「クレーマーなのに常連」という不思議なお客 文句言うのに週2回来る 2014年4月3日 元社員が語る「外食産業」の舞台裏 ツイート 飲食店でしばらく働いていると、常連のお客さまと、そうでないお客さまが分かるようになります。「お得意さま」と「新規顧客」といったところでしょうかね。 そんなお得意さまの中には、「常連でクレーマー」という方もいます。いろいろ文句を言うので、「もう二度と来ないのか」と思いきや…。なぜか、またいらっしゃるのです。 私が働いていた居酒屋チェーンWでは、従業員はインカム(無線機)を使って店内の連絡を取り合っていました。普段は「○番卓のビール出てないよ」といった連絡をするのですが、このお客さまが来ると「また来たよ。お茶の人」というインカムが飛び交います。(ライター:ナイン) 「料理が写真と違う」などと毎回苦情 その常連客は、来店すると必ずお茶を注文するため、従業員の間では「お茶の人」で通っていました。それを聞いて「えっ、また?!」と、あからさまなリアクションをとる従業員もいました。 「お茶の人」は、ご夫婦で週に1日か2日は来店されます。2人とも40代後半くらいで、旦那さんは「どうも。お世話になっております」「いつもありがとね」などと声をかけてくれる、物腰の柔らかい笑顔の方です。 問題は、奥さまの方。女優の大竹しのぶさんのような、ゆっくりとした話し方なんですが、柔らかい印象はなく、言葉にとげのある感じなんです。 「ちょっとこれさぁ、写真と全然違うんだけど。こんな色じゃないでしょ、作り直してくれる?」 ある日、注文されたお刺身を持っていくと、「お茶夫人」からキツイ一発を食らいました。厨房で細心の注意を払って作り直し、ドキドキしながら持っていくと、 「なぁに、結局こんな感じなのぉ? まだ全然違うけど。(ムシャムシャ…)んー、別においしくはないけど、まぁこんなもんかな」 毎回毎回、こんな感じなのです。クレームは1回の来店で、最低1回。短いときは30秒、長いときは3~4分かかり、3~4回呼び出されて叱られることもあります。 実は「貴重な存在」なのかもしれない? このほか、「他のお客の足音がうるさい」(それは私たちのせい?)、「飲み物の味が微妙に違う」(材料と作り方は同じです)、「女子トイレの便座が上がってたんだけど、男が使ってるんじゃないの?」(見たんですか)というものも。 旦那さんがいつも「まぁまぁ」となだめてくれますが、なかなか疲れます。あなたの周りにもいませんか? 困った常連客やお得意さま。まぁ、いて当たり前ですよね。みんながみんな自分にとっていい人なら、人間関係の悩みなんてなくなるでしょうから。 お茶夫人は、我々従業員にとっては「クレーマー」でしたが、旦那さんから見たら「奥さん」。50歳すぎの怖い怖い上司も、家に帰れば旦那さんだったり、お父さんだったりするわけで。立場も変われば、見方も変わりますよね。 そう考えると、私たちも「決められた通り、ちゃんとやってるのに」と思わないで、立場を少し変えてみることが必要かもしれません。たとえば「メニューと実物では、どうしても多少の違いは出てしまう」というのは、店側の事情で勝手に正当化している部分もあります。 お客さまがそう感じるのであれば、何をどう変えれば不満を解消できるのかを考えてみる。店長の裁量では、メニュー写真の撮り直しはできませんが、盛り付けを工夫することくらいはできます。 そう考えると「クレーマーなのに常連」って、わざわざ足しげく通い、お金を払ってくださり、よりよいお店に鍛えてくれる貴重な存在なのかもしれませんね。 あわせてよみたい:休みが取れない女性店長が、店内で… 【プロフィール】ナイン北海道在住の20代後半の男性。大学卒業後、居酒屋チェーンWを運営する会社に正社員として入社。都内店舗のスタッフや副店長として約4年間勤務した後、「もう少し発展性のある仕事がしたい」と退社。現在求職中。現場を知る立場から、外食産業を頭ごなしにブラックと批判する声には「違和感がある」という。Twitter/Facebook/ブログ
「クレーマーなのに常連」という不思議なお客 文句言うのに週2回来る
飲食店でしばらく働いていると、常連のお客さまと、そうでないお客さまが分かるようになります。「お得意さま」と「新規顧客」といったところでしょうかね。
そんなお得意さまの中には、「常連でクレーマー」という方もいます。いろいろ文句を言うので、「もう二度と来ないのか」と思いきや…。なぜか、またいらっしゃるのです。
私が働いていた居酒屋チェーンWでは、従業員はインカム(無線機)を使って店内の連絡を取り合っていました。普段は「○番卓のビール出てないよ」といった連絡をするのですが、このお客さまが来ると「また来たよ。お茶の人」というインカムが飛び交います。(ライター:ナイン)
「料理が写真と違う」などと毎回苦情
その常連客は、来店すると必ずお茶を注文するため、従業員の間では「お茶の人」で通っていました。それを聞いて「えっ、また?!」と、あからさまなリアクションをとる従業員もいました。
「お茶の人」は、ご夫婦で週に1日か2日は来店されます。2人とも40代後半くらいで、旦那さんは「どうも。お世話になっております」「いつもありがとね」などと声をかけてくれる、物腰の柔らかい笑顔の方です。
問題は、奥さまの方。女優の大竹しのぶさんのような、ゆっくりとした話し方なんですが、柔らかい印象はなく、言葉にとげのある感じなんです。
ある日、注文されたお刺身を持っていくと、「お茶夫人」からキツイ一発を食らいました。厨房で細心の注意を払って作り直し、ドキドキしながら持っていくと、
毎回毎回、こんな感じなのです。クレームは1回の来店で、最低1回。短いときは30秒、長いときは3~4分かかり、3~4回呼び出されて叱られることもあります。
実は「貴重な存在」なのかもしれない?
このほか、「他のお客の足音がうるさい」(それは私たちのせい?)、「飲み物の味が微妙に違う」(材料と作り方は同じです)、「女子トイレの便座が上がってたんだけど、男が使ってるんじゃないの?」(見たんですか)というものも。
旦那さんがいつも「まぁまぁ」となだめてくれますが、なかなか疲れます。あなたの周りにもいませんか? 困った常連客やお得意さま。まぁ、いて当たり前ですよね。みんながみんな自分にとっていい人なら、人間関係の悩みなんてなくなるでしょうから。
お茶夫人は、我々従業員にとっては「クレーマー」でしたが、旦那さんから見たら「奥さん」。50歳すぎの怖い怖い上司も、家に帰れば旦那さんだったり、お父さんだったりするわけで。立場も変われば、見方も変わりますよね。
そう考えると、私たちも「決められた通り、ちゃんとやってるのに」と思わないで、立場を少し変えてみることが必要かもしれません。たとえば「メニューと実物では、どうしても多少の違いは出てしまう」というのは、店側の事情で勝手に正当化している部分もあります。
お客さまがそう感じるのであれば、何をどう変えれば不満を解消できるのかを考えてみる。店長の裁量では、メニュー写真の撮り直しはできませんが、盛り付けを工夫することくらいはできます。
そう考えると「クレーマーなのに常連」って、わざわざ足しげく通い、お金を払ってくださり、よりよいお店に鍛えてくれる貴重な存在なのかもしれませんね。
あわせてよみたい:休みが取れない女性店長が、店内で…
【プロフィール】ナイン
北海道在住の20代後半の男性。大学卒業後、居酒屋チェーンWを運営する会社に正社員として入社。都内店舗のスタッフや副店長として約4年間勤務した後、「もう少し発展性のある仕事がしたい」と退社。現在求職中。現場を知る立場から、外食産業を頭ごなしにブラックと批判する声には「違和感がある」という。Twitter/Facebook/ブログ