「帰れ!」と言ったら、本当に帰ってしまった女子大生アルバイトの話 2014年4月24日 元社員が語る「外食産業」の舞台裏 ツイート 突発的に休むアルバイトの人っていますよね。「授業が長引いて」「体調が悪い」などがよく聞く例です。理由によっては、本当にどうしようもないものもありますが、働いているこっちとしては、「ちょっと勘弁してよ」というのが本音です。 ある日曜日、21歳の女子大生アルバイトSさんが出勤してきました。土日祝日は居酒屋チェーンの書き入れ時で、売上もお客様の数も平日の1.5倍になるところもあります。それだけ忙しく、猫の手も借りたい状況になる日です。(ライター:ナイン) 失恋で「試合に負けたボクサー」のように… そんな日曜なのに、何やらSさんに元気がありません。「どうかしたの?」と聞いてみると、 「…彼と別れて……」 とポツリ。まあ、若いし、それくらいのことはよくあるだろうと私も思い、深入りはしないようにしました。営業時間に入っても、やはり元気はありませんでしたが、事情を知っているため「もっと元気よくしなさい」とも言えずにいました。 しばらくして、別のアルバイトの人に「あれっSさんは?」と言われました。そういえば、先ほどから姿が見えません。店内を探したところ、従業員控え室で発見しました。いすに腰掛け、試合に負けたボクサーのように打ちひしがれた様子のSさん。 その姿を見て、私もなんともいえない気持ちになりました。事情はわかっていましたが、「勤務時間中に勝手に控え室にいくなんて」という怒りもありました。そこで「働けないなら帰るか?」と厳しい口調で注意したところ、Sさんは「…はぁ」と気のない返事です。 私はひとまずSさんを放置し、接客に戻りました。しばらくして控え室に行くと、なんとSさんは、本当に帰ってしまった後でした。発破をかけたつもりが、まさかこんなことになるなんて。他の従業員たちも唖然とする中、アルバイトの男の子が私に言いました。 「帰れって言われて本当に帰る人、僕、初めてみました…」 大学の合格発表で急に休んだ男子高校生 また、別の日曜日、男子アルバイトの高校生Nさんから「すいません。30分くらい遅れます」と電話が来ました。何かあったのだろう、と思いつつ了承すると、再び連絡があり、「やっぱり今日行けません」とのこと。 「何? なんかあったの?」と聞いた私に、「いや、ちょっと…」と、何やらハッキリしない様子。店が忙しかったこともあり、早々に電話を切りました。 後から分かったのですが、この日はNさんが受験していた大学の合格発表の日でした。「それでか…」と私も思いましたが、そんなこと本人には事前に分かっていること。事情を説明してくれれば休みにして他の人をシフトに入れたのに、と考えずにはいられませんでした。 ただ、そのときは「信じられない」と思いましたが、考え直してみるとNさんが大学に合格したのかどうかは聞いていませんでした。もしかすると合格できると思った志望校に落ちていて、想定外のショックに落ち込んでいたのかもしれません。 でも現場で働いていると、自分の目の前のことしか考えられなくなり、「なんで来ないんだよ!」と苛立ってしまうんですよね。副店長の私としては、責任を全うしろよと思うけど、若い彼らにしてみれば、時給千円足らずの「たかがバイト」。それは分かっているつもりなのですが…。 あわせてよみたい:元社員が語る「外食産業」の舞台裏 バックナンバー 【プロフィール】ナイン北海道在住の20代後半の男性。大学卒業後、居酒屋チェーンWを運営する会社に正社員として入社。都内店舗のスタッフや副店長として約4年間勤務した後、「もう少し発展性のある仕事がしたい」と転職。現場を知る立場から、外食産業を頭ごなしにブラックと批判する声には「違和感がある」という。Twitter/Facebook/ブログ
「帰れ!」と言ったら、本当に帰ってしまった女子大生アルバイトの話
突発的に休むアルバイトの人っていますよね。「授業が長引いて」「体調が悪い」などがよく聞く例です。理由によっては、本当にどうしようもないものもありますが、働いているこっちとしては、「ちょっと勘弁してよ」というのが本音です。
ある日曜日、21歳の女子大生アルバイトSさんが出勤してきました。土日祝日は居酒屋チェーンの書き入れ時で、売上もお客様の数も平日の1.5倍になるところもあります。それだけ忙しく、猫の手も借りたい状況になる日です。(ライター:ナイン)
失恋で「試合に負けたボクサー」のように…
そんな日曜なのに、何やらSさんに元気がありません。「どうかしたの?」と聞いてみると、
とポツリ。まあ、若いし、それくらいのことはよくあるだろうと私も思い、深入りはしないようにしました。営業時間に入っても、やはり元気はありませんでしたが、事情を知っているため「もっと元気よくしなさい」とも言えずにいました。
しばらくして、別のアルバイトの人に「あれっSさんは?」と言われました。そういえば、先ほどから姿が見えません。店内を探したところ、従業員控え室で発見しました。いすに腰掛け、試合に負けたボクサーのように打ちひしがれた様子のSさん。
その姿を見て、私もなんともいえない気持ちになりました。事情はわかっていましたが、「勤務時間中に勝手に控え室にいくなんて」という怒りもありました。そこで「働けないなら帰るか?」と厳しい口調で注意したところ、Sさんは「…はぁ」と気のない返事です。
私はひとまずSさんを放置し、接客に戻りました。しばらくして控え室に行くと、なんとSさんは、本当に帰ってしまった後でした。発破をかけたつもりが、まさかこんなことになるなんて。他の従業員たちも唖然とする中、アルバイトの男の子が私に言いました。
大学の合格発表で急に休んだ男子高校生
また、別の日曜日、男子アルバイトの高校生Nさんから「すいません。30分くらい遅れます」と電話が来ました。何かあったのだろう、と思いつつ了承すると、再び連絡があり、「やっぱり今日行けません」とのこと。
「何? なんかあったの?」と聞いた私に、「いや、ちょっと…」と、何やらハッキリしない様子。店が忙しかったこともあり、早々に電話を切りました。
後から分かったのですが、この日はNさんが受験していた大学の合格発表の日でした。「それでか…」と私も思いましたが、そんなこと本人には事前に分かっていること。事情を説明してくれれば休みにして他の人をシフトに入れたのに、と考えずにはいられませんでした。
ただ、そのときは「信じられない」と思いましたが、考え直してみるとNさんが大学に合格したのかどうかは聞いていませんでした。もしかすると合格できると思った志望校に落ちていて、想定外のショックに落ち込んでいたのかもしれません。
でも現場で働いていると、自分の目の前のことしか考えられなくなり、「なんで来ないんだよ!」と苛立ってしまうんですよね。副店長の私としては、責任を全うしろよと思うけど、若い彼らにしてみれば、時給千円足らずの「たかがバイト」。それは分かっているつもりなのですが…。
あわせてよみたい:元社員が語る「外食産業」の舞台裏 バックナンバー
【プロフィール】ナイン
北海道在住の20代後半の男性。大学卒業後、居酒屋チェーンWを運営する会社に正社員として入社。都内店舗のスタッフや副店長として約4年間勤務した後、「もう少し発展性のある仕事がしたい」と転職。現場を知る立場から、外食産業を頭ごなしにブラックと批判する声には「違和感がある」という。Twitter/Facebook/ブログ