開業医の平均年収は2070万円 医師はどれくらい稼いでいるのか? 2012年9月19日 仕事のエコノミクス ツイート 医師、弁護士、公認会計士は「3大難関試験」とも呼ばれる国家資格だ。それぞれが医・法・経の各分野のトップ国家試験に位置づけられる。 ところが最近、このうち弁護士と公認会計士の2資格の凋落が著しい。何年も苦労して勉強を続け、ようやく合格したにもかかわらず「食えない!」という悲鳴が、ちまたに蔓延(まんえん)している。 しかし、さすがに医者にはこれほどの不況はない。いわば現状は、医師の「一人勝ち」の状況だ。 これは大学入試にも表れている。他学部が軒並み受験生を減少させているのに対し、医学部の人気は落ちていない。 少子高齢化やグローバリゼーションで、日本のさまざまな分野や産業に先行きの不透明感がある中、「命を守る」という普遍的な医学の価値は、失われていないどころかますます高まっている。 では、その医師という仕事は、どれくらい儲かるのか。また、その資格取得が大変なのか。 このほど、甲南大学グループによる研究書「日本のお医者さん研究」(森剛志、後藤励著)が出版された。本書をもとに、最新の「医者の横顔」を見てみよう。 ◇ 勤務医と開業医で年収に格差 私大医学部は優秀なほど学費が安い 医師の所得の高さは、いつの時代でも羨望の対象だ。では、現在、医者はいくら稼いでいるのだろうか。 これは開業医と勤務医で、大きく異なっているという。開業医の所得は勤務医と比べてかなり高いそうだ。 ●勤務医の平均年収は1213万円 ●開業医だと平均で2070万円 次は医者になるための費用だ。 海外に比べて日本は、私立大学医学部の授業料が「異常なまでに高い」という。では具体的に、大学の6年間の授業料はいくらになるだろうか。 ●国立大は349万円 ●公立大は757~1198万円、やや幅がある。 ●私立大はさらにバラツキが激しい。主な大学で見ると、以下の通りだ。 <私立大の6年間の授業料> 産業医科大=1150万円 慶應義塾大=2238万円 自治医科大=2260万円 東京女子医大=3341万円 北里大=3890万円 東海大=4173万円 帝京大=4920万円 ここでは、要するに優秀な私立大学ほど学費も安い、という傾向がわかる。実際、帝京大学医学部と慶応大医学部を比べると、帝京大は慶応大の2倍以上もの学費がかかる。 ◇ 「後継ぎ」で開業医と勤務医に温度差 ポストで給与はどう違うのだろうか。紹介するのは平均の月額給与。同じ勤務医でも、公立病院と私立病院では違う。その違いも見てみよう。さらに、看護師など、医師以外の給与とも比較してみた。 <公立病院> 病院長=163万円 医師=118万円 薬剤師=55万円 看護師=48万円 事務職=53万円 <私立病院> 病院長=259万円 医師=133万円 薬剤師=40万円 看護師=36万円 事務職=32万円 ポストや役職で、これだけの差がある。公立と私立の違いも興味深い。ここから予想できるのは、評判が何よりも重要となる私立病院の場合、「高額報酬で医師を引き留め、その分、薬剤師や看護師の給与を抑制しているのではないか」ということだろう。 最後に「子供に後を継がせたいか」という点について見てみよう。 これも、開業医と勤務医で差があるという。 「男の子供を医師にさせたいか」という質問に対し、開業医は半数以上が「Yes」と答えた。ところが、勤務医の場合は半数以上が「どちらともいえない」という回答したという。 本書は、ほかにも「地域格差や男女の違い」「海外との比較」などにも焦点を当てている。また、地方の若手医師ほど過酷な就労状況にあることなども伝えている。 【仕事のエコノミクスのバックナンバーはこちら】
開業医の平均年収は2070万円 医師はどれくらい稼いでいるのか?
医師、弁護士、公認会計士は「3大難関試験」とも呼ばれる国家資格だ。それぞれが医・法・経の各分野のトップ国家試験に位置づけられる。
ところが最近、このうち弁護士と公認会計士の2資格の凋落が著しい。何年も苦労して勉強を続け、ようやく合格したにもかかわらず「食えない!」という悲鳴が、ちまたに蔓延(まんえん)している。
しかし、さすがに医者にはこれほどの不況はない。いわば現状は、医師の「一人勝ち」の状況だ。
これは大学入試にも表れている。他学部が軒並み受験生を減少させているのに対し、医学部の人気は落ちていない。
少子高齢化やグローバリゼーションで、日本のさまざまな分野や産業に先行きの不透明感がある中、「命を守る」という普遍的な医学の価値は、失われていないどころかますます高まっている。
では、その医師という仕事は、どれくらい儲かるのか。また、その資格取得が大変なのか。
このほど、甲南大学グループによる研究書「日本のお医者さん研究」(森剛志、後藤励著)が出版された。本書をもとに、最新の「医者の横顔」を見てみよう。
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勤務医と開業医で年収に格差 私大医学部は優秀なほど学費が安い
医師の所得の高さは、いつの時代でも羨望の対象だ。では、現在、医者はいくら稼いでいるのだろうか。
これは開業医と勤務医で、大きく異なっているという。開業医の所得は勤務医と比べてかなり高いそうだ。
●勤務医の平均年収は1213万円
●開業医だと平均で2070万円
次は医者になるための費用だ。
海外に比べて日本は、私立大学医学部の授業料が「異常なまでに高い」という。では具体的に、大学の6年間の授業料はいくらになるだろうか。
●国立大は349万円
●公立大は757~1198万円、やや幅がある。
●私立大はさらにバラツキが激しい。主な大学で見ると、以下の通りだ。
<私立大の6年間の授業料>
産業医科大=1150万円
慶應義塾大=2238万円
自治医科大=2260万円
東京女子医大=3341万円
北里大=3890万円
東海大=4173万円
帝京大=4920万円
ここでは、要するに優秀な私立大学ほど学費も安い、という傾向がわかる。実際、帝京大学医学部と慶応大医学部を比べると、帝京大は慶応大の2倍以上もの学費がかかる。
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「後継ぎ」で開業医と勤務医に温度差
ポストで給与はどう違うのだろうか。紹介するのは平均の月額給与。同じ勤務医でも、公立病院と私立病院では違う。その違いも見てみよう。さらに、看護師など、医師以外の給与とも比較してみた。
<公立病院>
病院長=163万円
医師=118万円
薬剤師=55万円
看護師=48万円
事務職=53万円
<私立病院>
病院長=259万円
医師=133万円
薬剤師=40万円
看護師=36万円
事務職=32万円
ポストや役職で、これだけの差がある。公立と私立の違いも興味深い。ここから予想できるのは、評判が何よりも重要となる私立病院の場合、「高額報酬で医師を引き留め、その分、薬剤師や看護師の給与を抑制しているのではないか」ということだろう。
最後に「子供に後を継がせたいか」という点について見てみよう。
これも、開業医と勤務医で差があるという。
「男の子供を医師にさせたいか」という質問に対し、開業医は半数以上が「Yes」と答えた。ところが、勤務医の場合は半数以上が「どちらともいえない」という回答したという。
本書は、ほかにも「地域格差や男女の違い」「海外との比較」などにも焦点を当てている。また、地方の若手医師ほど過酷な就労状況にあることなども伝えている。
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