「マタハラ」という新しい嫌がらせ登場 職場の事情を理解しないのは誰なのか? 2013年5月24日 仕事のエコノミクス ツイート 週刊ダイヤモンドの「セクハラより多い“マタハラ” 職場の妊婦への無理解が流産招き少子化解消を阻む」という記事が話題を呼んでいる。マタハラとは、働く妊婦を対象とした「マタニティ・ハラスメント」という嫌がらせを指す言葉だ。 ネットに公開された同記事についたフェイスブックの「いいね!」は、1日で1500を超えた。同社のツイッターアカウントも「ここまでの反響は相当珍しいです」と驚きを隠せない。 記事の冒頭には、妊娠中の女性が海外出張をし、腹部に激痛を感じてトイレに駆け込むと「血の塊がぽとっと落ちた」という衝撃的な描写がある。なぜそこまでして仕事に打ち込むのか。記事ではこんな女性たちのつぶやきを紹介している。 「権利を主張すれば職場で疎まれてしまう」 「妊娠のせいで自分の評価が下がるかもしれない」 「評価が下がれば出産し会社に復帰した後に別の職場に配置転換されてしまうかもしれない」 「妊娠が理由で退社には追い込まれたくない」 読者のツイッター投稿には、妊娠と仕事の両立を許さない会社への批判や怒りであふれている。「もうこんな国イヤ」などという言葉で、日本政府や社会への嫌悪感をあらわにするものもある。 読者の生の声を聞こうと、都内サービス業のマネジャーを勤める30代の既婚女性Aさんに取材依頼のメールを送った。すると即座に折り返しの電話があった。声が興奮している。 「これ、私も読みました…。ひどい話ですよね、ありえません。女性が妊娠、出産するということは、新しい命に責任を持つとともに、自分の命を危険にさらすことでもあるんですよ。それを仕事と天秤にかけるなんて、私には絶対考えられません」 Aさんには5歳の1人息子がいる。彼女の怒りの対象は、妊娠に理解のない上司や同僚ではなく、意外なことにトイレで「血の塊」を落としたという女性自身の方だった。 妊娠中にもしも不調を感じれば、「仮に上司に罵倒されても、会社をクビになっても、仕事に穴をあけて損害賠償を請求されても」、自分と子供の命を優先して仕事を休むに決まっている――。Aさんはそう言ってはばからない。 「なぜそこまでして、彼女は仕事にしがみついたのですか…。自分の収入や社内のポジションを失いたくないと、誤った欲が出てしまったんでしょうね。私からすれば、悪いのは会社ではなく、そんな判断をした彼女自身だと思います」 さらにAさんは「自分の体験に基づく推測でしかありませんが」と断った上で、「血の塊」は過労が原因ではなく「染色体異常など別の要因での流産ではないですか。そう願いたいです」と声をつまらせる。 ◇ 「妊娠した女性は一度退職すればいい」という意見も 別のIT企業の40代男性マネジャーBさんに尋ねたところ、ツイッターの反応を見て「マタハラ問題の責任を企業だけに押し付ける論調には正直腹立たしい」と明かしてくれた。 「女性スタッフの妊娠、出産への対応というのは、極めて実務的なマネジメント問題なんですよ。まず、社員が妊娠や子育てで休んでいる間だけ仕事の穴埋めをできる人、なんて都合のいい条件で働いてくれる優秀なスタッフなんて、簡単には見つかりません」 仮に見つかったとしても、頑張って穴を埋めてくれた非正規労働者のピンチヒッターに「じゃあ正社員が帰ってきたから。バイバイ」などと非情なことを言わざるを得なくなる。 そんな難しい条件で人を探すくらいなら、妊娠した正社員に最初から会社を辞めてもらった方が後釜を探しやすいし、周囲はすべて丸く収まる、というのが偽らざるホンネだ。 「ダイヤ(モンド)さんは『職場の妊婦への無理解』なんて煽りますけどね、実態は権利を盾にした逆ハラスメントみたいなことも起こっている。それを世間知らずの大学教授やNPOに批判されると、営利企業の苦労も知らないでとガックリしますね」 前出のAさんは20代の終わりに一度流産を経験し、二度目の妊娠が発覚した段階で正社員を辞めている。そして育児をひと通り終えた後、会社に打診し1年更新のマネジャーとして再雇用された。 「もちろん数週間で職場復帰する人もいるくらいなので、一律でなくてもいいですけど。いいじゃないですが、妊娠した女性は一度退職したって。それでも会社が必要とするのなら、また呼び戻せばいい。結局、正社員が優遇された立場を守るために、非正規労働者に『あなた方が犠牲になればいいんじゃない?』と言ってるようなものではないんですか」 Aさんは「そんなのおかしいですよ、不公平。許されるわけがない」と憤っている。
「マタハラ」という新しい嫌がらせ登場 職場の事情を理解しないのは誰なのか?
週刊ダイヤモンドの「セクハラより多い“マタハラ” 職場の妊婦への無理解が流産招き少子化解消を阻む」という記事が話題を呼んでいる。マタハラとは、働く妊婦を対象とした「マタニティ・ハラスメント」という嫌がらせを指す言葉だ。
ネットに公開された同記事についたフェイスブックの「いいね!」は、1日で1500を超えた。同社のツイッターアカウントも「ここまでの反響は相当珍しいです」と驚きを隠せない。
記事の冒頭には、妊娠中の女性が海外出張をし、腹部に激痛を感じてトイレに駆け込むと「血の塊がぽとっと落ちた」という衝撃的な描写がある。なぜそこまでして仕事に打ち込むのか。記事ではこんな女性たちのつぶやきを紹介している。
「権利を主張すれば職場で疎まれてしまう」
「妊娠のせいで自分の評価が下がるかもしれない」
「評価が下がれば出産し会社に復帰した後に別の職場に配置転換されてしまうかもしれない」
「妊娠が理由で退社には追い込まれたくない」
読者のツイッター投稿には、妊娠と仕事の両立を許さない会社への批判や怒りであふれている。「もうこんな国イヤ」などという言葉で、日本政府や社会への嫌悪感をあらわにするものもある。
読者の生の声を聞こうと、都内サービス業のマネジャーを勤める30代の既婚女性Aさんに取材依頼のメールを送った。すると即座に折り返しの電話があった。声が興奮している。
「これ、私も読みました…。ひどい話ですよね、ありえません。女性が妊娠、出産するということは、新しい命に責任を持つとともに、自分の命を危険にさらすことでもあるんですよ。それを仕事と天秤にかけるなんて、私には絶対考えられません」
Aさんには5歳の1人息子がいる。彼女の怒りの対象は、妊娠に理解のない上司や同僚ではなく、意外なことにトイレで「血の塊」を落としたという女性自身の方だった。
妊娠中にもしも不調を感じれば、「仮に上司に罵倒されても、会社をクビになっても、仕事に穴をあけて損害賠償を請求されても」、自分と子供の命を優先して仕事を休むに決まっている――。Aさんはそう言ってはばからない。
「なぜそこまでして、彼女は仕事にしがみついたのですか…。自分の収入や社内のポジションを失いたくないと、誤った欲が出てしまったんでしょうね。私からすれば、悪いのは会社ではなく、そんな判断をした彼女自身だと思います」
さらにAさんは「自分の体験に基づく推測でしかありませんが」と断った上で、「血の塊」は過労が原因ではなく「染色体異常など別の要因での流産ではないですか。そう願いたいです」と声をつまらせる。
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「妊娠した女性は一度退職すればいい」という意見も
別のIT企業の40代男性マネジャーBさんに尋ねたところ、ツイッターの反応を見て「マタハラ問題の責任を企業だけに押し付ける論調には正直腹立たしい」と明かしてくれた。
「女性スタッフの妊娠、出産への対応というのは、極めて実務的なマネジメント問題なんですよ。まず、社員が妊娠や子育てで休んでいる間だけ仕事の穴埋めをできる人、なんて都合のいい条件で働いてくれる優秀なスタッフなんて、簡単には見つかりません」
仮に見つかったとしても、頑張って穴を埋めてくれた非正規労働者のピンチヒッターに「じゃあ正社員が帰ってきたから。バイバイ」などと非情なことを言わざるを得なくなる。
そんな難しい条件で人を探すくらいなら、妊娠した正社員に最初から会社を辞めてもらった方が後釜を探しやすいし、周囲はすべて丸く収まる、というのが偽らざるホンネだ。
「ダイヤ(モンド)さんは『職場の妊婦への無理解』なんて煽りますけどね、実態は権利を盾にした逆ハラスメントみたいなことも起こっている。それを世間知らずの大学教授やNPOに批判されると、営利企業の苦労も知らないでとガックリしますね」
前出のAさんは20代の終わりに一度流産を経験し、二度目の妊娠が発覚した段階で正社員を辞めている。そして育児をひと通り終えた後、会社に打診し1年更新のマネジャーとして再雇用された。
「もちろん数週間で職場復帰する人もいるくらいなので、一律でなくてもいいですけど。いいじゃないですが、妊娠した女性は一度退職したって。それでも会社が必要とするのなら、また呼び戻せばいい。結局、正社員が優遇された立場を守るために、非正規労働者に『あなた方が犠牲になればいいんじゃない?』と言ってるようなものではないんですか」
Aさんは「そんなのおかしいですよ、不公平。許されるわけがない」と憤っている。