• 居酒屋「ポエム」は「搾取のため」か? NHK報道に主催者が「残念」

    劣悪な環境下で従業員を働かせる「ブラック企業」が批判されるようになって久しい。そんな中、NHKが「夢」「仲間」といった「ポエム(詩)」のような言葉、若者が働く飲食店業界などで蔓延する現状を紹介し、物議を醸している。

    1月14日のNHK「クローズアップ現代」で、「あふれる”ポエム”?! ~不透明な社会を覆うやさしいコトバ~」という特集が放送された。

    ステージで絶叫「夢があるから熱くなれる!」

    番組では、「煙にまかれてみんなハッピー」という店主の熱い思いの書かれた焼き肉店の看板や、地方都市の「子どもたちのポケットに夢がいっぱい、そんな笑顔を忘れない古都人吉応援団条例」(熊本県人吉市)という条例が紹介された。

    最近、こうした「前向きで優しい言葉だけど、意味がちょっと分からない詩(ポエム)のような言葉」が増えていると指摘する。

    特に強烈なのが、「居酒屋甲子園」というイベントだ。居酒屋経営者らがつくるNPOが、過酷な労働環境のイメージを変えるために2006年から行なっている。

    毎年、「日本一」の居酒屋を目指して、1000以上の居酒屋がエントリー。決勝では、サービス内容などの審査を突破した数店舗の従業員が、会場に集まった5000人の前で、居酒屋で働く「夢と誇り」についてプレゼンする。

    「夢は一人で見るもんじゃない! みんなで見るものなんだ! 人は夢を持つから熱く! 熱く生きれるんだ!」
    「今の自分は嫌だ!みんなから愛される店長になりたい!」

    と登壇者が絶叫する内容が紹介された。

    今、こうした「○○甲子園」は、居酒屋だけでなく、介護士やパチンコ店員、歯科助手などの業界でも開催されているのだという。

    居酒屋甲子園を2連覇した九州の外食チェーンでは、企業理念が「BE HAPPY」。客を幸せにすることで社員も幸せになろう、という意味だ。さらに店の皿やトイレの壁など、いたるところに「感謝の心に幸せ宿る」といった前向きな「ポエム」が書かれている。

    1日16時間労働、平均年収250万円でも「楽しい」

    従業員はみなやたらハキハキとしているが、番組によるとこのチェーンの労働環境はかなり厳しい。1日の労働時間は16時間になることもある。さらに入社間もない社員の平均年収は250万。それでも従業員(27歳・男性)は「楽しい」と語る。

    給料日には給料と一緒に「まだまだ一緒に明るい未来を作っていくぞ!」といった上司からの手紙が添えられる。これが嬉しいのだそうで、また来月頑張る気持ちが湧くのだという。

    こうした番組内容は、ネット上でも注目を集め、

    「『仲間のため』とかワンピースみたいだな」
    「やりがい搾取というか、連帯感搾取という感じだ」
    「まるでヒットラーの手法を連想してしまったこれは俺の勘違いなのか?」

    といった声が挙がった。従業員がポエムで一致団結して慰め合う様子に対し、

    「それだけの意気込みと団結力があるならば、労働組合を作り、雇用環境の改善に努めるべきであろう」

    という指摘もある。

    居酒屋甲子園、放送内容に不満「対応を協議中」

    放送を受け、NHKの取材に協力した居酒屋甲子園は15日、理事長名義で関係者への「報道に関するお詫び」という文をHPに掲載した。

    業界の地位向上を目指して居酒屋甲子園の活動を行なってきたが、「ポエムの力で説明放棄」「何かを隠蔽する」といった「若者をごまかすための言葉遊び」と報道されたと主張する。

    「このような報道になったことは誠に残念であります。居酒屋甲子園に参加頂いた参加店舗様およびサポーター企業様、業界活性化の他団体の皆様、関係者の皆様には、多大なるご迷惑をお掛けすることになりましたことを、心からお詫び申し上げます」

    今後の対応については「現在協議中」だとしている。

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