• コミュニケーションの極意(2) コミュニケーションでの「3層のフィルター」

     「友人や家族など、プライベートでのコミュニケーション」と、「ビジネス上でのコミュニケーション」におけるもっとも大きな違いは何でしょうか。

     「気を遣う、遣わない」

     「敬語を使う、使わない」

     「自分の発言に対する責任が重い、軽い」

     …などなど、要素はいろいろとありますが、まとめると、「ビジネス場面のほうが、コミュニケーションをとる時に意識すべき点がより多い」といえるのではないでしょうか。今回は、この点について解説していきます。

     
    「コンテンツ」と「コンテクスト」を意識する

     まず、少しだけ言葉の説明をさせてください。

     コミュニケーションにおいて、口に発する言葉、目に見える文章、そして発言者の表情など、表にあらわれる部分を「コンテンツ」といいます。

     これは「内容」とか「中身」という意味で、一般的にも文章や音楽、映像などを指してよく使われます。

     そして、話し手や聴き手の感情、意識、ものの考え方、価値観など、表から見えない部分を「コンテクスト」といいます。これは日本語でいうと「文脈」という意味の言葉です。

     プライベートとオフィシャルのコミュニケーションにおける違いは、この「コンテンツ」と「コンテクスト」をどこまで意識しなければならないかの違い、といえるでしょう。

     例えば、相手が友人や家族など気の置けない関係であれば、これまでの付き合いの中で「話が合う」「趣味が同じ」「育ってきた時代背景や環境が似ている」などの共通点が多くあります。

     したがって、「これって、こんな意味があってね…」などと、いちいち考え方や言葉の意味を説明したり、意識したりすることもなく、気を遣わずに気軽な会話ができるのです。

     これは、「コンテクストを共有できている」状態であるといえます。

     しかし、ビジネスでのコミュニケーションの場合、相手は年齢も社会的な立場も、そして趣味趣向も、自分とはまったく違う人たちであることが多いはずです。

     おそらく、そこに「共通言語」や「共通の価値観」はあまり期待できないでしょう。だからこそ、多くの商談では最初に世間話からスタートして、なんとか共通点を探ろうとしているわけです。

     となると、会話をするにもいちいち「この言葉の意味はわかってもらえるだろうか」「こんな言い方は失礼にならないだろうか」など、いろんなことに気を遣いながらコミュニケーションをとっていかなければなりません。

     それは「コンテクストが共有できていない」ということになります。

     初対面の相手とコミュニケーションをとる場合、相手が同年代のように見えても、実際にどんな人なのかはすぐにわかりません。

     だからこそ、「何を伝えるか」というコンテンツだけではなく、「相手に理解してもらえるか」「どのように言えば伝わるか」「どうすれば気持ちよく話してもらえるか」といったコンテクスト、双方に気を配ることが大変重要なのです。

     なぜなら、人は自分の感情に配慮してくれる人を信用するからです。この点については次回(第3)で詳しく解説します。

     「コンテンツだけを意識して話す人」は、たくさんいます。しかし、「コンテクストまで意識できる人」はなかなかいません。これも理由の一つです。

     コンテクストに配慮するだけで、「配慮のある人」「何か違う人」という印象を相手に与えることができます。

     ぜひ「相手の価値観」を大事にするように意識してみてください。恐らく、何の配慮もなかったときに比べると、相手の反応が良くなっているはず。

     コミュニケーションは「感情の交流」でもあることを忘れてはいけないのです。


    コミュニケーションの「3層のフィルター」とは?

     ネットとSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)が普及して、実に便利になりました。

     これまでは、何かしらの集まりに出て名刺交換したら、その後の「メールでのご挨拶」が結構大変でした。

     しかし、今はフェイスブックのメッセージであっという間に済んでしまいます。

     ブログやSNS経由で人を集めたり、サービスやモノを売ったりするというビジネスを展開、その支援をするというパターンも多く見かけるようになりました。

     しかし、ネット上だけでコミュニケーションをとってビジネスを完結させることはそう簡単ではありません。多くの人が、ネット上のコミュニケーション「だけ」に頼ろうとするからです。

     そもそも、「ネット上でのコミュニケーション」が一般的になってくればくるほど、「リアルでのコミュニケーション力」がより重要になるものなのです。

     すなわち、リアルでコミュニケーションが的確に取れない人は、ネット上でも取れないというわけです。

     コミュニケーション力の定義はさまざまありますが、一般的に人は、相手のコミュニケーションを次のような「3層のフィルター」を通して判断していると考えられます。

    1…「いい感じの人」と思わせる「第一印象」
      (雰囲気、表情、態度、人柄、マナーなど)

    2…「また会いたい」と思わせる「コンテンツ」
      (USP、専門性、経歴、実績など)

    3…「信頼できる人」と思わせる「コンテクスト」
      (傾聴、共感、対話、関係構築など)

     もちろん、これらはネット上もリアルも関係なく重要なポイントです。

     これらの要素がすべて伴っていれば、相手に好印象を与えることができ、その後もご縁が続いていくことは間違いありません。

     いわゆる「デキるビジネスパーソン」と呼ばれる人はもちろんですが、実際にネット上でも集客やビジネスができている人や、フェイスブックのウォールが盛り上がっている人たちには、まさにこの特徴が共通しています。

     こういう人たちは、単に「スゴい人」というだけではなく、「人柄も良い人」「一緒にいて心地良い人」。これは、ネット上だけで完結するのではなく、「リアルでも行動し、人と実際に交流している人」ということになるのです。

    (新田龍・人事コンサルタント)
     

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