• ホンダに「脱クルマ」の大胆提言 「思い切って資金を『ASIMO』につぎ込んだら…」

    「ホンダは自動車メーカーから脱皮してはどうか」――。セゾン投信社長の中野晴啓氏は、週刊現代5月31日号の座談会で、国際的な自動車グループに属していない本田技研工業について、こう提言している。

    「ホンダは単独で生き残れるかどうかギリギリのところですが、『脱クルマ』戦略に走ったほうがおもしろい。思い切って資金を『ASIMO』に代表されるロボット事業につぎ込んで、自動車メーカーから脱皮するとか」

    ボトルネックは日本企業の「集団意思決定体制」

    中野氏は、21世紀に成功する会社は、「これまで蓄積してきた技術の引き出しをうまく使って、いかに新しいものを生み出すかにかかっています」と断言する。

    この大胆な説に対し、対談相手である、いちよしアセットマネジメント執行役員の秋野充成氏も「おっしゃる通りですが、日本の経営者はそれが一番下手なんです(笑)」と同調している。

    新しい製品を生み出すことが企業の課題であることは、いまに始まったことではない。しかし、均一な製品を大量に生産することが最優先された高度成長期に比べると、ユニークな製品開発の重要性が一段と高まっているのは確かだ。

    中野氏はさらに、画期的な掃除機や扇風機を開発した英国Dysonや、ロボット掃除機「ルンバ」を開発した米国iRobotを引き合いに出し、日本企業の経営者を批判する。

    「(ダイソンもルンバも)日本の技術で簡単に作れるのに、日本企業は集団意思決定体制になっているから飛びぬけたアイデアが商品化されずに社内で腐って終わってしまう」

    日本企業の「集団意思決定体制」が、企業の強み発揮を阻害しているという議論は、以前から存在する。iPhoneが世の中に出たときも、部品は日本メーカーが供給しているのに、なぜ最終商品を出せないのかと批判が続出した。

    社会学者の岡本浩一氏は「組織のあるところには必ず『無責任の構造』がひそんでいる」と指摘し、「日本人は組織力が強み」という定説に一石を投じている。

    リーダーに求められる「ビジョン」と「納得させる力」

    最近でもブロガーの日野瑛太郎氏が、「サイボウズ式」のコラムで「『民主的』であることはチームにとって重要か?」と問いかけ、民主的にチームを運営してきたリーダーのプロジェクトが、成果をあげられずに解散した例を紹介している。日野氏はその原因として、

    「民主的であるがゆえにコミュニケーションコストが爆発的に増えたこと」
    「『話し合い』を重ねることによって、とんがった意見がすべて丸くなってしまったこと」

    の2つをあげた。特に後者の問題については、個人の意見の相違を話し合いで解決しようとすると、最終的には無難な案に落ち着くのは目に見えているとする。

    日野氏は集団に代わる意思決定としてリーダーの役割が重要とし、「よいビジョンを描き、さらにそれを周囲に納得させられるかどうかが、リーダーの一番重要な能力」と説く。しかし、そのようなリーダーは現れるのだろうか。

    日本企業が「集団意思決定体制」に落ち着いた合理的な理由もあるはずだ。独裁では視野が狭くなるおそれもあるし、強権的な指示命令に対して感情的な反発を感じる人もいるだろう。何より意思決定の責任を引き受ける個人は、大きなリスクを引き受けざるを得ない。

    もしもホンダを自動車会社から脱皮させ、21世紀のメーカーに生まれ変わらせるとしたら…。それには、かなり強力なビジョンと、すぐれたコミュニケーションの力をもつ経営者が必要となりそうだ。

    あわせてよみたい:金子勝が熱弁「道重さゆみさんが日本のリーダーの理想像だ!」

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