• 高度成長期物件が「リノベ」で人気 高島平団地とNTT電話局の試み

    2014年3月18日の「ガイアの夜明け」(テレビ東京)は、リノベーションで成功している2つの事業を紹介していた。日本の高度経済成長期に建てられた古い建物を、今どきの視点で造り変えてビジネスチャンスにつなげているという。

    東京・板橋の高島平団地を代表とするUR賃貸住宅(旧公団住宅)は、建設当時こそ若い夫婦のあこがれの的だった。それが今や40年以上たって老朽化し、居住者も高齢化。リフォームしても、なかなか若者の借り手はつかないのが現状だ。

    「無印良品」がレトロでオシャレに改造

    そこでUR都市機構は、若年層を呼び込むべく「無印良品」に改装デザインを依頼した。無印良品は素材を生かしたシンプルなデザインの生活雑貨や家具が人気で、20代~30代の熱烈なファンが多い。

    その商品を売る器をつくる意味も兼ねて、2002年に「ムジハウス」という住宅販売・開発会社を設立。独特のデザインで、累計1万棟以上を売るヒット商品も生んでいる。

    高島平団地の改修は、「良いものは残し、ダメなものはシビアに変えて、無印らしさを出していく」というコンセプト。ダンボールをむき出しにしたふすまなど、素材を生かしつつ洗練されたデザインに仕上がっていた。

    見学に来た若い夫婦は、「レトロな感じでオシャレ」「あの団地がどうするとこんな雰囲気になるんだろう」とその変貌ぶりに感激していた。設計を担当したムジハウスの豊田輝人(37歳)さんは、手応えをこう語る。

    「(古いけれど新しいデザインで)今までにない空間や部屋を魅力的に感じていただいた。新しい暮らしのスタンダードがつくれるのではないかと思っています」

    サイズも雰囲気も、部屋にぴったり合った、無印の家具や生活雑貨もモデルルームで展示しており、その場で商品も買って貰おうという戦略だ。

    初期コストをかけても、大きな利益が見込める

    神戸にある結婚式場「芦屋モノリス」は、もともとは80年前に建てられた電話局だった。大事なインフラを守るために独自の耐震性があるが、交換機の縮小化で柱のない広い空間が残った。

    この空間は、披露宴会場として最適だ。建物全体に重厚感と味わいがあり、見学に来たカップルも「アンティークというか、クラシックな感じが良かった」と、一目ぼれの様子だった。

    このような古い建物を積極的に活用しているブライダル企業「ノバレーゼ」は、不調が続く業界でも急成長している。改修費の一例は2億5千万円で、月々の賃料も支払う。しかし建物自体に強力な付加価値があって、全国平均より60万円以上も高額でも、半年先まで予約でいっぱいだという。コストはかかっても、大きな利益が見込めるのだ。

    元電話局は、NTT西日本の所有物。賃貸にすれば長期的な利益が得られるという事で売却はしない。高島平団地も、2DKの家賃を7万円から8万7千円にアップしたが、「無印」にしたことで希望者の倍率は7倍に膨れ上がった。

    歴史ある建物が捨て置かれるのではなく、新しい生活や人生の記念の場所として生まれ変わるのは誰にとっても幸せなことだ。このような資産有効活用の動きは、今後も全国的に広がって欲しいものだ。(ライター:okei)

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