• 就職留年10万人? 読売報道に社会人「結構なご身分ですなぁ」「早く死ぬ気で働けよ」

    読売新聞が全国の大学に調査を行なったところ、昨年5月段階で卒業学年に在籍していた学生のうち、今春卒業しなかったのは全体の16.3%にあたる10万2810人にのぼったという。昨年より3445人増加し、10万人を超えたのは2年ぶりだ。

    読売はこの結果を元に、「不本意な内定より留年…『卒業せず』10万人超」という見出しで報道。ネットでは、就職留年する学生に対し厳しい意見が相次いだ。

    「就職留年するような無能など大企業が採るか」
    「留年したところでどれだけの成長が見込めるんだよ」
    「いやいや、惰性で大学行くくらいなら早く死ぬ気で働けよ」

    有名大卒の成功者は「合わなけりゃ転職すればいい」

    ニュース共有アプリNewsPicksには、採用側の企業の立場から「カネと時間をかけてやっと内定を出したのに『不本意な内定』と言われて入社を辞退された企業の気持ちを考えるとめちゃくちゃやるせないな」という声もある。元ミクシィ社長の朝倉祐介氏も、

    「どれだけ企業研究しても実際に入社して働いてみないとどんな会社かなんて分からないよ。つべこべ言わずにさっさと働いて、合わなけりゃ転職すればいいと思うのだけど」

    と厳しいコメントをしつつ、「新卒プレミアムという因習」が浸透している社会においては「慎重に新卒入社先を選ぶことも個人としては合理的な選択なんでしょうね」と、その背景を分析して同情を示している。

    有名大学を卒業し、すでに社会で成功している人たちは、どんな企業でもいいから一度就職して、向いていなかったら転職すればいい、という考えの人が多いようだ。ネットには他にも「留年した分の学費は親が払うのか?」「結構なご身分ですなぁ」という突っ込みも見られた。

    一方で、就職留年する学生に理解を示す声もある。自分自身が就職留年をして有名企業に入社した人は「特段否定的な感情はない。一年ぐらい社会に出るのが遅くてもハンデにはならないし」とコメント。失敗したら転職すればいいという声にも、

    「やっぱりいわゆる大手(もしくは少数精鋭のプロフェッショナルファーム)に入っておいた方が、第二新卒でも転職しやすいし」

    と、新卒カードで最初に入った会社は大事というコメントもあった。

    大手キー局に内定した学生「今年は求人が増えた」

    新卒カードを切る上で理不尽なのは、なんといっても「卒業年度の景気」によって採用計画が大幅に変わることだ。解雇規制が厳しい日本企業では、人員調整は「新卒採用の増減」によって行われるので、学生たちはその影響をモロに受けてしまう。

    リクルートワークスが4月に発表した2015年卒の求人動向調査によると、民間企業の求人数は68万2500人で、前年比25.6%増し。6年ぶりの増加だという。6月1日時点での内定率は61.3%で、前年より7.9ポイントアップした。

    2014年の就活戦線は、アベノミクスによる景気回復によって「売り手市場」に転換しつつあるという。実際、キャリコネ編集部が14年春に卒業せず「就職留年」をした大学5年生の学生2人に取材したところ、「留年してよかった」と声をそろえた。

    都内の有名私大に通う男子学生は昨年、マスコミを中心に50社エントリーしたが全滅。しかし今年の就活によって某大手テレビキー局に内定をもらった。

    「学費もかかるので親には反対されましたが、『納得いくまで就活をしたい』と伝えたら最後には認めてくれました」

    就職留年で不利になることも心配していたが、選考の障害になったとは特に感じなかった。面接で尋ねられたときにも「どうしてもマスコミに行きたかったので留年しました」と話せば、それ以上突っ込まれることはなかったという。

    留年したことによって就活を計画的に進めることができ、場数をこなしたことで面接での受け答えもうまくなった。「1次面接で落ちることはなくなりました」と振り返る。

    10万人は「就職留年」だけじゃない?

    また、景気回復によって「去年よりも明らかに求人が増えていると感じる」と明かす。就職情報サイトからは、今も夏採用や秋採用の告知メールがたくさん来ているというが、このような状況は昨年にはなかった。

    「どこでもいいから1年目で入れって? 冗談じゃないですよ。もしあのとき実家に戻って、地方の中小企業に就職先を探していたらと思うとゾッとします」

    もう1人の女子学生も、4年次には内定をもらえなかったが、今年は大手新聞社系の会社に内定。最初に中堅広告会社から内定をもらったときには「ホッとして、もう就活を辞めたかった」そうだが、さらに粘って希望の就職先をゲットした。

    なお、これだけ論議を呼んだ読売の記事ではあるが、10万人の中には就職留年だけでなく、単に「単位をとり損ねて留年してしまった学生」も含んでいる。あるいは「語学留学やボランティア活動で”ギャップイヤー”的な過ごし方をする学生」もいるだろう。

    その内訳は不明だが、卒業後に入社した企業が一生の面倒を見てくれなくなった時代には、慌てて社会に出る必要もなく、モラトリアムとして自分の人生を考える余裕があってもいいのではないか。

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