40代に「転職の追い風」 キーワードは「業種間移動」「専門スキル」 2014年2月4日 仕事のエコノミクス ツイート 守り一方と思われてきた40代に、「転職の追い風」が吹いている。日本人材紹介事業協会のデータでも、36歳以上の転職成功実績の伸びが窺える。 人材紹介大手3社の2012年度の実績は、35歳以下が前年度比107%だったのに対し、36歳以上は同128%と顕著に差が出ている。 40代ミドル層に採用ニーズが高まっている背景には、産業構造の著しい変化がある。IT業界やサービス業の「21世紀型産業」では、急成長がゆえの人材不足や、「育成体制が不十分」といった課題を抱えている。 一方で、製造業や出版業といった20世紀型産業は、成長性が乏しく雇用不安がある。そこで、社会人経験豊富な40代の人材を旧型産業から移転し、21世紀型産業で不足する人材を補完しようとしているようだ。 「ゼネラリスト育成の異動」を拒否する人も しかし、異なる業界間の人材移転には、ミスマッチは生じないのだろうか。あるヘッドハンターによると、21世紀型産業が求めているのは、社会人経験で培われる高度な能力を持つ人材であり、必ずしも業種・業界に特化したものではないという。 転職サイト「リクナビNEXT」を運営するリクルートキャリアでも、利害交渉能力・変革推進能力・コーチング能力・問題解決能力といった「いぶし銀スキル」を求める企業が増えていると指摘。経験豊富な人材の転職を「銀たま(銀の卵)採用」と呼んで、2014年のトレンドになると見ている。 ただ、有利な転職をするためには、やはり「職種」の専門性がモノを言うことが少なくないようだ。AERA(アエラ)14年2月10日号では、転職した40代の声を多数紹介している。 旅行会社や商社、IT、化粧品会社など業種をまたぎ、計6社を渡り歩いた41歳の男性は、転職の動機について「プロとしてのキャリアを積み重ねようという思いから」だったと明かす。 「日本の会社はゼネラリストを育てようと、職種を変える異動を命じますが、それではスペシャリストにはなれません。そんな異動の雰囲気を察知したら、人材会社から情報を入手し、人事畑の転職につなげてきました」 収入1000万円ダウン、離婚でも「ラッキー」 とはいえ、転職によって成功を手にした人ばかりではない。AERAが35歳以上の転職者240人に聞いたアンケートでも、転職して年収が「上がった」という人は38.8%。「下がった」という人も37.6%いる。 たとえば、25年間勤めた大手信託銀行から、農業生産法人の管理職に移った男性(48)は、傍から見ると悲劇的な結果を迎えてしまった。 「1400万円あった年収は1000万円ダウン。離婚し、子どもの養育費は貯金で賄う生活です」 しかし、この男性は「後悔はしていません」と言い切る。「組織を重んじるより自己責任で生きてみたかった私にとっては(転職先は)『ラッキー』な場なのです」と言い、あくまでも転職を成功と捉えているようだ。 彼の転職の理由は、前職での「マネジメントスタイルへの違和感」だという。銀行では「案件を部下に任せる」というスタイルが評価されず、鬱屈した思いを抱えていた。人生の後半になって「自分の好きな生き方をしたい」というやむにやまれぬ欲求が高まってしまったのかもしれない。 あわせてよみたい:「40代の年収減」が顕著に
40代に「転職の追い風」 キーワードは「業種間移動」「専門スキル」
守り一方と思われてきた40代に、「転職の追い風」が吹いている。日本人材紹介事業協会のデータでも、36歳以上の転職成功実績の伸びが窺える。
人材紹介大手3社の2012年度の実績は、35歳以下が前年度比107%だったのに対し、36歳以上は同128%と顕著に差が出ている。
40代ミドル層に採用ニーズが高まっている背景には、産業構造の著しい変化がある。IT業界やサービス業の「21世紀型産業」では、急成長がゆえの人材不足や、「育成体制が不十分」といった課題を抱えている。
一方で、製造業や出版業といった20世紀型産業は、成長性が乏しく雇用不安がある。そこで、社会人経験豊富な40代の人材を旧型産業から移転し、21世紀型産業で不足する人材を補完しようとしているようだ。
「ゼネラリスト育成の異動」を拒否する人も
しかし、異なる業界間の人材移転には、ミスマッチは生じないのだろうか。あるヘッドハンターによると、21世紀型産業が求めているのは、社会人経験で培われる高度な能力を持つ人材であり、必ずしも業種・業界に特化したものではないという。
転職サイト「リクナビNEXT」を運営するリクルートキャリアでも、利害交渉能力・変革推進能力・コーチング能力・問題解決能力といった「いぶし銀スキル」を求める企業が増えていると指摘。経験豊富な人材の転職を「銀たま(銀の卵)採用」と呼んで、2014年のトレンドになると見ている。
ただ、有利な転職をするためには、やはり「職種」の専門性がモノを言うことが少なくないようだ。AERA(アエラ)14年2月10日号では、転職した40代の声を多数紹介している。
旅行会社や商社、IT、化粧品会社など業種をまたぎ、計6社を渡り歩いた41歳の男性は、転職の動機について「プロとしてのキャリアを積み重ねようという思いから」だったと明かす。
収入1000万円ダウン、離婚でも「ラッキー」
とはいえ、転職によって成功を手にした人ばかりではない。AERAが35歳以上の転職者240人に聞いたアンケートでも、転職して年収が「上がった」という人は38.8%。「下がった」という人も37.6%いる。
たとえば、25年間勤めた大手信託銀行から、農業生産法人の管理職に移った男性(48)は、傍から見ると悲劇的な結果を迎えてしまった。
しかし、この男性は「後悔はしていません」と言い切る。「組織を重んじるより自己責任で生きてみたかった私にとっては(転職先は)『ラッキー』な場なのです」と言い、あくまでも転職を成功と捉えているようだ。
彼の転職の理由は、前職での「マネジメントスタイルへの違和感」だという。銀行では「案件を部下に任せる」というスタイルが評価されず、鬱屈した思いを抱えていた。人生の後半になって「自分の好きな生き方をしたい」というやむにやまれぬ欲求が高まってしまったのかもしれない。
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