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居酒屋で片桐さん似のお客がブチ切れ 「なんでこんな狭い席で食事しないといけねーんだよ！」
外食といえば、いまや代表的な「ブラック業界」と呼ばれていますが、これは何も経営者だけの責任だけではないと思います。あえて言わせていただきますと、お客様が職場をブラック化させているところも少なくありません。
不特定多数のお客様を相手にし、どんな理不尽なことを言われても「ふざけるな、帰れ！」と言い返せないために体調を崩してしまう…。そんな「お客の犠牲になる」雇われ店員もたくさんいるのです。（ライター：ナイン）
「いや、大丈夫ですよ」と言っていたのに…
飲食業界が多忙を極める年末。まさに猫の手も借りたい日に、その恐ろしい事態は起こりました。日付が変わろうかという午後11時30分過ぎ、店内は注文のピークを乗り切り、テーブルの片づけ作業に追われていたころでした。
この時、ある団体様の入店がありました。今は6名だが、後から遅れて1人来るとのこと。このとき対応したのは、20代後半のアルバイトの男の子でした。
気を利かせたアルバイトは、この団体客を店の奥にある広めの10名掛けの席に案内しようとしました。席を広めに使ってもらおうという配慮です。
しかしお客の1人が、奥まで移動するのが面倒なので、入り口近くの6名掛けの席でいいと言い出しました。アルバイトは「7名様だと狭くなると思いますが…」と確認しましたが、「いや、大丈夫ですよ。そんなの気にしないんで」と明るい返事でした。
この話を聞いた私は、別の席から1脚の椅子を持ってきました。するとそこに、待ち合わせの1人がやってきました。40代後半の女性で、顔は女優の片桐はいりさんに似ています。ただ片桐さんのような、穏やかな印象はありません。
この女性は6名掛けの席に座っている連れを見るやいなや、一気に顔がこわばり、近くにいたアルバイトの男の子をいきなり怒鳴りつけてきたのです。
連れのお客は助け舟を出さず
片桐さん似の主張は、「7名なのに6名掛けの席はおかしい」ということ。しかし、それは先に座っているお客様も了承済みでしたから、私たちも面喰いました。そんな私たちをよそに、片桐さん似の怒りはおさまりません。
そして近くにいた私に「お前、責任者か？！」と怒鳴りつけてきました。私は突然のことで驚きつつも、「はい。私は当店の社員で、彼の上司です」と答えました。すると、
どんどんエスカレートしていく勢いに、「これはまずいな」と判断した私は、すぐに店長を呼びました。結局、片桐さん似の怒りがおさまるまで、30分以上の時間がかかりました。
読者のみなさんは「あれっ、事情を知ってる連れの人たちは、この間に何をしていたの」と疑問に思ったことでしょう。正直なところ私も、多少はなだめてくれてもいいのでは、と思っていました。
しかし実際には、6名の連れの方々はまったく助け舟を出さず、全員が私たちから目をそらすように下を向いていたのです。彼らは20代半ばの若い人たちで、片桐さん似は40代後半。片桐さん似に意見できない、仕事か何かの上下関係があったのでしょうか。
心当たりのある方は「私に連絡ください」
結局、この御一行様は1時間ほどで店を後にしましたが、年末の忙しさとこの一件で、私たちは生気を抜かれたようになってしまいました。
その翌日。片桐さん似に怒鳴られたアルバイトの男の子が、出勤時間になっても姿を現しません。私は何度も電話やメールを繰り返しましたが、結局その後一度も、この男の子と連絡がつくことはありませんでした。
この一件で自信を失くしたのでしょう。今も元気にやっているのでしょうか。非常に心配です。これを見ていたら、心当たりのある方がいれば私に連絡をください。そして言いたいです。「君のせいじゃないよ。あれはお客様が悪かっただけだから」と。
あわせてよみたい：元社員が語る「外食産業」の舞台裏 バックナンバー
【プロフィール】
ナイン
北海道在住の20代後半の男性。大学卒業後、居酒屋チェーンＷを運営する会社に正社員として入社。都内店舗のスタッフや副店長として約4年間勤務した後、「もう少し発展性のある仕事がしたい」と転職。現場を知る立場から、外食産業を頭ごなしにブラックと批判する声には「違和感がある」という。Twitter／Facebook／ブログ