「性格適性検査」に小細工は逆効果 「虚言癖」「感情が不安定」と判断されるおそれも 2014年7月17日 採用担当者が斬る「シューカツの迷信」 ツイート 前回は、採用試験における「性格適性検査」のタイミングで選考に落ちたとしても、決して「性格に問題があった」と気に病む必要はない理由について書きました。 とはいえ、検査には何か有利な方法があるのではないか、と気になる人もいるでしょう。しかし、採用担当者の視点から結論を申し上げると、この手の検査には「素直に答える」こと――。実はこれ以外には対策はなく、むしろそれ以外は大変危険なのです。(河合浩司) 検査結果項目にある「信頼係数」というワナ 性格適性検査は、膨大な研究結果を基に、専門の企業が作っています。採用活動をしている企業は、1人の学生を検査する度に検査料金を払っています。1人あたり数千円程度のものが多いですが、人数が増えると到底見過ごせない金額になってきます。 大企業にもなると何万人も選考を受けにきます。その中の一部だけが適性検査を受けるとしても非常に大きな金額となります。企業がそれだけのコストをかけて実施を続けるだけの品質が保たれているのが性格適性検査です(それでも絶対の根拠にはなるわけではありませんが…)。 この検査に対し、素人がにわか知識をつけて対策を講じたところで、通じるわけがありません。あっさりと見破られてしまいます。その一つが、検査結果項目で「ライスケール」や「信頼係数」と呼ばれるものです。 就活生のみなさんにも、ご存じの方が多いのではないでしょうか。この項目は、要するに「受験者がウソを答えたかどうか」が判断され、数値化されるものです。 これらの項目で悪い結果が出てしまうと、選考通過をさせることが著しく難しくなります。なにせ「素直に答えてない、嘘をついている確率が高い」という数値ですから…。 「対策本」を見ながら答えると驚きの結果が! 私も仕事柄、何種類もの性格適性検査を受けてみました。試す時には、いつも2枚の解答を作ります。1枚は素直に、自分を全く偽らずに素直に答えていきます。検査結果には、弱みや短所まで詳細に書かれていますが、当然ながら自分らしいものが出てきます。 そして、もう一方の解答には、「行動的な志向を意識して」「上司の〇〇さんならどう考えるだろうか」などと考えながら、答えていきます。すると、一見狙った性格に近しい検査結果は出るのですが、決して自分らしくありません。 しかもライスケール、信頼係数を見ると、明らかにウソが見破られています。そして、最も恐ろしいのが最後に書かれている特記事項です。そこには、 「思い込みが激しく虚言癖の傾向も」 「感情が不安定で暴発する気質がある」 などと書かれていました。このような記載を目にすると採用担当者としても、とても選考を通過させられません。 さらに私は、性格適性検査の対策本を買ってきて試したこともあります。しかし、同様にウソを見破られた特記事項が書かれる結果が出てしまいました。要するに、これらの本に書かれている対策は、残念ながら役に立たないどころか逆効果なのが現状なのです。 面接時に「検査結果との矛盾」を問われる場合も 一昔前なら、小手先の対策も少しは通用したのかもしれません。でも、今は研究がさらに進んでいますから、素人の浅知恵は通用しなくなっています。本に書いてあるからといって、 「望まれる選択肢はあるから、狙って答える」 「よく知っている人になりきって答える」 などということはしてはいけません。人は完全に他人になりきることはできず、大量のデータ処理によって矛盾が見破られたとき、それは回答者の心の矛盾と捉えられてしまいます。 なお、検査結果には、面接担当者へのアドバイスとして「この人にはこういうことを聞けば、強みや特徴がより分かる」といったものまで書かれています。面接の時に「検査結果と全然違うなぁ」と違和感を抱かれると、「この人はいったい何者なんだろう」と不気味に思われることにもなりかねません。 それは通常、就活において決して有利に働きません。自分の良さを知ってもらうためにも、くれぐれも検査には素直な姿勢で臨んでください。 あわせてよみたい:採用担当者が斬る「シューカツの迷信」バックナンバー 【プロフィール】河合 浩司(かわい・こうじ)上場企業のメーカーで人事課長を務める、採用業務15年超のベテラン。学生たちの不安を煽って金を儲ける最近の就活ビジネスを批判し、ペンネームでのツイッター(@k_kouzi7)やウェブコラムを通じて「自然体の就活」を回復するよう呼びかけている。
「性格適性検査」に小細工は逆効果 「虚言癖」「感情が不安定」と判断されるおそれも
前回は、採用試験における「性格適性検査」のタイミングで選考に落ちたとしても、決して「性格に問題があった」と気に病む必要はない理由について書きました。
とはいえ、検査には何か有利な方法があるのではないか、と気になる人もいるでしょう。しかし、採用担当者の視点から結論を申し上げると、この手の検査には「素直に答える」こと――。実はこれ以外には対策はなく、むしろそれ以外は大変危険なのです。(河合浩司)
検査結果項目にある「信頼係数」というワナ
性格適性検査は、膨大な研究結果を基に、専門の企業が作っています。採用活動をしている企業は、1人の学生を検査する度に検査料金を払っています。1人あたり数千円程度のものが多いですが、人数が増えると到底見過ごせない金額になってきます。
大企業にもなると何万人も選考を受けにきます。その中の一部だけが適性検査を受けるとしても非常に大きな金額となります。企業がそれだけのコストをかけて実施を続けるだけの品質が保たれているのが性格適性検査です(それでも絶対の根拠にはなるわけではありませんが…)。
この検査に対し、素人がにわか知識をつけて対策を講じたところで、通じるわけがありません。あっさりと見破られてしまいます。その一つが、検査結果項目で「ライスケール」や「信頼係数」と呼ばれるものです。
就活生のみなさんにも、ご存じの方が多いのではないでしょうか。この項目は、要するに「受験者がウソを答えたかどうか」が判断され、数値化されるものです。
これらの項目で悪い結果が出てしまうと、選考通過をさせることが著しく難しくなります。なにせ「素直に答えてない、嘘をついている確率が高い」という数値ですから…。
「対策本」を見ながら答えると驚きの結果が!
私も仕事柄、何種類もの性格適性検査を受けてみました。試す時には、いつも2枚の解答を作ります。1枚は素直に、自分を全く偽らずに素直に答えていきます。検査結果には、弱みや短所まで詳細に書かれていますが、当然ながら自分らしいものが出てきます。
そして、もう一方の解答には、「行動的な志向を意識して」「上司の〇〇さんならどう考えるだろうか」などと考えながら、答えていきます。すると、一見狙った性格に近しい検査結果は出るのですが、決して自分らしくありません。
しかもライスケール、信頼係数を見ると、明らかにウソが見破られています。そして、最も恐ろしいのが最後に書かれている特記事項です。そこには、
などと書かれていました。このような記載を目にすると採用担当者としても、とても選考を通過させられません。
さらに私は、性格適性検査の対策本を買ってきて試したこともあります。しかし、同様にウソを見破られた特記事項が書かれる結果が出てしまいました。要するに、これらの本に書かれている対策は、残念ながら役に立たないどころか逆効果なのが現状なのです。
面接時に「検査結果との矛盾」を問われる場合も
一昔前なら、小手先の対策も少しは通用したのかもしれません。でも、今は研究がさらに進んでいますから、素人の浅知恵は通用しなくなっています。本に書いてあるからといって、
などということはしてはいけません。人は完全に他人になりきることはできず、大量のデータ処理によって矛盾が見破られたとき、それは回答者の心の矛盾と捉えられてしまいます。
なお、検査結果には、面接担当者へのアドバイスとして「この人にはこういうことを聞けば、強みや特徴がより分かる」といったものまで書かれています。面接の時に「検査結果と全然違うなぁ」と違和感を抱かれると、「この人はいったい何者なんだろう」と不気味に思われることにもなりかねません。
それは通常、就活において決して有利に働きません。自分の良さを知ってもらうためにも、くれぐれも検査には素直な姿勢で臨んでください。
あわせてよみたい:採用担当者が斬る「シューカツの迷信」バックナンバー
【プロフィール】河合 浩司(かわい・こうじ)
上場企業のメーカーで人事課長を務める、採用業務15年超のベテラン。学生たちの不安を煽って金を儲ける最近の就活ビジネスを批判し、ペンネームでのツイッター(@k_kouzi7)やウェブコラムを通じて「自然体の就活」を回復するよう呼びかけている。