「東洋ではワークライフバランスが常識だ」 アメリカ人の美しき思い違い 2013年5月17日 仕事のエコノミクス ツイート 米ビジネスインサイダーが、マッチョなビジネスパーソンを礼賛する記事を掲載している。見出しには「世の中の本当の成功者は、ワークライフバランスを実現している人々ではなく、働いている人たちだ」とある。 コラムニストのマーティ・ネムコ氏は「長時間労働を責めるな」といい、「週70時間働いて燃え尽きたなら、それはその仕事に携われるほど有能でなかったからだ」と断じる。 ネムコ氏が知る成功者でかつ燃え尽きていない人々は、新しいソフトウェア開発者や発明者、循環器専門医として、彼ら自身が重要と思うゴールに向かって邁進している。週末に子どもとモノポリーで遊んでいる人などいない。 GEの伝説的CEOのジャック・ウェルチも、家族のために時間を割くことが「いい人生をもたらす」と認めつつ、そのことによって職場において「昇進やキャリアパスのトップにたどり着くチャンスを減らす」と述べている。 あるIT企業の経営者も「家族や趣味を気にしだしたエグゼクティブは、年収が減り、そうでない人たちに取って代わられるだろう」と指摘しているという。成功者から見ると、ワークライフバランスを求める人は、ハードワークを楽しむことから逃げているだけ、というのだ。 確かに「働く」ことの意味は、収入を得るだけでない。仕事自体が楽しみであったり、働くことを通じて自己を成長させ、他者から認められることで生きがいを感じさせることもある。 カネと引き換えに苦痛を売り渡しているとしか思えず、仕事以外に生きがいを見出したがる人は、ある意味で幸せになり切れていないのかもしれない。 「遠くの芝生は青く見える」のはいずこも同じか この記事には公開3日間で、フェイスブックの「おすすめ」が1300、読者コメントが70以上ついている。興味深いのは、このような働き過ぎの現象がアメリカ特有のものと考えている読者が少なからずいることだ。 「いつもおかしいと思うんだけど、アメリカ人ってワークライフバランスの話が好きだよね。たぶん他の先進国と違って、ワークライフバランスがないからなんだろうね」 ある読者が残したこのコメントには、20人が賛意を表している。これには別の読者たちも「アメリカ人はカネを持っていることが勝者だと思っているからだろ」「東洋哲学では、すべてにおいて『バランス』が重要性なのは当たり前だからね」と応じている。 東洋に関する見方は、少なくとも日本には当てはまらない。どう考えても、美しすぎる思い込みである。「週70時間」を日本のモーレツサラリーマンに嘆いても、「え、普通じゃん!」と笑われるのではないだろうか。 日本社会に不満を抱く人たちは、二言目には「海外では」「それに比べて日本は」と言い始めるが、それは米国でも同じようだ。よく知りもしない遠くの芝生は青く見えるということだろう。
「東洋ではワークライフバランスが常識だ」 アメリカ人の美しき思い違い
米ビジネスインサイダーが、マッチョなビジネスパーソンを礼賛する記事を掲載している。見出しには「世の中の本当の成功者は、ワークライフバランスを実現している人々ではなく、働いている人たちだ」とある。
コラムニストのマーティ・ネムコ氏は「長時間労働を責めるな」といい、「週70時間働いて燃え尽きたなら、それはその仕事に携われるほど有能でなかったからだ」と断じる。
ネムコ氏が知る成功者でかつ燃え尽きていない人々は、新しいソフトウェア開発者や発明者、循環器専門医として、彼ら自身が重要と思うゴールに向かって邁進している。週末に子どもとモノポリーで遊んでいる人などいない。
GEの伝説的CEOのジャック・ウェルチも、家族のために時間を割くことが「いい人生をもたらす」と認めつつ、そのことによって職場において「昇進やキャリアパスのトップにたどり着くチャンスを減らす」と述べている。
あるIT企業の経営者も「家族や趣味を気にしだしたエグゼクティブは、年収が減り、そうでない人たちに取って代わられるだろう」と指摘しているという。成功者から見ると、ワークライフバランスを求める人は、ハードワークを楽しむことから逃げているだけ、というのだ。
確かに「働く」ことの意味は、収入を得るだけでない。仕事自体が楽しみであったり、働くことを通じて自己を成長させ、他者から認められることで生きがいを感じさせることもある。
カネと引き換えに苦痛を売り渡しているとしか思えず、仕事以外に生きがいを見出したがる人は、ある意味で幸せになり切れていないのかもしれない。
「遠くの芝生は青く見える」のはいずこも同じか
この記事には公開3日間で、フェイスブックの「おすすめ」が1300、読者コメントが70以上ついている。興味深いのは、このような働き過ぎの現象がアメリカ特有のものと考えている読者が少なからずいることだ。
「いつもおかしいと思うんだけど、アメリカ人ってワークライフバランスの話が好きだよね。たぶん他の先進国と違って、ワークライフバランスがないからなんだろうね」
ある読者が残したこのコメントには、20人が賛意を表している。これには別の読者たちも「アメリカ人はカネを持っていることが勝者だと思っているからだろ」「東洋哲学では、すべてにおいて『バランス』が重要性なのは当たり前だからね」と応じている。
東洋に関する見方は、少なくとも日本には当てはまらない。どう考えても、美しすぎる思い込みである。「週70時間」を日本のモーレツサラリーマンに嘆いても、「え、普通じゃん!」と笑われるのではないだろうか。
日本社会に不満を抱く人たちは、二言目には「海外では」「それに比べて日本は」と言い始めるが、それは米国でも同じようだ。よく知りもしない遠くの芝生は青く見えるということだろう。