• 【懲戒処分ウォッチ】労基署よ、お前もか! セクハラ被害女性に上司が「追い撃ち」

    ブラック企業を取り締まる労働基準監督署自身が「ブラック企業」でした――。今回紹介するのは、そんな笑えないケースだ。

    熊本労働局は3月17日、管轄する労基署の50代の男性次長を戒告処分とした。過去にセクハラ被害を受けた女性職員に対し、「加害職員が人事異動で戻ってきたら(女性には)辞めてもらう」と発言し、二次的な被害を与えたという。

    職場名の未公表は「被害者のため」なのか

    女性は昨年、30代の男性職員から髪を触られたり、いやらしい言葉を言われたりするなどのセクハラを受けた。女性の訴えを受け、この男性は異動、訓告処分となった。

    この女性は有期雇用で働いていたため、今年4月に再雇用について次長に相談すると、「加害職員が人事異動で戻ってきたら、セクハラがまた起きるかもしれない」などと言われたという。

    「またセクハラが起きるとみんなが困るから、あなたが辞めてね」、あるいは「それでも居座るなら、またセクハラするよ」という意味にも取られかねない。セクハラどころか、強要や脅迫ともいえる内容だ。

    悪いのは加害者の方なのだから、人事異動で戻らせないのが筋だ。しかし次長の心の中には、「非正規のくせに、かわいい部下を懲戒に追い込んだ張本人め。辞めるのはお前だ!」といった苛立ちを抱いていたのかもしれない。

    記者会見した峯作二郎局長は「セクハラ防止を指導するべき立場の労働局で起きたのは痛恨の極みだ。県民の皆さんにおわびする」と謝罪した。

    また、発言時に同席していた50代の男性課長と、管理責任のある署長も文書で厳重注意したと発表した。どの労基署かは「被害者と加害者が特定される」と公表していない。

    しかし、被害者はともかく、加害者の名前は公表してもいいのではないだろうか。身内である加害者を、社会的に守ることが優先されていると思えてならない。

    「セクハラで戒告」は軽すぎではないか

    そもそも、30代男性職員の処分にも疑問が残る。女性が受けたセクハラについて、毎日新聞の報道では「労基署の男性職員に”度々”髪を触られるなどした」とある。人事院の「セクシャルハラスメントに関する国家公務員の懲戒処分の標準例」によると、

    「相手の意に反することを認識の上で、わいせつな言辞等の性的な言動を繰り返した職員は、停職又は減給。この場合に、わいせつな言辞等の性的な言動の執拗な繰り返しにより、相手が強度の心的ストレスの重積による精神疾患に罹患したときは、免職又は停職」

    と記されている。これを戒告処分で済ませるというのは、甘すぎる感が否めない。

    2人の処分は、ともに戒告だが、これは所属長に呼び出されて直接説諭される程度のもので、公務員の職務上の義務違反に対する懲戒処分の中では最も軽いものだ。セクハラごときで将来が絶たれるのは気の毒、という考えはないだろうか。

    加害者の50代次長の発言からは、有期雇用の被害者を「ヨソ者」とみなし、平気で排除しようとする意識が垣間見られる。非正規職員は正社員の犠牲になっても仕方がないのか。労基署がこんな意識では、ブラック企業やブラック上司の摘発なんて到底無理なのではないかと、暗い気持ちになってしまう。(懲戒処分ウォッチャー・ムライセツオ)

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