持て余す圧倒的な「退屈」 それでも「1秒も働かない」って素晴らしい!【外こもりのすすめ(4)】 2013年10月27日 外こもりのすすめ ツイート わずか150万円の貯金で「外こもり生活」に飛び出した貧BPさん。1000万の貯金利率の良い海外の銀行に預け、利息で生活するという理想を実現できなかった。 第3回「抑えきれなかった『衝動』の理由」では、それでも外こもりへ向かわざるを得なくなった「事の顛末」を紹介したが、第4回では、当初のプランと異なる外こもりを余儀なくされた彼の本音に迫っていく。 (過去の「外こもりのすすめ」はこちら) 予想外だった「労働への怯え」 「生活費を切り詰めることだけを目的としての長期滞在には、新たな場所に旅をする、そんな胸踊る展開がありません。そしていつか来る労働への怯えがつねにつきまといます。これは全く予想外でした……」 手持ちの資産を使い切ったら、いずれ働かなくてはならない。これは、1秒も働きたくない彼の心からゆとりを奪う。 そうは言っても、現在の外こもりライフには満足しているという。 「好きな時間に起き、好きな時間に食事をし、好きな時間に就寝できます。目覚まし時計に無理やり起こされずにすむ生活というのは、本当に素晴らしいものです」 それだけなら日本にいても働いていなければ同じことができそうなものだが、それだけではないそうだ。 「海外のゲストハウスにいると、様々な旅人や長期滞在者、外こもりの人と、宿にいながらにして出会うことが出来ます。変な言い方ですが、イベントやアクティビティが向こうから飛び込んでくるんです」 自分から積極的に動くことなく個性的な人々と出会い、話ができる。それも、「ゲストハウス滞在型外こもり」の醍醐味のひとつだ。 「日本での労働の辛さを想像し、耐えている」 しかし、そんな彼らから「貧BPさんはこれからどうするの?」と聞かれても「どうするかなぁ」としか答えられない。 それは、非常に寂しく、心もとないことだという。 そんな彼に、「長期間外こもりをしていて飽きることはないの?」と疑問をぶつけてみると……。 「退屈することはありますよ。でも外こもりに飽きるたびに、帰国したら働かなくてはならないという事実に思い至り、その辛さを想像し、耐えているんです」 「お金があれば外こもりなんかしないで世界をもっと旅したい。オーロラも見てみたいし、豪華客船で世界一周もいいな……。そう思うことはしょっちゅうです しかし貧BPさんの場合、こうした夢のためにでも、我慢してまで労働をすることは絶対に避けたいという。 「じゃあ、外こもりに向いている人ってどんなタイプなの?」と向けてみると、 「インターネットでいくらでも暇を潰せる人。あまりアクティブではなく、淡白な生活に耐えられる人ですね」 という。外こもりの日常がいかに刺激的ではないかがわかるというものだ。 60代後半の「シニア外こもり」もいる ただ、必要なスキルもある。 「一期一会、初対面の人とトラブル無く円滑に話ができるコミュニケーション能力が必要です。また、いざとなったらトラブルに対処する能力も必要でしょう」 それはゲストハウスで出会った人とすぐに打ち解け、有益な情報の交換をするだけではなく、旅の体験談なども親しく話し合える能力のことだ。 そういう「外交性」がある程度は必要なことから、自室にこもって誰とも会いたくない人は外こもりには向かないかもしれない。 では実際に、どんな人々が「外こもり」になっているのだろうか? 「もはや日本社会で、まともに社会復帰することは不可能だと自覚している人です。いくら求人に応募しても、採用されない。バイトや期間契約社員ができればまだマシですが、それもいつまで働けるかわからない人が多いですね」 性別は圧倒的に男性が、年齢的には30代以上が多い。女性は1割にも満たないという。 年配者ではチェンマイにアパートを借りている60代後半の老人もいるそうだ。50代後半で500万円の貯金を持って外こもりを開始したが、年金も受給できていない。手持ちの資産を使いきった後のことは、あえて考えないようにしている。 「もし貧BPさんが外こもりをやめるとしたら?」 あえてそう向けてみた。 「資金の枯渇か、病気、そのどちらかでしょうね。残金が50万円くらいになったら帰国すると思います」 彼の外こもりは、まだもう少し続きそうだ。 (第五回につづく) ◆ 本連載は、外こもりの中でもひときわ異彩を放つ「貧BPの人生オワタ\(^o^)/旅」という大人気ブログの書き手である貧BPさんに取材し、考え方や行動などを再構成し、一つの突き抜けた生き方を提示するもの。けっして働くことを否定する内容ではない。なお、貧BPという名前は、外こもり専用掲示板のハンドルネームに由来する。貧しいバックパッカー、略して貧BPである。 [恵比須半蔵(えびす はんぞう) / ノンフィクションライター]
持て余す圧倒的な「退屈」 それでも「1秒も働かない」って素晴らしい!【外こもりのすすめ(4)】
わずか150万円の貯金で「外こもり生活」に飛び出した貧BPさん。1000万の貯金利率の良い海外の銀行に預け、利息で生活するという理想を実現できなかった。
第3回「抑えきれなかった『衝動』の理由」では、それでも外こもりへ向かわざるを得なくなった「事の顛末」を紹介したが、第4回では、当初のプランと異なる外こもりを余儀なくされた彼の本音に迫っていく。
(過去の「外こもりのすすめ」はこちら)
予想外だった「労働への怯え」
手持ちの資産を使い切ったら、いずれ働かなくてはならない。これは、1秒も働きたくない彼の心からゆとりを奪う。
そうは言っても、現在の外こもりライフには満足しているという。
それだけなら日本にいても働いていなければ同じことができそうなものだが、それだけではないそうだ。
自分から積極的に動くことなく個性的な人々と出会い、話ができる。それも、「ゲストハウス滞在型外こもり」の醍醐味のひとつだ。
「日本での労働の辛さを想像し、耐えている」
しかし、そんな彼らから「貧BPさんはこれからどうするの?」と聞かれても「どうするかなぁ」としか答えられない。
それは、非常に寂しく、心もとないことだという。
そんな彼に、「長期間外こもりをしていて飽きることはないの?」と疑問をぶつけてみると……。
しかし貧BPさんの場合、こうした夢のためにでも、我慢してまで労働をすることは絶対に避けたいという。
「じゃあ、外こもりに向いている人ってどんなタイプなの?」と向けてみると、
という。外こもりの日常がいかに刺激的ではないかがわかるというものだ。
60代後半の「シニア外こもり」もいる
ただ、必要なスキルもある。
それはゲストハウスで出会った人とすぐに打ち解け、有益な情報の交換をするだけではなく、旅の体験談なども親しく話し合える能力のことだ。
そういう「外交性」がある程度は必要なことから、自室にこもって誰とも会いたくない人は外こもりには向かないかもしれない。
では実際に、どんな人々が「外こもり」になっているのだろうか?
性別は圧倒的に男性が、年齢的には30代以上が多い。女性は1割にも満たないという。
年配者ではチェンマイにアパートを借りている60代後半の老人もいるそうだ。50代後半で500万円の貯金を持って外こもりを開始したが、年金も受給できていない。手持ちの資産を使いきった後のことは、あえて考えないようにしている。
「もし貧BPさんが外こもりをやめるとしたら?」
あえてそう向けてみた。
彼の外こもりは、まだもう少し続きそうだ。
(第五回につづく)
◆
本連載は、外こもりの中でもひときわ異彩を放つ「貧BPの人生オワタ\(^o^)/旅」という大人気ブログの書き手である貧BPさんに取材し、考え方や行動などを再構成し、一つの突き抜けた生き方を提示するもの。けっして働くことを否定する内容ではない。なお、貧BPという名前は、外こもり専用掲示板のハンドルネームに由来する。貧しいバックパッカー、略して貧BPである。
[恵比須半蔵(えびす はんぞう) / ノンフィクションライター]