• コミュニケーションの極意(4) 効果的なコミュニケーションのポイント(実践編)

     コミュニケーションでは、「話す」ことよりも圧倒的に「聴く」ことのほうが重要です。「聴く」というと受け身の行為のような印象を持たれがちですが、決してそんなことはありません。

     むしろ、積極的に「聴きに行く」くらいの意識がないとできない、能動的な行為なんです。

     そして「聴き方」は自分を表現することでもあります。うなずきや相槌、身振り手振りを踏まえて「あなたの話をこんなに真剣に受け止めてますよ」ということを全身で伝える行為なんですね。

     私がコミュニケーションに関しての著述をするとき、「きく」という漢字は全てこの「聴く」を使っています。「聞く」と「聴く」における厳然な意味の違いがあるのは、ご存じの方も多いのではないでしょうか。

     「聞く」の場合は「耳に入ってくる言葉や音を認識する受動的(受け身)な行為」のことであり、「聴く」は「言葉や音に注意深く耳を傾ける能動的な行為」のことです。

     「聴く」の方がより積極的な意味合いになるんですね。「聴」という漢字をバラバラにすると「『耳』にプラス(+)して、『目』と『心』をもって全身全霊で聴く」と読めますよね。私たちはそれくらい真剣に、相手に向き合って話を「聴いて」いるでしょうか。

     もしかして、相手が話している間、「次、何を言おうかな」「どう突っ込んでやろうかな」と考えたりしてませんか。

     その気持ちはもちろんわかりますが、自分の大事な話をそのように「聞き」流されていたらどう感じるでしょう。

     無理やり話をつなげようとするよりも、相手の「話したい気持ち」を推し量り、きちんと「聴く」ことのほうがはるかに重要です。

     カラオケで、あなたの十八番を聴かずに選曲してる人がいれば目立つのと同様、話す相手もあなたが本当に「聴いて」いるかどうかについては敏感に感じ取っていて、あなたへの印象を決めているかもしれませんね。


    相づちひとつで、ここまで変わる!

     相づちの効用はかなり大きなものです。しかし意識的におこなっている人はあまり多くないため、少しの配慮でアドバンテージを得られる点だと言えます。具体的には、次の点に注意して返してみましょう。

    1…相づちのバリエーションを増やす
     
     カウンセラーなど、「聴く」ことを職業とする人は、この相づちのバリエーションを増やして使い分けて、気持ちをこめて打つように訓練を受けているものです。

     「はい」「ええ」「なるほど」「あら」「おや」「おぉ」「ほほう」「うーむ」…

     これだけでも、きちんと聴いてくれている、反応してくれたという感じが伝わってくるものですよね。

    2…相づちで、相手の話への興味関心を示す

     「ええー!」「そうなんですか!?」「驚きました!」「すごいなあ」「なんですって!?」「そんなことってあるんですねー!」「知らなかったー!」「マジで!?」

     このように積極的な反応が返ってきたら、話す方としても「ああ、きちんと聴いて興味を持ってくれているな」と張り合いが出ますよね。相づちには、会話をさらに弾ませる効果もあるのです。

     3…相づちで相手の話を促す

     「それからそれから」「で、どうなったんですか!?」「続きを聴かせてください!」

     これくらいの能動的な反応があれば、話し手は確実に盛り上がります。もっといろいろなことを話したい気分になりますし、積極的な興味を持って聴いてくれている聴き手に対して親近感を持つことでしょう。

     特に、「自分には大したネタがない…」とか「話しベタだ…」と感じている方ほど、自分が話すよりも聴くほう、特に相づちを積極的に打つように心がけるとよいでしょう。

     全体を10とするなら、自分が話すのは相づちも含めて2~3割程度、相手に残りの部分を話してもらうくらいのバランスでも会話は普通に成り立つものです。ぜひ試してみてください。


    状況に応じた「うなずき」がある

     「うなずき」は、聴き手のメッセージを伝えられる有効な手段なんです。話の内容に応じて、次のように種類を変えて使えば効果的ですね。

     1…速くて浅いうなずき

     「もっと話してほしい」
     
     「ここまでは十分理解できた。次をどうぞ」

     という意味で、相手の話をうながす効果があります。

     2…「う~む」という感じの、ゆっくりと深いうなずき

     「じっくり理解しています」

     「言っていることはちゃんと伝わりました」

     という意味で、相手の考えや気持ちを受け止めたことを示す効果があります。

     いずれもささいなことかもしれませんが、話し手にとって「きちんと聴いてくれている」という感覚は心地よいもの。「目を見る」「うなずく」「相づちを打つ」。

     いずれも基本的なことばかりではありますが、相手に与える印象は実に大きいものです。当たり前のことを地道に、かつ着実にやり続け、そこから信頼感を醸成していくことが、伝わるコミュニケーションの第一歩なんですね。


    「共感」の引き出しを増やしていこう

     「相手の発言に対する自分の気持ち」を、自分なりの言葉で適切に表現することができれば、「相手の話をシッカリ聴いて、受け止めた」感がより強く伝わります。

     気持ちを表現するボキャブラリーを増やすことで、どんな状況にも対応できるようになります。では、感情の種類別にいくつか挙げてみましょう。

     【喜び、期待】
     例…うれしい、ワクワク、満ち足りた、晴々した、誇らしい、イキイキした、心地いい、大感激、胸がはちきれそう

     【悲嘆、失望】
     例…がっかり、うんざり、げんなり、みじめ、情けない、傷ついた、寂しい、辛い、困惑、無念、悔やまれる

     【怒り】
     例…イライラする、腹が立つ、憎たらしい、苦々しい、ムカつく、うっとおしい、腹に据えかねる、恨めしい、不本意な

     【不安、焦り】
     例…落ち着かない、ドキドキ、混乱した、もどかしい、心ここにあらず、パニック、心もとない

     使い方としては、このような形です。

     相手
     「君のおかげでプレゼンが通ったよ。ありがとう!」

     あなた
     「これからがほんと楽しみだね。僕もワクワクしてきたよ」

     相手
     「あ~、○○部長からまた嫌味を言われた~」

     あなた
     「大変だったねー。不本意だろうけど、いつものことだし気にするなよ」

     このように、相手の感情を代弁するような適切な言葉を選び、自分の気持ちと合わせてコメントしましょう。

     話し手は、自分の気持ちをわかってくれたことに対して心がオープンになり、双方の関係性の強化に繋がります。これは公私問わず有効ですので、ぜひ今日から試してみてください。

    (新田龍・人事コンサルタント)

     

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