「余剰人員は早期退職でいなくなれ!」 そう恨んでいるのは誰なのか 2014年3月22日 仕事のエコノミクス ツイート ジャーナリストの吉田典史氏が日経ビジネスアソシエの記事で、「40代、50代のオジサン・オバサンは早期退職でいなくなってくれ!」というセンセーショナルな見だしで、会社の「余剰人員」を批判している。 ただ、中身を読んでみると、批判の矛先は意外なことに中高年に向かっているのではなかった。年長者をそういう言葉でけなしている「仕事ができるつもり」の若者たちに対して、なのだ。 フリーから見ると「あの仕事ぶりでボーナスは詐欺」 「私はフリーで仕事をしていますが、30代前半までの編集者(出版社の正社員)と仕事をすると、率直なところ、苦痛を感じます」 クライアントでもある出版社の担当者に対し、吉田氏はこう厳しい目を向ける。 彼の周りにいる数十人の非正規社員の編集者やライター、デザイナーも、ほぼすべてが、若手社員の編集者を「あの仕事ぶりで、ボーナスまでもらうのは詐欺みたい」などと批判しているという。 接点を持った出版社の社長たちも、30代前半までの正社員の編集者を「給料に見合った働きをしていない」「(面接で)騙された。詐欺に遭った」「給料泥棒」と言っているそうだ。 これは出版社だけの話ではなく、記者として取材する際にも、広報部や人事部の窓口となる正社員の2人に1人は「相当に苦労をさせられる」と書いている。こうした20代、30代も、現時点での成果以上の給料を貰っているという意味では「余剰人員」といっていい。吉田氏は彼らを、こう叱咤している。 「40代、50代のオジサン・オバサンを批判する以前に、後から入ってくる後輩から『余剰人員の、オジサン・オバサン・ジュニア』と軽くあしらわれることになる」 「一応は給料を貰っているのですから、もっと早く、もっとレベルの高いところに到達すべき」 終身雇用の世界に「余剰人員」の概念はない? もちろん、すべての働く若者が「給与泥棒」というわけではない。吉田氏が接することの多い出版社の編集部や、大手企業の本社勤務の正社員に、特に多いだけという可能性もある。 そもそも、中高年に対し「早期退職でいなくなってくれ」と恨みを募らせている人は、恵まれた正社員ではなく、安い給料で仕事を押し付けられている非正規労働者の方が多いのではないか。 終身雇用・年功序列の恩恵を受けている人たちには、「余剰人員」という概念がなくても不思議ではない。仕事をしてもしなくても、雇用と給与が安定的に守られるのが当然だからだ。 そう考えると、若手正社員の編集者を「詐欺みたい」と批判するのが、数十人の非正規社員やフリーランスであるという話も納得できる。 もらいすぎの「デキない正社員」に対する保護が減り、「デキる非正規やフリーランス」への発注単価が上がれば、公平性が高まったといえるのだろう。 そうなって初めて、日々の働きや労働、実績、成果以上の給与をもらう「余剰人員」が根絶されることになる。しかし、そのような世界は、いつ、どういうきっかけで訪れるのだろうか。(ライター:末広馬ノ介) あわせてよみたい:非正規「社会における恋愛の条件がキツい!」
「余剰人員は早期退職でいなくなれ!」 そう恨んでいるのは誰なのか
ジャーナリストの吉田典史氏が日経ビジネスアソシエの記事で、「40代、50代のオジサン・オバサンは早期退職でいなくなってくれ!」というセンセーショナルな見だしで、会社の「余剰人員」を批判している。
ただ、中身を読んでみると、批判の矛先は意外なことに中高年に向かっているのではなかった。年長者をそういう言葉でけなしている「仕事ができるつもり」の若者たちに対して、なのだ。
フリーから見ると「あの仕事ぶりでボーナスは詐欺」
クライアントでもある出版社の担当者に対し、吉田氏はこう厳しい目を向ける。
彼の周りにいる数十人の非正規社員の編集者やライター、デザイナーも、ほぼすべてが、若手社員の編集者を「あの仕事ぶりで、ボーナスまでもらうのは詐欺みたい」などと批判しているという。
接点を持った出版社の社長たちも、30代前半までの正社員の編集者を「給料に見合った働きをしていない」「(面接で)騙された。詐欺に遭った」「給料泥棒」と言っているそうだ。
これは出版社だけの話ではなく、記者として取材する際にも、広報部や人事部の窓口となる正社員の2人に1人は「相当に苦労をさせられる」と書いている。こうした20代、30代も、現時点での成果以上の給料を貰っているという意味では「余剰人員」といっていい。吉田氏は彼らを、こう叱咤している。
終身雇用の世界に「余剰人員」の概念はない?
もちろん、すべての働く若者が「給与泥棒」というわけではない。吉田氏が接することの多い出版社の編集部や、大手企業の本社勤務の正社員に、特に多いだけという可能性もある。
そもそも、中高年に対し「早期退職でいなくなってくれ」と恨みを募らせている人は、恵まれた正社員ではなく、安い給料で仕事を押し付けられている非正規労働者の方が多いのではないか。
終身雇用・年功序列の恩恵を受けている人たちには、「余剰人員」という概念がなくても不思議ではない。仕事をしてもしなくても、雇用と給与が安定的に守られるのが当然だからだ。
そう考えると、若手正社員の編集者を「詐欺みたい」と批判するのが、数十人の非正規社員やフリーランスであるという話も納得できる。
もらいすぎの「デキない正社員」に対する保護が減り、「デキる非正規やフリーランス」への発注単価が上がれば、公平性が高まったといえるのだろう。
そうなって初めて、日々の働きや労働、実績、成果以上の給与をもらう「余剰人員」が根絶されることになる。しかし、そのような世界は、いつ、どういうきっかけで訪れるのだろうか。(ライター:末広馬ノ介)
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