「デキる社員」と「ダメ社員」の習慣(7)「ちゃんとやれ!」だけのダメ社員、細かく教えるデキる社員 2012年9月28日 仕事のエコノミクス ツイート ダメ社員でも、ある程度の社歴を重ねると、後輩ができます。私も、入社後2年目の春に、初めて後輩が入ってきた時は嬉しかったです。 私の直属の上司は厳しい人でしたから、自分は上司の逆をいくべく、後輩にはやさしく接しようと心に決めてました。 後輩はやる気と熱意に溢れていて、返事は「ハイ!」と元気よく、レスポンスは実にいい。でも、ところどころでツメの甘いところが目につきました。 まず、ご来社頂くお客様を下座に案内してしまう。 次に資料提出の締め切りは守るが、誤字が多い。 そして、言葉遣いです。 「お見積もりはこちらのほうになります」 「ウチの課長のほうが参りますので…」 などと、やたら『ほう』を使っていました。 このほかにもいろいろありました。 私は彼よりも一年長く仕事をしてるわけですから、目につくところは、そのつど指摘しました。 「おいおい、上座と下座くらいちゃんと勉強しとけよ!」 「締め切りを守るのはいいけど、提出前に誤字脱字はきちんと確認しろよ!」 「ちょっとなぁ~、その『ほう』が耳につくんだよな~。そういうのって自分ではあまり気づかないから、しっかり意識しといたほうがいいぞ!」 いずれも、私直属の厳しい上司のトーンに比べたら、よっぽどマイルド。なるべくキツイ言い方でなく指摘したつもりです。 では、その目についていた後輩のツメの甘さは、その後どうなったと思いますか? 残念ながら、ほとんど改善しませんでした。なぜでしょうか? 今なら、私の指摘が伝わらなかった理由がよくわかります。指示が曖昧だったのです。 大事なのは、「指示や依頼のときには、どのようにでも解釈できる、あいまいな言葉は使わない」ということです。 私は後輩に対して「ちゃんと勉強しろ」「しっかり意識しろ」「きちんと確認しろ」と言いました。 まさに、ここが、「大事であるにもかかわらず、曖昧な表現のために伝わっていない」という部分なのです。 「ちゃんと」「しっかり」「きちんと」といった言葉は、実に便利です。内容を詳細に意図しなくても、それらしいニュアンスを表現できますから、ついつい意識せずに使ってしまいます。 だからこそ、危険なのです。なぜなら、私が思っている「ちゃんと」と、相手が認識している「ちゃんと」が同じではないのですから。 具体的にどれくらいのレベルで、どんな行動を求めているのか、明確に説明する必要があるのです。 ◇ デキる社員の言葉の使い方とは? デキる社員はこんな時、曖昧な言葉は一切使いません。 遠回りでバカ丁寧に聞こえるかもしれませんが、相手が具体的にイメージできるまで、細かい手順まで説明するようにします。 先の私の例であれば、こう言うべきなのです。 「ちゃんと勉強しろ」 →「上座、下座の区別がつかないと、お客様をお迎えする時も、自分たちが訪問する時も失礼になり、会社自体のイメージにも影響する。これを機会に、応接室や座敷、乗り物に乗るときの上座、下座については把握しておけ。それをマスターしたら、接遇のマナー全般についても順次勉強していけよ」 「しっかり意識しろ」 →「キミは何にでもつい『ほう』をつけるクセがあるようだ。人によっては不快感を抱く場合があるから、今日から、発言やメールの文章などで無意識に『ほう』をつけていないか、逐一気をつけて、言わないようにしてみよう」 「きちんと確認しろ」 →「ちょっとした誤字でも、ビジネスとして出す文書ではご法度なんだ。これからは書類を提出する前に必ず一度見返して、『本当にこれでいいのか?』と確認してくれ。そして、課長に出す前にオレに見せてくれ。それでOKなら提出していい」 と、かなり細かいですが、これくらいの具体性をもって説明する必要があるのです。 ここまで言えば、相手にとって自由に想像して判断できる部分、すなわち誤解の余地はありません。その上で実践してみて、無事にできれば言われた本人にとっても成功体験として自信になります。 逆にできなければ、本人の仕事の仕方に、何かしら問題があることが浮き彫りになるわけです。 何事も、「言ったつもり」「伝えたつもり」ではいけません。相手にとって伝わったことが確認できて、はじめてコミュニケーションは成立するのです。 (新田龍・人事コンサルタント)
「デキる社員」と「ダメ社員」の習慣(7)「ちゃんとやれ!」だけのダメ社員、細かく教えるデキる社員
ダメ社員でも、ある程度の社歴を重ねると、後輩ができます。私も、入社後2年目の春に、初めて後輩が入ってきた時は嬉しかったです。
私の直属の上司は厳しい人でしたから、自分は上司の逆をいくべく、後輩にはやさしく接しようと心に決めてました。
後輩はやる気と熱意に溢れていて、返事は「ハイ!」と元気よく、レスポンスは実にいい。でも、ところどころでツメの甘いところが目につきました。
まず、ご来社頂くお客様を下座に案内してしまう。
次に資料提出の締め切りは守るが、誤字が多い。
そして、言葉遣いです。
「お見積もりはこちらのほうになります」
「ウチの課長のほうが参りますので…」
などと、やたら『ほう』を使っていました。
このほかにもいろいろありました。
私は彼よりも一年長く仕事をしてるわけですから、目につくところは、そのつど指摘しました。
「おいおい、上座と下座くらいちゃんと勉強しとけよ!」
「締め切りを守るのはいいけど、提出前に誤字脱字はきちんと確認しろよ!」
「ちょっとなぁ~、その『ほう』が耳につくんだよな~。そういうのって自分ではあまり気づかないから、しっかり意識しといたほうがいいぞ!」
いずれも、私直属の厳しい上司のトーンに比べたら、よっぽどマイルド。なるべくキツイ言い方でなく指摘したつもりです。
では、その目についていた後輩のツメの甘さは、その後どうなったと思いますか?
残念ながら、ほとんど改善しませんでした。なぜでしょうか?
今なら、私の指摘が伝わらなかった理由がよくわかります。指示が曖昧だったのです。
大事なのは、「指示や依頼のときには、どのようにでも解釈できる、あいまいな言葉は使わない」ということです。
私は後輩に対して「ちゃんと勉強しろ」「しっかり意識しろ」「きちんと確認しろ」と言いました。
まさに、ここが、「大事であるにもかかわらず、曖昧な表現のために伝わっていない」という部分なのです。
「ちゃんと」「しっかり」「きちんと」といった言葉は、実に便利です。内容を詳細に意図しなくても、それらしいニュアンスを表現できますから、ついつい意識せずに使ってしまいます。
だからこそ、危険なのです。なぜなら、私が思っている「ちゃんと」と、相手が認識している「ちゃんと」が同じではないのですから。
具体的にどれくらいのレベルで、どんな行動を求めているのか、明確に説明する必要があるのです。
◇
デキる社員の言葉の使い方とは?
デキる社員はこんな時、曖昧な言葉は一切使いません。
遠回りでバカ丁寧に聞こえるかもしれませんが、相手が具体的にイメージできるまで、細かい手順まで説明するようにします。
先の私の例であれば、こう言うべきなのです。
「ちゃんと勉強しろ」
→「上座、下座の区別がつかないと、お客様をお迎えする時も、自分たちが訪問する時も失礼になり、会社自体のイメージにも影響する。これを機会に、応接室や座敷、乗り物に乗るときの上座、下座については把握しておけ。それをマスターしたら、接遇のマナー全般についても順次勉強していけよ」
「しっかり意識しろ」
→「キミは何にでもつい『ほう』をつけるクセがあるようだ。人によっては不快感を抱く場合があるから、今日から、発言やメールの文章などで無意識に『ほう』をつけていないか、逐一気をつけて、言わないようにしてみよう」
「きちんと確認しろ」
→「ちょっとした誤字でも、ビジネスとして出す文書ではご法度なんだ。これからは書類を提出する前に必ず一度見返して、『本当にこれでいいのか?』と確認してくれ。そして、課長に出す前にオレに見せてくれ。それでOKなら提出していい」
と、かなり細かいですが、これくらいの具体性をもって説明する必要があるのです。
ここまで言えば、相手にとって自由に想像して判断できる部分、すなわち誤解の余地はありません。その上で実践してみて、無事にできれば言われた本人にとっても成功体験として自信になります。
逆にできなければ、本人の仕事の仕方に、何かしら問題があることが浮き彫りになるわけです。
何事も、「言ったつもり」「伝えたつもり」ではいけません。相手にとって伝わったことが確認できて、はじめてコミュニケーションは成立するのです。
(新田龍・人事コンサルタント)