーブだ。 「うちは上場するし、航空会社だって持つよ」 そんな大野氏を変えたのが、エイチ・アイ・エス創業者の澤田秀雄氏との出会いだった。営業所という名のマンションの一室で初めて会った時、 「うちは上場するし、海外にホテルも作る。航空会社だって持つよ」 と語ったという。 大野氏は「この人も誇大妄想なのかな、かわいそうに」と思った。バックパッカー経験から、海外で自分が「何でもできる錯覚」、つまり「誇大妄想」に襲われてしまった若者を多く見たからだ。 ところが澤田氏は会うたびに、「うちは上場するし、海外にホテルも作る。航空会社だって持つよ」というセリフを繰り返す。ブレない。 次第に大野氏も「できるかも」と信じ始め、自分が幸せになれる目標を信じさせてくれる「マインドコントロール」なら喜んでかかってみようと決めた。 「20年だけ彼と目標を共有しよう。まだ25歳だし、20年たってダメならやり直せばいい」 賭けは当たり、澤田氏の目標は予言のごとく実現した。 本書は、仕事で成長するためのアドバイスも多く書かれている。ありふれた人間がチャンスをつかむには、「誰にもできることで、誰もしないこと」を続けることだという。 しかし、そうした習慣を続けるにも、大元となる動機が必要だ。それが彼の場合は、他人の目標を「共有」し、自分を「マインドコントロール」することだったのだ。 あわせてよみたい:「使い捨て」覚悟で働く若者
高卒ニートからH.I.S取締役 「期限つきマインドコントロール」が成功のカギ
「目標がない」「何のために働いているか分からない」―― そんな悩みを抱えながら働く若者に、期限付きの「マインドコントロール」を勧めるのは、『これならできるよね。』(現代書林刊)の著者・大野尚氏だ。
結婚して子どもができたときは「フリーター」
彼が旅行代理店エイチ・アイ・エスに入ったのは1983年。今でこそ年商4800億円(2013年10月期)を誇る業界大手だが、当時は社員もわずか25人で売上も寂しいものだった。
後に所長を任される福岡営業所に至っては、マンションの一室に、拾ってきたような机と電話が一台だけ、という有様だった。
しかし、それから12年後の95年に、エイチ・アイ・エスはジャスダックに店頭公開。98年には航空会社「スカイマークエアライン」を設立する。さらに6年後の04年には東証一部上場も果たした。
大野氏が統括した九州・中国エリアも、売上が百数十億円にまで伸び、その実績を評価され41歳の若さで取締役に就いた。入社時の月給は8万円だったが、株式公開で億を超えるキャピタルゲインを得た。まさにベンチャードリームの体現者だ。
経歴だけ見ると、余程のバイタリティと才覚を持ったビジネスパーソンではないか、と思うかもしれない。しかし実は大野氏、高校卒業後は「ニート」であり、結婚して子どもができた時は、なんと「フリーター」だったという。
しかも、印刷工場でアルバイトしていた際に社員から「妻子持ちでアルバイトか」とバカにされ、ショックで体調を壊すほどナイーブだ。
「うちは上場するし、航空会社だって持つよ」
そんな大野氏を変えたのが、エイチ・アイ・エス創業者の澤田秀雄氏との出会いだった。営業所という名のマンションの一室で初めて会った時、
と語ったという。
大野氏は「この人も誇大妄想なのかな、かわいそうに」と思った。バックパッカー経験から、海外で自分が「何でもできる錯覚」、つまり「誇大妄想」に襲われてしまった若者を多く見たからだ。
ところが澤田氏は会うたびに、「うちは上場するし、海外にホテルも作る。航空会社だって持つよ」というセリフを繰り返す。ブレない。
次第に大野氏も「できるかも」と信じ始め、自分が幸せになれる目標を信じさせてくれる「マインドコントロール」なら喜んでかかってみようと決めた。
賭けは当たり、澤田氏の目標は予言のごとく実現した。
本書は、仕事で成長するためのアドバイスも多く書かれている。ありふれた人間がチャンスをつかむには、「誰にもできることで、誰もしないこと」を続けることだという。
しかし、そうした習慣を続けるにも、大元となる動機が必要だ。それが彼の場合は、他人の目標を「共有」し、自分を「マインドコントロール」することだったのだ。
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