• 「無能でサボる人ほど報われる」 ズルさだけが身につく市役所の仕事

    雇用が安定している職場として、就活生に根強い人気の公務員。だが実際には人口減による税収不足などにより、今後はリストラが必要な自治体が出てくるおそれもある。そんな不安もあってか、人口が多く財務力のある自治体を特集する業界本も出ていたりする。

    Aさん(男性・27歳)は、そんな特集に載ることもある関西の優良自治体B市の職員だ。地元の私大を卒業後、教材販売会社の営業マンとして勤務したが、そこはパワハラやサービス残業だらけのブラック職場だった。やむなく2年ほど働きながら資格学校に通い、ようやく公務員という安定職を手に入れた。

    ところが最近、仕事を変えようかと悩んでいるのだという。自分の頑張りが報われない程度なら、まだ我慢もできる。そもそも自分の頑張りで出世や報酬を勝ち取る世界についていけず、公務員に逃げてきたようなものだからだ。

    しかし、まさか「あからさまに無能力でサボる人ほど報われる」という超理不尽な世界が待っているとは予想もしてなかった。自分もマネすればいい、と言えばそれまでだが…。

     市民相手の窓口に「不快手当」が出た時代も

    彼の職場は市民局だ。住民票の発行や助成金の支給に加え、生活保護や障害年金の手続きなど仕事は多岐にわたる。「担当が分からない仕事は市民局に任せておけ」という風潮もあって、業務量は予想以上に多かった。

    仕事の内容は「誰にでもできる定型業務で、やりがいはない」という。腹が立つのは仕事のやり方を工夫して効率よくこなした者より、工夫せずダラダラ夜遅くまでやった者の方が確実に収入が高くなることだ。

    こういう「残業長者」は民間にもいるが、いつまでも淘汰されないわけにはいかない。ところがB市の場合は、そんなダラダラ職員でも入所約12年で係長に昇格できる。給与は前年の1.5倍、それも毎年基本給が上がった末での話である。

    「ウチは賞与が年5か月弱と全国でも高い方なんですが、バブルの頃は手当がもっとついたそうです。窓口は市民の相手で大変だから『不快手当』がついたとか。ハナから市民をバカにしてますよね(笑)」

    B市の職員の平均年収は、42歳で700万円。27歳のAさんの倍だ。これが50代になると800万円を超え、中には1000万円を超える職員も出てくる。

    とはいえAさんの給与は、彼らほど上がるとは期待できない。50代はいまだに月1万円の割合で毎年ベースアップするが、Aさんは月額7000円。下の代はさらに削られる予定だ。「ベースアップなんてあるだけマシ」と言われればそうだが、不公平感はぬぐえない。

     デキの悪い職員ほど楽に稼げるシステム

    公務員はめったなことでは退職に追いやられない。ミスや不祥事を起こした職員も厳しい処分を受けず、市民との接点から遠い職場へ追いやられるだけなのも腹が立つ。デキの悪い職員ほど、楽に稼げるシステムなのだ。

    「窓口業務で問題を起こした人は、公用車の鍵の管理や納税用紙のチェックなどに回されます。仕事が少ないので一日中パソコンで動画を見ていたり、支所に行ってくると告げて行方不明になる職員もいます。それでも年収800万円ですからね」

    若手の見本となるべき中年層に、なぜか不祥事が多い。助成金の支払いミスをしたり他の職員からカネを盗んだり、酔って市民を殴ったりと枚挙にいとまがない。

    市長が幹部を集め叱責したが、民間と違って業務に具体的な目標がなく、「上司が部下を監督するインセンティブがない」ために有効な対策は講じられていない。

    業界本には「住民や企業が増える自治体は工夫次第でチャンス」と書かれているが、実際には「若い世代が多くても収入が低く、子ども手当など市の負担の方が多い」という。

    「彼らが税収面で貢献してくれるのは、40代になりお給料が上がってからの話。人口が増加傾向にあるからといって、市の財政に余裕が出るとは限らないんです」

    「総勢50人の部署で毎年150人辞める」かつてのブラック職場に比べれば、今の方がずっとマシだ。しかし仕事を通じて成長できず、ズルさだけが身につくような職場が、こんなにもやるせないものだとは思わなかった。残業嫌いのAさんはベテラン職員の2倍速で仕事をこなしつつ、また民間で働くのも悪くないかなと思い始めている。

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