ワタミ店員の憤り! 「本社」と「現場」の間には、深くて暗い溝がある 2014年6月19日 元社員が語る「外食産業」の舞台裏 ツイート 会社が大きくなってくると、様々な部署に分かれてきます。営業や人事、経理など多岐にわたり、私がいたころのワタミは社員全員で4000人いました。 そういう組織ですから、現場からの叩き上げから本社に異動になる人もいますし、営業の現場を知らずに本社の管理部門に採用される人も出てきます。今回は、営業の現場にいる我々と、本社の人たちとのギャップについて書いてみます。(ライター:ナイン) 繁忙期に本社から「手伝い」が来たものの… 大きなギャップ ある年の年末、店が慌ただしくなったころ、本社からこんな通達が来ました。 「いつも営業お疲れ様です。店舗でも年末商戦に入り、お忙しいことと思います。つきましては、本社より、営業のお手伝いをさせていただきたいと思います。該当店舗の皆さん、よろしくお願いいたします」 メールには、本社社員の名前と、店舗名が書かれたテキストファイルが添付されています。年末の居酒屋は書き入れ時で、売り上げも普段の1.5倍~2倍になります。店は、猫の手も借りたいほどの忙しさになります。 これを知った本社から、社員が店舗の手伝いに来るというのです。これを見て、皆さんはどう思いますか。「現場思いのいい人たちじゃないか」と思いますか。 私たちの考えでは、全く逆です。正直なところ、むしろ来なくていいとさえ思います。なぜなら、現場での営業経験のない、いわば新人を忙しい年末に加えると、決まってミスを起こし、その対応で店が混乱することがよくあるからです。 この日もそうでした。本社から3人ほど手伝いに来てくれましたが、社員のみならずアルバイトの人たちでさえ「本社の人は頼りにならない」と、基本的に歓迎していません。予想通り、色々なミスが起こりました。 「お客様が頼んだものと違う商品を出してしまう」「頼んでいない商品を出してしまう」「皿やグラスを割る」などなど…。中でもひどかったのが、「お客様にドリンクをかけてしまう」人が出たことでした。 「本社では仕事ができる人」と慌ててフォロー 服を汚されたお客様はお怒りで、なだめるのに苦労しました。「この忙しいときに余計なことして」という皆の気持ちもあり、さすがにイラッとした私は、この本社の人に「今日はもうあがって結構です」と冷たく言い放ってしまいました。 予定より2時間も早く、本社の人は店を後にしました。その後、さすがに私も反省し、「少し言い過ぎたかな」とアルバイトたちに話しました。私の想像では「言い過ぎですよ」「謝ったほうがいいんじゃないですか」と言われるかと思いましたが、現実は違いました。 「いや、別にいいんじゃないですか…」 「こんなことになる前に、もっと早く帰してもよかったんじゃないの?」 驚くほど冷たい反応に、私は動揺してしまい、「い、いや…、本社の人も、本社では仕事ができる人たちなんだよ」と、よく分からないフォローをしてしまいました。 とはいえ、本社は本社の仕事をしていればいい、とも思えません。やはり現場の状況をきちんと分かった上で、指示などをしてもらわないと困ります。ある台風の日、本社から驚きの通達が来たことがありました。 「今回、季節限定の商品に関してですが、台風の影響により入荷できません。つきましては、入店されるお客様全員に『この商品は台風により品切れです』とお伝えください」 「お客様全員に周知」なんてデキやしない 一見すると普通に思われるかもしれませんが、現場の状況が分かる人なら「お客様全員」というフレーズは使わないはずです。私の勤めていた店では、大きな規模のところでは席数が200席を超える店もありました。 単純に考えても、満席になると200名以上が来るということですよね。この全員に「この商品は、台風により入荷できません」と、実際に注文されるかどうかも分からない商品の品切れを説明することなど、現実的ではないのです。 お客様の料理や飲み物を作り、提供しながら、そんなことをお客様全員に説明することなど…。このような指示は、店舗での営業経験があれば、なかなか言えません。 幸いなことに、このような表現の通達は、これっきりなくなりました。他の店舗からの苦情が来たのか、それとも本社の人が気づいたのかは分かりませんが。 あわせてよみたい:元社員が語る「外食産業」の舞台裏 バックナンバー 【プロフィール】ナイン北海道在住の20代後半の男性。大学卒業後、居酒屋チェーンWを運営する会社に正社員として入社。都内店舗のスタッフや副店長として約4年間勤務した後、「もう少し発展性のある仕事がしたい」と転職。現場を知る立場から、外食産業を頭ごなしにブラックと批判する声には「違和感がある」という。Twitter/Facebook/ブログ
ワタミ店員の憤り! 「本社」と「現場」の間には、深くて暗い溝がある
会社が大きくなってくると、様々な部署に分かれてきます。営業や人事、経理など多岐にわたり、私がいたころのワタミは社員全員で4000人いました。
そういう組織ですから、現場からの叩き上げから本社に異動になる人もいますし、営業の現場を知らずに本社の管理部門に採用される人も出てきます。今回は、営業の現場にいる我々と、本社の人たちとのギャップについて書いてみます。(ライター:ナイン)
繁忙期に本社から「手伝い」が来たものの…
ある年の年末、店が慌ただしくなったころ、本社からこんな通達が来ました。
メールには、本社社員の名前と、店舗名が書かれたテキストファイルが添付されています。年末の居酒屋は書き入れ時で、売り上げも普段の1.5倍~2倍になります。店は、猫の手も借りたいほどの忙しさになります。
これを知った本社から、社員が店舗の手伝いに来るというのです。これを見て、皆さんはどう思いますか。「現場思いのいい人たちじゃないか」と思いますか。
私たちの考えでは、全く逆です。正直なところ、むしろ来なくていいとさえ思います。なぜなら、現場での営業経験のない、いわば新人を忙しい年末に加えると、決まってミスを起こし、その対応で店が混乱することがよくあるからです。
この日もそうでした。本社から3人ほど手伝いに来てくれましたが、社員のみならずアルバイトの人たちでさえ「本社の人は頼りにならない」と、基本的に歓迎していません。予想通り、色々なミスが起こりました。
「お客様が頼んだものと違う商品を出してしまう」「頼んでいない商品を出してしまう」「皿やグラスを割る」などなど…。中でもひどかったのが、「お客様にドリンクをかけてしまう」人が出たことでした。
「本社では仕事ができる人」と慌ててフォロー
服を汚されたお客様はお怒りで、なだめるのに苦労しました。「この忙しいときに余計なことして」という皆の気持ちもあり、さすがにイラッとした私は、この本社の人に「今日はもうあがって結構です」と冷たく言い放ってしまいました。
予定より2時間も早く、本社の人は店を後にしました。その後、さすがに私も反省し、「少し言い過ぎたかな」とアルバイトたちに話しました。私の想像では「言い過ぎですよ」「謝ったほうがいいんじゃないですか」と言われるかと思いましたが、現実は違いました。
驚くほど冷たい反応に、私は動揺してしまい、「い、いや…、本社の人も、本社では仕事ができる人たちなんだよ」と、よく分からないフォローをしてしまいました。
とはいえ、本社は本社の仕事をしていればいい、とも思えません。やはり現場の状況をきちんと分かった上で、指示などをしてもらわないと困ります。ある台風の日、本社から驚きの通達が来たことがありました。
「お客様全員に周知」なんてデキやしない
一見すると普通に思われるかもしれませんが、現場の状況が分かる人なら「お客様全員」というフレーズは使わないはずです。私の勤めていた店では、大きな規模のところでは席数が200席を超える店もありました。
単純に考えても、満席になると200名以上が来るということですよね。この全員に「この商品は、台風により入荷できません」と、実際に注文されるかどうかも分からない商品の品切れを説明することなど、現実的ではないのです。
お客様の料理や飲み物を作り、提供しながら、そんなことをお客様全員に説明することなど…。このような指示は、店舗での営業経験があれば、なかなか言えません。
幸いなことに、このような表現の通達は、これっきりなくなりました。他の店舗からの苦情が来たのか、それとも本社の人が気づいたのかは分かりませんが。
あわせてよみたい:元社員が語る「外食産業」の舞台裏 バックナンバー
【プロフィール】ナイン
北海道在住の20代後半の男性。大学卒業後、居酒屋チェーンWを運営する会社に正社員として入社。都内店舗のスタッフや副店長として約4年間勤務した後、「もう少し発展性のある仕事がしたい」と転職。現場を知る立場から、外食産業を頭ごなしにブラックと批判する声には「違和感がある」という。Twitter/Facebook/ブログ