• 人気企業ランキングなんて無視!? 経営コンサル会長「未成熟の仕事を選べ」

    新聞、雑誌が発表する「就職人気企業ランキング」。あれは何のためにあるのだろうか。おそらく優秀な人材を集めたい企業が「ウチの会社はこんなに人気があるんですよ」とアピールするためだろう。

    一流大学のエリートというのは単細胞なので、「この会社が超人気」とか「この会社が最難関」と言われると、闘牛のように突進していく。自分がやりたい仕事かどうかは関係なく、とにかく「オレに突破できないわけがない」と思い込むのだ。ランキングとは、そんなシューカツ生を煽る「赤い布」みたいなものなのである。

    もちろん入社前に人気の高い企業に、将来性や成長性があるとは限らない。終戦後には石炭会社や繊維会社が人気だったが、いまでは見る影もない。バブル期には銀行や証券に人材が殺到したが、高額のボーナスが出たのは入社数年後までだった。

    外資系コンサルタント会社、ローランド・ベルガー会長の遠藤功氏も「人気になった仕事は要注意」とプレジデント(9月16日号)で警告する。未成熟で確立していない仕事だからこそチャンスなのであって、「人気稼業」となってからでは競争に打ち勝つのは容易ではないからだ。

    会社や業種もそうだろうが、仕事にも「成熟度」というものがある。遠藤氏が経営コンサルタントという仕事を続けられたのも、入社当時に「まだ未成熟段階の仕事」を選択しようとしたからだという。

    人気ランキング上位の企業は、成熟度がかなり高まっていることが予想される。少なくとも「未成熟段階の仕事」ではない。田舎のお父さんやお母さんを安心させたのも束の間、会社が傾き始めて社内の雰囲気が暗くなり、仕事も退屈になった上に給料が下がり始める。きっと「こんなはずじゃなかった」と思うはずだろう。

    自分がごく一握りのエリートでもなければ、わざわざ競争が激しく、かつ成熟した会社に挑む必要はない。むしろ頭をフルに使って「逆張り」の精神を発揮するくらいでなければ、学歴の差を埋めることはできないのだ。

    「安定」「やりがい」「報酬」はトレードオフ

    また遠藤氏は、職業選びにおいて「安定」「やりがい」と「報酬」の3条件は、どれかを優先すればどれかが犠牲になるトレードオフの関係であると言う。安定を勝ち取ったと思えば、やりがいと報酬は犠牲になり、やりがいを追求すれば、安定と報酬はついてこない。

    報酬のみを考えれば、安定とやりがいは低くてもしようがないということになるのだろう。この関係性を、40歳を前にして認識した人間がいる。都内の外資系大手IT企業に勤めるAさんだ。年収は約1000万と恵まれた生活だが、自分のキャリアに思い悩んでいる。

    Aさんが就職した1996年当時、新卒就職人気ランキングの上位にはNECやパナソニック、ソニーが上位に並び、彼が勤める会社も名を連ねていた。いまではその会社のほとんどは、ランキングに影も形もない。

    Aさんは現在プロジェクト・マネージャーのポジションだが、社内には同じポジションに多くのベテラン社員がおり、完全に「上が詰まった状態」である。これでは会社は立ち行かない。55歳になれば、正社員はすべて「年収300万円台前半」に落とされるか、「成果主義型の契約社員」のどちらかを選択させる人事制度が待っている。

    Aさんには選択まであと15年あるが、「成果主義型」で高収入を維持できる自信はない。いまの仕事は「報酬」は高いが、「やりがい」は少なく実力を磨く場にもならない。「安定」していると思っていたが、実はそれも定年までというわけではなかった。

    かといって今、同じ条件の会社に転職できるほどのキャリアもない。もっと早く一時的な「報酬」を犠牲にして「やりがい」と実力磨きに専念し、実力で「安定」を勝ち取っておけばよかったのかもしれない。しかし、居心地の良いぬるま湯から、氷の海に飛び込むことは難しかったのだという。人間の習性を考えれば、最初に「安定」や「報酬」を優先して就職先を選ぶのは、かえってリスクなのかもしれない。

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