• “ブラック企業”は、こう見抜け!(6) 面接編・Part2

     ブラック企業は採用広告や会社説明会を盛大に演出し、実態の5割増しくらいに見せかけるのが常套手段だ。そのため、広告や説明会だけでは、その会社がブラック企業であるかどうかを見極めるのは難しい。

     しかし、その段階では見抜くことができなくても、会社訪問や面接といった場面では、メッキがはがれて実態がわかることが多い。だから、その時に、判断する着目点を知っているかが重要になる。

     そこで、今回も前回に引き続き、面接時にブラック企業を見抜くためのノウハウとして、さらに4つのポイントを紹介しよう。


     

    「精神論」だけで経営する会社は要注意!

     最初はポイントは条件面についてだ。

     ポイント(1) 募集内容の記述と面接で提示された条件(仕事内容、待遇など)が違う

     もし、条件が異なっているのであれば、遵法意識が低い、まさにブラック企業である可能性が高い。

     「試用期間終了後は給与が上がるはずなのに、『売り上げ次第で変動』と知らされた」
     「求人票では『土日祝休』だが、実際は土日や祝日にみんなが自発的に出社している」
     「残業手当有となっているが、みなし残業分が基本給込みになっており、実質ゼロだった」
     「あとになって、試用期間中は社会保険に加入できず、有給休暇もないことを知らされた」

     このように、求人票の「募集要項」に載っている情報と、面接時に説明される内容とに差異が発生する場合がある。

     これは、企業側としては好条件のように見せかけて人を集めて、その場で翻すという「確信犯」であることが考えられる。このような企業は、まさに遵法意識のない“ブラック企業”であり、なんとしてでも避けるべきだ。

     この点について、労働基準法上では、厳密に言うと、募集時と説明時に内容が変わること自体は違法ではない。ただし、「労働契約締結後に条件が変わる」ことは違法だ。また、職業安定法上でも、募集内容は「的確な表示に努めなければならない」という努力義務でしかない。

     だからといって不明瞭な表示を行って良いわけではない。応募者を意図的に勘違いさせるような行為は不誠実であり、そんな対応を平気で行う企業は選ぶべきではない。次は仕事のスタイルについてだ。

     ポイント(2) 精神論を持ち出す

     ビジネススキルとしての精神力、メンタルタフネスという意味では大事な要素だが、それは数ある要素のうちの1つに過ぎない。しかし、ブラック企業の場合は往々にして、求める人物像や会社の目標に「根拠のない精神論」が入ってくる傾向がある。そうなると、精神力だけで仕事することを余儀なくされる可能性が高い。

     「何事も気合いだ」
     「常にチャレンジャーであれ」
     「走り続けるから成長できるんだ」
     「泥をすすってでも這い上がれ」
     「オレ(社長)の成長を追い越せ」
     「アグレッシブに攻めろ」

     こうした言葉は、社内のゆるんだ空気に喝を入れる意味で一時的に使う分には効果的な場合もあるだろう。しかし、経営方針である場合には、その会社は再考したほうが良いだろう。

     なぜならば、「どうしたら勝てるか」というノウハウや仕組みが蓄積されておらず、経営者や上司も指導やマネジメントの方法をきちんと確立できていない会社かもしれないからだ。

     そうした会社では、業績が不振な時にも、「会社の仕組みや営業のやり方に問題があるのでは?」とは考えないだろう。「お前の気合いが足りない」「本気でやってない」という不毛な精神論の応酬になることは目に見えている。
     

     ポイント(3) 社長の価値観が極端で、柔軟性がない

     この場合は、いくら頑張っても、報われない可能性が高い。経営者にとっては自分が好きで始めたビジネスだから、仕事や会社に対する思い入れが強いのは当然だ。

     「仕事を楽しもう!」
     「やりがいを感じろ!」
     「社会貢献だ!社会奉仕だ!」

     これらのフレーズは、経営者の個人的な感覚だったり、会社のスローガン程度である分には害はない。仕事にやりがいを見出すことなど、むしろ奨励すべきだろう。ただ、これらの「想い」だけが先行してしまう一部の経営者がいる。

     「勤労とは最高の悦楽だ!」
     「こんなに楽しい仕事なのに、やりがいを感じられない者はおかしい!」
     「社会に奉仕させて頂いているのに、なんでカネとか休みを要求するんだ!」

     彼らはこういう極端な考えを持っている。経営者と従業員は立場と役割が異なり、価値を感じるポイントが違うものだということが理解できないのだ。

     そのため、彼らは、「社長である自分自身と同じ目線、同じ価値観で考えられる人間」しか評価しない。自分と相容れない考えを持った社員を評価しない、もしくは人として受け入れない環境である可能性がある。これは明らかに不幸なことだ。そのような人がトップにいる限り、いくら仕事を頑張って成果をあげても「当事者意識が足りん」などと言われるだけで、評価につながることは未来永劫にないだろう。


    配慮がない会社は顧客にも誠意がない

     最後は面接官や企業の姿勢についてだ。
     

     ポイント(4) 面接官や企業側の対応に誠意がない

     ●面接官が事前に応募書類(職務経歴書など)を読んでいない
     ●面接官の態度が横柄
     ●学歴、性別、国籍や前職などに対して偏見、差別的、モラルを欠いた発言がある
     ●日程調整など、応募者の都合を考慮しない

     応募時に、このような企業側に何かしら誠意が感じられない対応が見られた場合は要注意である。これは面接に限らず、入社前のメールや電話による調整など、事前のコミュニケーションにおいても当てはまる。

     また応募者に誠意がない対応をする会社は、顧客に対しても誠意がない会社である可能性が高い。顧客に対しても知らず知らずのうちに誠意のない、無神経で失礼な対応をしているかもしれないからだ。

     例えば、一度面接が行われた後の連絡でも企業の姿勢は読み取れる。

     ■心配ない場合
     「選考結果が迅速に伝えられる」
     「選考結果についての理由説明が具体的で明確」
     「選考に時間を要した場合、それに対するおわびと説明がきちんとなされる」
     「ある程度、応募者の都合を考慮しながら、次回選考の日程調整が行われる」

     ■怪しい場合
     「面接後結果が出るのがやたら早い。もしくは、やたら遅い」
     「選考結果に関する理由の説明がない」
     「次回選考日程が『本日』とか『明日』など、応募者の都合を考えない」

     こうやって対比すると良くわかる。ポイントは「誰の都合を優先しているか」だ。「心配のない企業」はあくまで「応募者優先」の姿勢だ。一方、「ブラック企業」は「自社都合優先」というわけだ。

     応募者に配慮がない会社は、細かいところまで気を遣うという意識がそもそも欠落しているか、そのような対応を徹底させるマネジメントが存在していない、という証拠だろう。まさに「神は細部に宿る」のだ。

    (新田龍・ブラック企業アナリスト)

    (おわり)

     

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