• “ブラック企業”は、こう見抜け!(6) 面接編・Part1

     就職活動している人にとって、応募した会社の書類審査が通り、筆記試験もクリアし、面接にまでたどり着くことは嬉しいものだ。一方で、「面接」は採用することで企業が応募者におカネを払う側である以上、どうしても「応募者が評価される場」というのが一般的だ。

     確かにその通りなのだが、評価するのは企業側だけではない。面接は応募者側も、その企業を評価する場でもあるのだ。

     就職が決まれば何十年間にわたって、それも1日8時間以上を過ごすであろう場所であることを考えれば、「この会社で働くことが自分にとってベストなのか」ということを慎重に見極めることが重要だ。

     面接は、その判断材料になる。もし、ブラック企業に入社してしまった場合には、自分自身が苦しむことになるだろう。

     では、そのためにはどんな点に着目すれば良いのだろうか。今回は、面接時でのポイントを前編・後編にわけて紹介しよう。


    「短時間の面接で即内定」は危険のしるし

     面接時で注目すべき最初ポイントは、面接時間や回数だ。
     

     ポイント(1) 短時間、1回の面接で即内定

     短時間や1回の面接で採用が決まる場合には「頭数さえ揃えば誰でもいい」という考えである可能性が高い。

     たとえ人事採用のプロでも、人をきちんと評価し、見抜くには時間が必要だ。なぜなら、応募者の「現在持っている能力」だけではなく、「将来の可能性」や「人柄」など、多くの項目を多角的に判断しなければならないためだ。

     また、採用面接では人事担当者だけではなく、一緒に働く現場の社員や役員など、さまざまな立場の人が選考にかかわり、総合的に判断されることが一般的だ。

     正社員採用の場合、平均的な生涯賃金は2~3億円ともいわれる。企業にとってみれば、人を採用することは、定年まで約40年のローンで2億の買い物をするようなものだ。しかも、一度採用すれば、労働基準法があるために簡単にクビにすることはできない。

     そんな「高くてキャンセルしにくい買い物」をするのに、わずかな時間の面接でアッサリ採用を決めきれるはずはない。そう考えれば、「1回の面接で即決」「10分程度の面接で内定」などというケースはありえない。

     「本当に能力も相性も良く、何の問題もない」という場合は万が一にはあるかもしれないが、一般的には「即決」=「もう誰でもいいから、人数さえ揃えばいい。イヤなら勝手に辞めろ」くらいの基準であることが多い。もし、そうであれば、入社後の状況は推して知るべしだ。

     注意すべきは面接回数だけではない。面接の内容も重要だ。
     

     ポイント(2) 面接は雑談ばかりで、何が評価されたかわからない

     面接で企業側から必要だったり重要なことを聞かれなかった場合には「誰でもいい」という判断である可能性が高い。具体的には以下のような例だ。

     「趣味の話など、仕事とまったく関係ない雑談で終了」
     「志望動機や入社後やりたい仕事など、ぜんぜん聞かれなかった」
     「部活やスポーツのことなど、体力面にしか関心がないのかと思った」
     「質問に答えられなかったが、なぜか通過していた。どこが良かったのだろう?」

     このように面接で感じた場合は要注意だ。「何の判断もしていない」=「誰でもいい」、「体力さえあればいい」ということだと考えられる。その時点で怪しいと判断しなければならない。

     続いての着眼点は面接の進行についてだ。
     

     ポイント(3) スケジュールに余裕がなく、次ステップの選考や内定承諾を急かされる

     選考時間が短いということは、自社に後ろめたいと部分があり、応募者に熟考させる時間を与えたくないという意図がある。面接の間の時間を詰めることで、応募者が自社のネガティブな情報をいろいろと調べ、それによって辞退されることを防ぎたいわけだ。

    そして、早期に内定を出し、入社承諾書をもらえばこちらのもの、という狙いがある。もちろん、こういうケースばかりではなく、純粋にスケジュールの問題という可能性もある。

     内定承諾の期限も同様だ。企業としては人が必要だから採用している。だから、すぐにでも来てほしいという意向はあるだろう。

    しかし、応募者にとっては人生を左右する選択になるかもしれない。

     ただ本当に応募者に配慮している企業であれば、ある程度の考える時間は与えてくれる。その目安は、急いでいた場合でも1~2週間くらいだ。それよりも短い期限で、内定承諾を急かす会社は怪しいと考えてよいだろう。


    企業が自社の説明をしないのには訳がある

     ここでまた、面接の内容について話は戻るが、今度は応募者ではなく企業側の話についてだ。
     

     ポイント(4) 自社の説明をしたがらない、説明してもあいまい

     自社の説明がないということは、何かしらの「応募者辞退につながる要素」がある。面接とは、コミュニケーションを通じて「企業が応募者を判断する場」である一方、企業からは「応募者に自社を理解してもらう」という側面もある。

     一般的な企業は、このことを十分承知している。だから、自分たちの会社をわかってもらうために、以下のような項目について、データはきちんと整理して用意し、面接に関わる社員に対して把握しておくよう徹底させる。

     「事業内容」
     「仕事内容」
     「勤務条件」
     「待遇」
     「売上高」
     「社員数」
     「離職率」
     「平均勤続年数」

     しかし、こうしたデータについて質問しても面接官から明確な回答がない場合は注意しなければならない。「社内での情報共有が徹底していない」「社員自体も詳細を知らされていない」「会社としてあえて出したくない」といった理由が存在している可能性が高い。社内体制が整っていないことの証拠といえるだろう。

     もし、企業側がデータをきちんと説明してくれたとしても、特に「離職率」や「平均勤続年数」といった項目については数字が一人歩きする傾向がある。だからこそ、数字の絶対値だけを見て軽率に判断するのではなく、「なぜこの数値になっているのか?」という根拠を考える必要がある。

     例えば、「離職率が高い」といっても、「定年退職」や「独立起業」、「分社化による移籍」といった理由であれば心配するは無用だ。一方で、離職率が低い場合でも、「入社後1年未満は算入しない」「契約社員は算入しない」などの例外がある。そのため、真に実態を反映しているかどうかを冷静に判断をしよう。

     「平均勤続年数」も同様だ。例えば、創業5年の会社での場合、最も古参の社員でも「勤続年数5年」。もし、その会社が新卒採用を始めたばかりだとすると値はさらに低下する。おそらく平均勤続年数は2年くらいになるだろう。

     しかし、社員全員が会社に満足しており、離職率はゼロだったならば、果たしてこの会社は「みんな2年ももたない危ない会社」といえるだろうか。そうではないはずだ。この例からもわかるように、数字は「根拠を読む」ことが必須ということを理解しておいてほしい。

    (新田龍・ブラック企業アナリスト)

     

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