「失敗した!」 ブラック企業に入社したら、どうすればイイ? 2013年3月18日 仕事のエコノミクス ツイート 苦しかった就職・転職活動が終わり、志望する企業に入社できた。「さあ、これから頑張ろう」と思って働き始めた矢先に、先輩社員の態度や職場環境などに違和感を覚える。そう、あなたが就職したのは実は“ブラック企業”だったのだ。 ブラック企業は組織の「ブラック」の度合いが高ければ高いほど、入社希望者に対して実態と正反対の「いいイメージ」を植え付ける。そのやり方は実に巧妙だ。そのため、場合によっては、いくら注意を払っても見抜けない。 では、もし、入社後に勤務先がブラック企業とわかったら、どうすればいいのだろうか。安心してほしい。たとえ入社後であっても、ブラック企業に取り込まれないようにはできる。その対処法をお教えしよう。 ◇ 「どの会社にもある」と「要注意」を見極める 新卒で正社員経験がない人の場合、当然だが「組織の正社員として働く」というのがどういうことか、判断する基準を持っていない。 そのため、入社後に「何かおかしい」と感じたとしても、一方で「会社はどこもこんなものなのかも」と考えてしまうことは少なくないだろう。 そこでアドバイスするのは「落ち着いて、冷静に状況を判断する」ということだ。例えば、次のような事は「どの会社にもある」レベルの事象なのだ。 ■「どの会社にもある」事象 ●上司や先輩が厳しい ●ノルマがある ●残業がある ●遅刻すると怒られる ●目標を達成できないと厳しく怒られる この程度であれば、どの会社も同じなので心配の必要はない。逆に、こうした理由でイヤになり、会社を辞めたとしても、他社でもほぼ同じ状況が待ち構えている。上記のような内容は、会社員として「最低限は乗り越えないといけない壁」と考えたほうがよい。 しかし、以下のような事象が見られる労働環境であれば、それはブラック企業の度合いが高いことを示している。注意して確認することが重要だ。 ■「ブラック企業の可能性が高い要注意」の事象 ●面接で説明された条件(配属、仕事内容、待遇など)が実態と全く違う ●社会保険に加入していない ●就業規則が存在しない ●研修内容がビジネススキルや技術的なものではなく、精神的修養 ●研修期間、試用期間中に退職者が出る ●研修後の課題(試験やレポート、実技など)がクリアできないと解雇、もしくは不当な扱いを受ける ●定時より早い時間の出勤、サービス残業、休日出勤を強要される ●休暇をと取らせない ●給与遅配や現物支給がある ●自社製品を強制的に購入させる ●経営者の私的用途に社員が動員されたり、社費が費やされる ●経営者が出勤せず、遊んでばかりいる ●経営者の主観や気分で解雇、昇進、降格が行われている ●会社の仕事(接待、出張、部下慰労など)に自腹を切ることを 強要される ●社内暴力やイジメ、体罰がある ●セクハラ、パワハラが日常茶飯である ●賭博(賭けゴルフ、賭けマージャンなど)が日常的に行われている ●経営者への崇拝を強要される ●経営者や上司が社員の悪口を吹聴している ●密告を奨励している ●社員が精神的に抑圧され、言いたいことが言えない雰囲気である ●常に怒声が飛び交うような恐怖マネジメントである ●退職妨害(退職願を受理しない、必要書類を発行しないなど)がある ・個人情報の管理が甘く、 社員間の認識も薄い このような場合、早急に役所や専門家などに話すことをおススメする。具体的には以下のような相談先が考えられる。 ■報告・相談先 ●身近な専門家に相談 ●労働基準監督署に相談 ●求人情報を掲載していたメディア(新聞、求人誌、求人サイトなど)に報告 ●求人仲介者(ハローワーク、人材紹介会社、人材派遣会社など)に報告・相談 その上で、客観的な意見も参考にしながら、勤務継続するかどうかを考えてみてほしい。退職の準備を始めるのもよいだろう。早期離職によるデメリットもあるが、早めに判断し、自分の貴重な人生をムダにしないことも大切だからだ。 ◇ 「ブラック企業」の定義は、ひとり一人の価値観が決める 私は、ひとり一人が「自分にとってのブラック企業とは?」という判断基準を持つことができれば、業界研究や職種研究、企業研究で見極めるべきポイントが明確になり、自分が本当に働きたい会社を見つけたり、ブラック企業を回避する原動力になると考えている。 学生はもちろんだが、社会人経験を積んだビジネスパーソンでさえも、企業の実態を見抜くのは難しい。だからこそ、学生、社会人を問わず多くの人が以下のようなポイントで企業を選んでしまう。 「企業規模」 「知名度とブランドイメージ」 「評判」 「説明会やセミナーの雰囲気」 「社員の印象」 「オフィス立地、環境」 こうして見るとわかるが、いずれも企業の本業や就職した場合の仕事内容と全く関係ない「外的要因」ばかりだ。そして、これらは「他人の価値観によって編集された情報」でしかない。だからこそ、外的要因に惑わされることなく、ぜひ、自分の価値観を大事にしてほしい。 「仕事に何を見出すか」「何がやりがいなのか」など、人によって「自分が働く上で大切にしたいこと」は異なる。何を大事にするかは個々人が決めなければならない。 そう考えれば、逆のことも言える。すべてのリスク要因を認識した上で、自分が求めることを得られる環境ならば、あえて「ブラック企業」に身を置くという選択も「アリ」ということだ。そういう意味では「ブラック企業」の定義自体も、その人の価値観次第ということになる。 かつて、私自身も世間から「ブラック企業」と呼ばれる会社で働いていた。しかし、その会社が「ブラック企業だった」とはまったく思ってはいない。 なぜなら、私が起業することができて、思い描いた通りのビジネスを行い、ハッピーな人生を送れているのは、ブラック企業の勤務時代に得た経験があるからだ。仕事は確かにハードだった。しかし、それ以上に吸収できるものが非常に多かった。だから、今でも、この会社には大変感謝している。 就職・転職活動をしている人、これから活動を始める人も会社を選ぶにあたっては、「自分自身の価値観」と「企業の本質を見抜く眼」を持って納得できる選択をしてもらいたい。そして、少しでも多くの人が「働いても報われない」状態にならずに、ハッピーで得るものが多い会社で働いてほしいと願っている。 (新田龍・ブラック企業アナリスト)
「失敗した!」 ブラック企業に入社したら、どうすればイイ?
苦しかった就職・転職活動が終わり、志望する企業に入社できた。「さあ、これから頑張ろう」と思って働き始めた矢先に、先輩社員の態度や職場環境などに違和感を覚える。そう、あなたが就職したのは実は“ブラック企業”だったのだ。
ブラック企業は組織の「ブラック」の度合いが高ければ高いほど、入社希望者に対して実態と正反対の「いいイメージ」を植え付ける。そのやり方は実に巧妙だ。そのため、場合によっては、いくら注意を払っても見抜けない。
では、もし、入社後に勤務先がブラック企業とわかったら、どうすればいいのだろうか。安心してほしい。たとえ入社後であっても、ブラック企業に取り込まれないようにはできる。その対処法をお教えしよう。
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「どの会社にもある」と「要注意」を見極める
新卒で正社員経験がない人の場合、当然だが「組織の正社員として働く」というのがどういうことか、判断する基準を持っていない。
そのため、入社後に「何かおかしい」と感じたとしても、一方で「会社はどこもこんなものなのかも」と考えてしまうことは少なくないだろう。
そこでアドバイスするのは「落ち着いて、冷静に状況を判断する」ということだ。例えば、次のような事は「どの会社にもある」レベルの事象なのだ。
■「どの会社にもある」事象
●上司や先輩が厳しい
●ノルマがある
●残業がある
●遅刻すると怒られる
●目標を達成できないと厳しく怒られる
この程度であれば、どの会社も同じなので心配の必要はない。逆に、こうした理由でイヤになり、会社を辞めたとしても、他社でもほぼ同じ状況が待ち構えている。上記のような内容は、会社員として「最低限は乗り越えないといけない壁」と考えたほうがよい。
しかし、以下のような事象が見られる労働環境であれば、それはブラック企業の度合いが高いことを示している。注意して確認することが重要だ。
■「ブラック企業の可能性が高い要注意」の事象
●面接で説明された条件(配属、仕事内容、待遇など)が実態と全く違う
●社会保険に加入していない
●就業規則が存在しない
●研修内容がビジネススキルや技術的なものではなく、精神的修養
●研修期間、試用期間中に退職者が出る
●研修後の課題(試験やレポート、実技など)がクリアできないと解雇、もしくは不当な扱いを受ける
●定時より早い時間の出勤、サービス残業、休日出勤を強要される
●休暇をと取らせない
●給与遅配や現物支給がある
●自社製品を強制的に購入させる
●経営者の私的用途に社員が動員されたり、社費が費やされる
●経営者が出勤せず、遊んでばかりいる
●経営者の主観や気分で解雇、昇進、降格が行われている
●会社の仕事(接待、出張、部下慰労など)に自腹を切ることを
強要される
●社内暴力やイジメ、体罰がある
●セクハラ、パワハラが日常茶飯である
●賭博(賭けゴルフ、賭けマージャンなど)が日常的に行われている
●経営者への崇拝を強要される
●経営者や上司が社員の悪口を吹聴している
●密告を奨励している
●社員が精神的に抑圧され、言いたいことが言えない雰囲気である
●常に怒声が飛び交うような恐怖マネジメントである
●退職妨害(退職願を受理しない、必要書類を発行しないなど)がある ・個人情報の管理が甘く、
社員間の認識も薄い
このような場合、早急に役所や専門家などに話すことをおススメする。具体的には以下のような相談先が考えられる。
■報告・相談先
●身近な専門家に相談
●労働基準監督署に相談
●求人情報を掲載していたメディア(新聞、求人誌、求人サイトなど)に報告
●求人仲介者(ハローワーク、人材紹介会社、人材派遣会社など)に報告・相談
その上で、客観的な意見も参考にしながら、勤務継続するかどうかを考えてみてほしい。退職の準備を始めるのもよいだろう。早期離職によるデメリットもあるが、早めに判断し、自分の貴重な人生をムダにしないことも大切だからだ。
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「ブラック企業」の定義は、ひとり一人の価値観が決める
私は、ひとり一人が「自分にとってのブラック企業とは?」という判断基準を持つことができれば、業界研究や職種研究、企業研究で見極めるべきポイントが明確になり、自分が本当に働きたい会社を見つけたり、ブラック企業を回避する原動力になると考えている。
学生はもちろんだが、社会人経験を積んだビジネスパーソンでさえも、企業の実態を見抜くのは難しい。だからこそ、学生、社会人を問わず多くの人が以下のようなポイントで企業を選んでしまう。
「企業規模」
「知名度とブランドイメージ」
「評判」
「説明会やセミナーの雰囲気」
「社員の印象」
「オフィス立地、環境」
こうして見るとわかるが、いずれも企業の本業や就職した場合の仕事内容と全く関係ない「外的要因」ばかりだ。そして、これらは「他人の価値観によって編集された情報」でしかない。だからこそ、外的要因に惑わされることなく、ぜひ、自分の価値観を大事にしてほしい。
「仕事に何を見出すか」「何がやりがいなのか」など、人によって「自分が働く上で大切にしたいこと」は異なる。何を大事にするかは個々人が決めなければならない。
そう考えれば、逆のことも言える。すべてのリスク要因を認識した上で、自分が求めることを得られる環境ならば、あえて「ブラック企業」に身を置くという選択も「アリ」ということだ。そういう意味では「ブラック企業」の定義自体も、その人の価値観次第ということになる。
かつて、私自身も世間から「ブラック企業」と呼ばれる会社で働いていた。しかし、その会社が「ブラック企業だった」とはまったく思ってはいない。
なぜなら、私が起業することができて、思い描いた通りのビジネスを行い、ハッピーな人生を送れているのは、ブラック企業の勤務時代に得た経験があるからだ。仕事は確かにハードだった。しかし、それ以上に吸収できるものが非常に多かった。だから、今でも、この会社には大変感謝している。
就職・転職活動をしている人、これから活動を始める人も会社を選ぶにあたっては、「自分自身の価値観」と「企業の本質を見抜く眼」を持って納得できる選択をしてもらいたい。そして、少しでも多くの人が「働いても報われない」状態にならずに、ハッピーで得るものが多い会社で働いてほしいと願っている。
(新田龍・ブラック企業アナリスト)