• 若手社員が「職場の打ち上げ」をフェイスブックに… 社長にバレたらと思うと冷や汗止まらない

    今回の相談者は、食品卸で人事を担当するAさん(40代女性)。彼女の会社の営業部では、商談成立や目標達成のたびに、社内で非公式の打ち上げをするのだという。

    その様子を、若手部員たちが「職場の打ち上げ!」「みんな頑張った~!」などというメッセージとともに、フェイスブックやツイッターに流している。この様子にAさんは「冷や汗が止まらない」という。

    打ち上げのつまみには、参加者が自腹で買った乾き物に加え、メーカー支給の食品サンプルなども並んでいる。取引先にはあまり見せたくない光景だ。

    「それに、うちの会社はケチなんで、テーブルや棚が古くてすっごく汚いんですよ。取引先経由で社長が目にしたら、きっと怒り出しますって」

    昨年夏の「バイトテロ」のように、冷蔵庫に入って記念撮影をするような不衛生な行為ではないが、果たしてこうした投稿を会社がどこまで禁止できるのか。職場の法律問題に詳しいアディーレ法律事務所の岩沙好幸弁護士に聞いてみた。

    「社内で写真撮影禁止」という規則は有効

    ――従業員が、社内でふざけて撮影した写真をSNSにアップして、ネットメディアやテレビで取り上げられる…といった例が最近増えていますね。今回の相談者さんも、人事担当とのことで、万が一のことを考えると心中穏やかではないでしょう。

    会社はどこまで、従業員の行動を規制できるのでしょうか。結論から言いますと、「会社の許可を得ず、社内で写真撮影をすることを禁止する」という規則を定め、これに違反した従業員を懲戒処分とすることができます。

    裁判例は、会社が実施する従業員に対する統制権いわゆる「企業秩序」を会社に認めています。企業秩序は、会社の存立と事業の円滑な運営の維持のために必要不可欠なものであるので、会社は企業秩序を守る権限を有するのです。当然のことですよね。

    そして、会社は企業秩序を守るため、これに必要な事項を規則をもって定め、具体的に従業員に指示、命令することができます。また、従業員が企業秩序に違反する行為をした場合には、その内容、態様、程度等を明らかにして、事実関係の調査をすることもできます。

    企業秩序に関連しない私生活は規制できない

    ただし、規則で定められる企業秩序も無制限ではありません。企業秩序において定める規則や発せられる命令は、会社の円滑な運営上必要かつ合理的なものであることが必要です。

    企業秩序の違反については、たとえば、職場の風紀秩序を乱すおそれがないと認められる行為については成立しません。また、従業員の私生活まで規制することができるわけではないので、従業員の私生活上の行為は企業秩序に関連性のある限度においてのみ規制の対象となりますので、常識的な範囲内で規則を作る必要があります。

    通常、会社内には重要な企業機密や個人情報があふれていますので、「会社の許可を得ず、社内で写真撮影をすることを禁止する」との規則は、常識的な規則であると認められるでしょう。

    規則があり、それが従業員に周知されていれば、おそらく相談者さんが想定するような悲劇は起こらないと思われますが、仮に、会社の指示、命令に違反する従業員が現れた場合には、企業秩序を乱すものとして、規則の定めるところに従って、懲戒処分を行うことができます。

    懲戒解雇・出勤停止・減給・戒告・訓告などが、懲戒処分の一例です。ただし、懲戒処分は、前提として就業規則に定めた事由に該当する必要があり、また、社会通念上相当な処分でなければ無効になります。したがって、従業員が犯した規則違反の程度に応じて、相当な処分を選ぶ必要がありますので、この点も注意して下さいね。

    あわせてよみたい:ワタミ創業者、フェイスブックで「自爆」?

    【取材協力弁護士 プロフィール】

    岩沙 好幸(いわさ よしゆき)
    弁護士(第二東京弁護士会所属)。慶應義塾大学経済学部卒業、首都大学東京法科大学院修了。弁護士法人アディーレ法律事務所。パワハラ・不当解雇・残業代未払いなどのいわゆる「労働問題」を主に扱う。動物好きでフクロウを飼育中。近著に『ブラック企業に倍返しだ! 弁護士が教える正しい闘い方』(ファミマドットコム)。『弁護士 岩沙好幸の白黒つける労働ブログ』も更新中。 頼れる刑事弁護なら≪http://www.adire-bengo.jp/

  • 企業ニュース
    アクセスランキング

    働きやすい企業ランキング

    年間決定実績1,000件以上の求人データベース Agent Navigation
    転職相談で副業