• 「始業30分前に出社し、新聞を読んでなさい」と言う経営者は「ブラック」なのか?

    ライフネット生命の代表取締役社長・岩瀬大輔氏が4月1日、自らのブログで新入社員に対するメッセージを書いている。この内容が「ブラック企業」的ではないかと、ネットで大きな話題になっている。

    同社にはこの日、新卒1人を含む4人の新入社員が入社したようだ。岩瀬氏は「入社2日目の明日からできる、簡単なこと」として、彼らにこんなメッセージを送った。

    「毎朝、定時より30分前にきっちりした身なりで出社し、新聞を読んでなさい」

    コツコツきっちりできる人は「仕事を任せやすい」

    時間を正確に守ること。いつも清潔な格好をすること。皆がやるべきだと思っている「新聞を読む」という行為を着実に毎日こなすこと。これを1年間欠かさずにできれば、「社内における信頼は確実に高まっていることだろう」と岩瀬氏は指摘する。

    こうした「簡単なこと」を毎日コツコツきっちりできる人は、たとえ「万が一、頭の回転が早くないとか、創造性に欠けるといった短所」があっても「色々と使いようがあるので、仕事を任せやすい」からだ。

    一方で、実際に1年間通してできる人は「100人に1人ではないだろうか」と予想し、「騙されたと思って、やってみませんか?」と締めている。

    この岩瀬氏の意見には、IT系企業の幹部クラスから賛同の声があがっている。nanapiの代表取締役社長・古川健介氏もブログで賛成し、上司が「早く来て新聞読んでるだけで偉いと思う人」なのであれば、「さくっとハックして(編注:要領よくこなして)評価スコアあげておくほうが、楽」だという。

    「信頼」を勝ち取っておけば、やりたい仕事をアピールしやすい、有給休暇が取りやすいなどのメリットがあるということだ。LINE執行役員の田端信太郎氏も、フェイスブックで「信頼醸成ゲームと思えば手段はなんでもええ」と同意している。

    投資家のやまもといちろう氏も、多少揶揄しながらも「できることから取り組んで欲しいといいたい気持ちは分かります。まず素振りしてちゃんとやってるところ見せてみろよという話じゃないでしょうか」と賛成の姿勢だ。

    バカらしいことをバカにしない人が出世する?

    こういった幹部層の賛同とは裏腹に、「使われる側」のネットユーザーからは激しい不満が上がっている。「定時より30分前」という部分には、早出のサービス残業を強制するのか、という批判があった。

    「きっちりした身なり」に対しては、仕事に身なりは重要じゃない、「新聞を読んでなさい」には、今更なぜ紙の新聞か、スマホやタブレットじゃダメなのか、なぜ会社で読むのか、といった調子だ。エスカレートし、こう憤る人もいた。

    「社長がこう書いたら社員は従わざるを得ない。ほとんど業務命令。このご時世にサービス残業を公開して命令するなんて、なかなか凄い会社だと思う」
    「日本的労務管理だな。契約に書いてないことを次々やらせていくのはブラック企業のはじまり」

    ただし古川氏の「ハック」、田端氏の「ゲーム」という言葉から感じられるように、岩瀬氏も擁護する企業幹部たちも、この行為自体が生産性を高めるのではなく、何か別なものから身を守る要領を説いているようにも読める。

    世の中には色々な人がおり、必ずしもイケてる人ばかりではない。入社したばかりの新入社員はスキルも低いし、若いころは大志を抱いていても年齢を重ねてイケてないオジサンになる人も多い。

    イケてない人に足を引っ張られないことが、会社という社会で快適に生きていくためには必要だ。そんなバカらしいことをバカにしないことが、意外と大事なものなのだ――。擁護派の出世ぶりは、そんなことを証明しているのではないだろうか。ライフネット生命新卒1年目のある新人は、こうツイートしている。

    「かわいそうとか新聞意味ないとか色々言われてますが、当たり前のこととして、とにかくやります。意味があるか無いかはそれから判断」

    (ライター:末広馬ノ介)

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