• 「デキる社員」と「ダメ社員」の習慣(3)ダメ社員はがむしゃらに頑張り、デキる社員はスマートにこなす

     ダメ社員時代の私にとって目標とは、あくまで「月次の売り上げ」でした。

     「月末時点で、今月の目標数字が達成できるかどうか」だけをベンチマークに、日々の行動は、がむしゃらな長時間労働に突き進むだけでした。

     「とにかく大量行動さえしてれば、結果はついてくる」と信じてやり続けましたが、残念ながら、なかなか報われませんでした。

     そんな時、当時の上司がアドバイスしてくれたのが、これから説明する「スマートな目標設定」でした。

     この「スマート」とは、文字通りの「賢明な」という意味だけではありません。

     効果的な目標設定に必要なポイント、「Specific」「Measurable」「Achievable」「Reasonable」「Time-bound」の頭文字をとって「SMART」という意図があります。

     これは、自分自身で行動するときにも、他の人に依頼したり指示を出したりする場合にも有効でした。曖昧な部分がなくなり、結果につながるアクションが生まれていったのです。

     具体的に説明しましょう。


    「S」「M」「A」「R」「T」それぞれの意味

     ■「S」 Specific
     
     目標を立てる上で何よりも重要なのは、目標そのものや、目標を達成するための方法が具体的であることです。

     例えば、「月間売上を10%アップさせる」ことが目標だとすれば、一日あたり何円多く数字を上げなくてはならないのか、把握できているでしょうか。目標が具体的であれば、達成するために何をすべきかが見えてきます。

     目標達成のための方法も具体的でなくてはなりません。

     「がんばります」とか「改善します」という“気合い”だけでは、何をして良いのかわかりません。

     普段の業務のなかで「一日に何人と商談する」「電話で何件アプローチする」など、具体的な行動に落とし込めている必要があります。

     ■「M」 Measurable
     
     営業職のように数字を具体的に計れる仕事であれば、「達成した」「しなかった」という事実が明らかになりますが、そうではない職種の場合どう表現すればいいのでしょうか。

     例えば、「ウェブ広告からの取引成約率30%アップ」「○○部門での経費を昨年比15%削減」など、測定可能な指標を明らかにしてコミットする姿勢が求められます。

     ■「A」 Achievable
     
     ハードルが高すぎて達成できそうもない目標や、逆に努力しなくてもクリアできる目標では意味がありません。

     「仕事の難易度」「自分自身の能力」「時間的余裕」などのバランスを考慮して適切な目標を決めましょう。一般的には、すでに達成できた数字の1・5倍程度が適切だといわれています。

     個人の能力で目標達成度が左右される場合、得意なところを伸ばすのか苦手なところを伸ばすのかを考えることも重要です。

     例えば、得意な分野を磨いて10%売り上げが伸びるのと、苦手を改善して30%伸びるのとでは、苦手を伸ばしたほうが全体的な数字を押し上げます。

     もちろん、逆の場合もあります。どうすれば数字がより向上するのか、伸びしろまで考慮した目標設定が望ましいのです。

     ■「R」 Reasonable/Relevant
     
     目標設定段階で、組織の目標と自分の目標が異なっていては意味がありません。数字は達成しても、そのやり方が会社の理想と合致しているでしょうか。

     例えば、会社が本当に売りたい商材ではなく、利益の取れない商材ばかり販売していては、いくら努力して売り上げを伸ばしても評価されません。努力の方向性が正しいか、上司と確認すべきなのです。

     ■「T」 Time-bound
     
     いつまでに達成するのか、日にちを明確に決めることが大事です。確認する頻度も半年単位や年単位だと、締め切りまでまだ時間がありそうな気持ちになってしまいます。

     やはり時間を細かく区切り、「3カ月終了後で40%まで達成」「週平均で15件の商談」「1日あたり100件のテレアポ」といった具体的な期限を切って設定すれば、明確な行動指針になります。

     また、上司側にとっても、アドバイスや評価をしやすくなるという利点があります。

     さらに、もし達成できなかった場合でも短いタームの中で振り返りが行えるので、課題が明らかになりやすいメリットもあります。

     目標設定や確認のスパンが短ければ、目標や方法の見直しが必要になった場合にも軌道修正がしやすくなります。

     良い目標とは、それを達成することが自分自身の成長や組織への貢献と直結するだけでなく、「周囲からのフェアな評価」にもつながります。
     つまり、明確な形で表現することで、評価する側に「主観」や「気分」を差し挟ませることなく、「期間中に成し遂げたこと」という事実のみを見させるわけです。みなさんも、ぜひ「SMART」な目標を意識してみてください。

    (新田龍・人事コンサルタント)

     

     

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